関西には有馬という歴史のある立派な温泉郷がありますが、それ以外に目立った温泉地は少なく、北関東や伊豆を擁する関東に比較するといまひとつボリュームに欠けるところがありますが、視線を南の紀州・和歌山県に移すと白浜をはじめとして良質な温泉郷が点在していることに気づきます。
紀伊半島の南部に位置する勝浦はマグロの水揚げで有名ですが、そんな勝浦の漁港の奥、八幡神社が鎮座する静謐の入り江に、昭和から時間が止まったかのような古き良き温泉銭湯「はまゆ」があります。造りは至ってシンプルで、木戸を引き開けるとそこには番台があり、脱衣所に貼られた古めかしい広告を眺めていると、温泉地の共同浴場というよりは場末の銭湯という言葉が相応しいように思われます。浴室に入るとプンと硫黄の匂いが鼻をつきます。タイル貼りの浴槽には無色透明のお湯が掛け流されており、カランから出るお湯も源泉です。硫黄の匂いに呼応するかのように薄いたまご味、そして薄い塩味とかすかな苦みが感じられました。硫黄のお湯が好きな方には十分満足のいく実力を有したお湯です。
これといった特徴のない、典型的な昭和の銭湯といった佇まいですが、余計なものがないからこそお湯の良さを実感できるかと思います。昭和にタイムスリップしながら海辺の銭湯で一汗流がし、湯上りの火照った体に潮風が当たれば、湧きあがる旅情もひとしおです。
勝浦の朝の名物 マグロの競りの光景
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
43.6℃ pH8.2 104L/min 成分総計1469mg/kg
JR紀勢本線・紀伊勝浦駅 徒歩15分(1.4km)
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大勝970 地図
0735-52-1201
13:00~22:00 毎月7日・22日休
320円
私の好み:★★