温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

駒の湯温泉 駒の湯山荘

2011年10月10日 | 新潟県
9月下旬の某日、越後駒ヶ岳の麓に佇む一軒宿「駒の湯山荘」で一泊してきました。

 
国道352号線は大湯温泉を過ぎると俄然狭隘になり、人家もまったく絶え、いかにも峠道らしい峻嶮な道へと変貌します。この時は枝折峠方面が通行止となっていました。看板に従い、駒の湯へと進みます。


1台しか通れない道ですが、ちゃんと舗装されていますし、待避所も多いので、心配することなく車で来られます。


林道の先には越後駒ヶ岳が秀麗な姿で聳えていました。

 
ゆっくり湯あみしたかったので、早めに到着しました。駐車場にはまだ他に車がとまっておらず、どうやら私が一番乗りのようでした。バックで駐車していると、さっそく宿の方が外へ出て、荷物を持って下さいました。


とっても愛想の良いご主人が帳場で対応。宿帳に名前を記し、さっそくお部屋へ。


帳場の前には囲炉裏があります。まさか、今回、部屋にいるよりここで座っている時間の方が長くなるとは…。委細は後述。

 
2階のお部屋に通されました。およそ6畳ほどの広さでしょうか。既に布団が敷かれています。これは嬉しい。到着してすぐにダラダラモードへ突入できますね。天井からは電球のランプ、そして灯油のランプがひとつずつぶら下がっています。灯油のランプは夕食時に客が食堂へいる際に、宿の方が灯してくれます。
窓の外には渓谷が。でも夏はアブが、秋はカメムシが大量発生するので、窓には網戸が張られ固定されています。


胡桃のおつまみです。一口つまんでから、さっそくお風呂へ。駒の湯山荘には、
・混浴内湯
・女性用内湯
・貸切風呂(上)
・貸切風呂(下)
・混浴露天風呂
・休憩舎混浴内湯
・休憩舎女性用内湯
の計7つのお風呂があり、宿泊者はその全てが利用可能です(日帰り入浴の場合は休憩舎のみとなります)。とはいえ私は男ですから女性用のお風呂には入れませんので、利用できるお風呂は5つとなります。勿論その全てに入りました。


・混浴内湯
 
駒の湯ご自慢の豊富な源泉が完全掛け流しで大量投入されています。お湯は30℃ちょっとしかないため、かなりぬるめです。成分量の少ない繊細なお湯ですが、大量掛け流しゆえに源泉での特徴が失われることなく浴槽まで運ばれています。無色澄明でタマゴの匂いと味が明瞭、さらに石膏のような味も感じられます。浴槽の湯面には薄らと石膏らしき白い線が浮かび上がっています。弱めのスベスベ感があり、湯上りはお肌しっとり、化粧水にも匹敵するらしく、ご主人曰く某化粧品メーカーの調査によれば、そのメーカーの化粧水より保水効果があると実証されたんだとか。
洗い場にはシャワー付き混合栓が1基。ボディーソープとシャンプーあり。
駒の湯の浴室全てに共通しているのが、どのお風呂にも浴槽が2つ用意されていることです。上述のように源泉温度が低く、そのままだと夏以外はかなりぬるく感じられてしまうため、加温されたお湯が注がれる浴槽がセットになっているわけです。とはいえ、常時加温されているわけではなく、必要に応じて客がお湯の蛇口を開いてお湯を貯めるシステムになっているので、しばらくお客さんが入っていない後だと、思いっきり冷めている可能性があります(宿泊者には事前に説明がありますのでご心配なく)。加温槽と源泉槽では、同じ源泉を使っていてもかなり感触が異なります。とっても繊細な泉質なんですね。
なお、この混浴内湯は女性用内湯とつながっているため、もしもの時には女性がそちらへエスケープできるのが、女性にとっては嬉しい造りではないでしょうか。


・貸切風呂(上)
次に貸切風呂へ行ってみましょう。貸切風呂は上下の2室があり、利用に際しては事前の予約は必要なく、空いていれば自由に使えます。

 
場所は内湯の奥。扉に下がっている札が「どうぞお入りください」の場合は利用可能。入室の際は札を裏返します。

 
広いウッドテラスが渓谷へせり出ており、開放感抜群です。こんな広いスペースを一人で独占していいのかしら。

 
浴槽の上には屋根代わりの赤いテントが張られているので、全体的に赤っぽい空間です。駒の湯は2つの源泉がありますが、こちらは毎分180L湧出の1号源泉が使われています。


