8時半、起床。
雨戸を開けるのが楽しみだ。我が家の桜、昨日今日で、さらに開花が進んだ。やはり桜の花には青空がよく似合う。
パン(「ティースプーン」の塩バターロール)、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。
10時過ぎに家を出て、国分寺に向かう。今日は午後2時から三鷹で芝居を観るのだが、その前に、立川在住の卒業生と国分寺(特快だと三鷹の隣駅)でランチをする約束をした。国分寺で降りるのはずいぶんと久しぶりである。早稲田実業に模擬授業で来て以来だが、そのときとは駅の様子がガラリと変わっていて驚いた。
改札で論系ゼミ2期生のリョウコが待っていた。いまは立川にお住まいだが、少し前まで長いこと国分寺にお住まいで、駅周辺のよいカフェをご存知とのこと。都庁の職員をされているが、現在は育休中。今日もお子さん連れの予定だったが、急遽、お姉さんがお子さんを見てくれることになり、単身でやって来られた。
小さな子ども連れではなくなったので、予定していたカフェを別のカフェに変更。南口から徒歩6分ほどの住宅街の中にそのカフェはあった。
「スズメノツノ」という名前のカフェ。雀って角があったか? 私は雀を飼っていたことがあるが、そういうものは知らない。もしかした「ツノ」という名前の雀なのか?
店内はむき出しのコンクリートの壁・天井と木製のテーブルと椅子と柔らかな照明が作り出すちょっと不思議な、でもくつろげる空間である。私たちが入ったときは先客はいなかったが、その後、よい具合に客が入ってきた。
窓際のカウンターに雀たちが鈴なりになっている。
たしかにこの雀たちには角がある。
「雀角鼠牙」という四文字熟語があるが、この場合の「角」は「くちばし」の意味である。全体の意味は「家族がいさかい起こすして家の中がごたごたすること」をいう。「雀の涙」ほど有名ではないが、「雀の角」といういい方もある。「たいしたことはない」の意味である。
さて、ランチは何にしましょうか、そしてデザートは。真剣にメニューを見る。
彼女はフードメニューの先頭に載っているスズメ特製ロールキャベツをチョイスした。
私はジューシー厚焼き卵サンドとスズメブレンド(浅炒り)。
彼女のデザートはほうじ茶ババロアとツノブレンド(深煎り)。
こしあんがトッピングされている。
私はタルトタタンと紅茶。
リンゴ一個分が使われている。私がこれまで食べたタルトタタンでは「まやんち」のものに一番近いかな。
窓から春の光が入ってくる。窓越しに見える一本道は緩やかな上り坂になっていて、もしここで誰かと待ち合わせをしていて、その人がその坂道を下りてきたら、「あっ、来た来た」って思うことだろう。
店を出て、あと30分ほど時間があったので、駅と店の間にある「殿ヶ谷戸(とのがやと)庭園」に入ってみることにする。ここは浜離宮、小石川後楽園、六義園、旧岩崎邸庭園などとならぶ都立文化財庭園の1つだが、リョウコさんは入るのは今日が初めてとのこと。きっと150円という入園料のせいだろう。でも、只にすると荒らされちゃうから、入園料は多少でも設定した方がよい。池上の梅園も入園料100円だった。ただし65歳以上は無料だったが、こちらは65歳以上でもただではなく70円の割引料金は払うシステム。
湯島の旧岩崎邸庭園と同じく、ここもかつて三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎の所有だった。
公園ではなく庭園といういい方がぴったりする。
遊歩道には低い柵が作られているので、芝生の中には入ってはいけないのだろう。ショートカットをしたいときにはちょっと窮屈だが、芝生の手入れをしている係員さんがそばにいたので、素直に順路どおり歩く。
これは何の木かしら。
大きな木の下でポートレイトを一枚。
「竹の小径」という小さな立札。これは孟宗竹だ。
木洩れ日の「竹の小径」でポートレイトを一枚。
この道の先に「次郎弁天池」がある。立川市から大田区まで30キロに及ぶ国分寺崖線と呼ばれる崖地(武蔵野の台地を代表する地形)があるのだが、そこから出る清水を利用して作られた池である。
池の中に置かれた石の上に立ってもらって写真を撮ったのだが、彼女、案外、怖がりであった。大学のバスケサークルではセンターを務めていて、体のバランス感覚はよいはずだが。
カメラを適当な場所に置いて、セルフタイマーのシャッターを押して、私がポンポンと石を上を渡って行ったら、「先生、すごいですね」と驚いていた。いや、それほどのことでも・・・。
どうやら彼女は、池に落ちること自体よりも、新しい靴が水に濡れるのを恐れていたようである。
池の反対側(こちらは順光)からもう一枚。
彼女が長男の陽太君を出産したのは去年の4月10日であった(私と誕生日が一日違い)。「とても痛くて死ぬかと思った」そうだが、いよいよ育休も終わりが近づいてきた。部署が決まるのはこれからだ。気持ちの準備はできましたか?不安と憂鬱と閉塞感に満ちた世の中ですが、どうぞ母子とも元気な毎日を送って下さい。
立川に戻る彼女とは、国分寺の駅で別れた。
(「観劇篇)へ続く)