神奈川県第二の温泉郷である湯河原温泉には、東京からちょうど100kmという至近距離にありながら、昔ながらの本格的な湯治場が存在しています。「温泉場中央」停留所でバスを降りると、近くの電信柱に「ままねの湯」の看板が貼られているので、この看板が指し示すとおりに道を折れ、人一人がようやく通れる狭い裏路地を進んでいくと、突き当たりに今回紹介する湯治宿「ままねの湯」があります。路地の一番奥のどん詰まりにあってわかりにくい場所ですが、案内板の指示を忠実に守れば辿り着けるでしょう。
こんな路地を進んでいきます
日帰り入浴客用入口
正面の玄関は湯治客向けのものなので、日帰り入浴の客は左手にある「一回入浴者入口」の引き戸を開けて中に入ります。受付などはなく、脱衣所内にあるお皿に自分で料金を置きます。浴槽は内湯ひとつのみ。脱衣所に至っても一応男女別ですが、壁ではなくカーテンで仕切られているも同然の簡素なものです。脱衣所も浴室も決して広くなく、半地下にあるので風通しも悪ければ、いまひとつ明るさも足りません。
設備類やアメニティ類は皆無に等しいこのお風呂が温泉ファンから愛されている理由はお湯の良さ。無色でささ濁りのお湯はほんのり塩味と石膏味がするのですが、そんな知覚的特徴なんてどうでもよくなるぐらいに、とにかく熱い。単に熱いだけでなく喝を入れられたかのようなガツンとくるインパクトがあります。気合を入れて肩まで体を沈めますが、頑張って1分ちょっとが精一杯でしょうか。耐え切れず上がろうとお湯から足を抜く際に、脛が火傷をしたかのようなヒリヒリ感に襲われるほど。
でもこの熱さがなぜか病みつきになってしまうから不思議です。ここの常連さんは水分補給用のペットボトルを持ち込んで入浴しており、呼吸を整えてお湯に浸かり、我慢できなくなったらお湯から上がって、壁際で胡坐をかいてグビっと喉を潤しつつ、じっくりと次にお湯へ入るタイミングを見計らっています。観光客と思しき方はあまりの熱さに音を上げて、掛け湯するだけで退散してしまいましたが、地元の方や私のような温泉ファンは、何度も出たり入ったりを繰り返しながら、湯河原の熱湯と格闘していました。刺激のある熱さが病みつきになるのは、一種のマゾヒスティックな快楽なのかもしれません。
ここのお湯がアトピーに効くという話を聞いたことがありますが、私の場合はここへ一週間おきに何度も通っていたらこの春の花粉症がかなり軽くなりました。単に熱いだけではない実力を有する素晴らしいお湯です。
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉
第22号泉 82.8℃ pH8.4 成分総計1981mg/kg
JR東海道本線・湯河原駅から奥湯河原・不動滝行バスで15~20分、
「温泉場中央」で下車し、徒歩2分ほど
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上610 地図
0465-62-2206
8:00~20:00 毎月10・20・30日休業
200円
私の好み:★★★