テラスから身を乗り出して外を眺めると、内湯から排出されたお湯が滝のように下へ落ちているのが見えました。


・貸切風呂(下)

続いて、下の貸切風呂へ。


こちらは渓谷の崖に沿って作られたような感じで、入口の左手は岩肌が露出していました。

 
こちらも大量にお湯が注がれ、まるで洪水している川のようにお湯があふれ出れゆきます。いかにも仙境らしい、とっても良い雰囲気。上の貸切風呂は1号源泉ですが、こちらは毎分1800Lという常識はずれの湧出量を誇る2号源泉。浴槽への投入量もこちらの方が多いような気がします。


・混浴露天風呂
 
混浴の露天風呂へはここからスリッパに履き替えて、川岸へ下りてゆきます。館内には殺虫剤があちこちに置かれていますが、これも当地が自然豊かな環境である証拠ですね。


お風呂へのアプローチがいい雰囲気です。


脱衣所は男女別に分かれています。女は左、男は右。

 
佐梨川の渓流沿いに設けられた露天風呂。絶好のロケーションです。夏はアブ除けのために蚊帳でグルグル巻きにされるそうですが、訪問時はアブの時期から外れていたため、蚊帳は取り払われ、開放感たっぷりで湯あみすることができました。今年(2011年)夏に福島県や新潟県を襲った豪雨では、この露天風呂の構造物が呆気なく流されてしまいましたが、その後すぐに大工さんが駆けつけて建て直されたんだそうです。


桁外れに多い源泉がドバドバ浴槽に注がれています。お風呂というより養鱒場みたいですね。半端じゃない投入量ですから、お湯の鮮度は新鮮なんてもんじゃありません。数分で浴槽内がすべて入れ替わるんだとか。消毒する必要なんてありませんね。素晴らしいです。1号と2号を合わせて毎分2000Lというとてつもない湧出量は、関東甲信越では随一でしょうね。観光は良いし、お湯は肌に優しくぬるいので、いつまでも長湯していられます。女性は湯あみ着の使用Okみたいです。


・休憩舎 混浴内湯
 
本館の右隣に郵便局の簡保事業によって建てられた休憩舎があり、日帰り入浴客はこちらのみ利用が可能です。宿泊客なら無料で利用できます。

 
館内は簡素な造りながら、ちゃんとお手入れされていました。お風呂は女性用内湯と混浴内湯のふたつです。ちなみにこの建物は老朽化しているため、近いうちに改築される計画があるそうです。

 
浴室に入ってまず目を惹くのが、内湯中心の噴水のような湯口。ものすごい勢いで噴出されており、洪水状態で洗い場へオーバーフローしていますが、宿の方曰く、本来は6気圧あって、これでもかなり供給量を絞っており、全開にすれば天井まで届くほどなんだそうです。洗い場にはシャワー付き混合栓が1基あります。


すごい量ですね。相当絞ってこの勢いなんですから、全開したらとんでもないことになりそう…。


・食事など

 
玄関脇の池では湧出する温泉の勢いを利用して、某大学が水力発電装置を設置し、電気の届いていない当旅館にとっては救世主になるかと期待されましたが、実際には100Wしか発電できないそうです…。


この池ではイケチョウガイの養殖が試みられています。もし成功すれば世界初の温泉養殖による淡水真珠になるそうですが、果たして成功するかどうか、結構微妙な状況のようです。ガンバレ! イケチョウガイ!


日が暮れる夕方6時、夕食のお時間です。


食堂へ向かう廊下の奥では、炭火でイワナが焼かれていました。

 

お宿自慢の朱塗りの漆器に載せられた山の幸の数々。食前酒としてマタタビ酒も置かれています。着席まもなく、焼き立てのイワナが運ばれてきました。身はフワフワ、皮はカリカリ、香ばしくて味も強く、いままで食ったイワナの中で最も美味でした。また、まるでコース料理のように天ぷらが次々に席へ届けられます。その季節の旬のものが揚げられ、この日は地元特産のシイタケやアスパラなど。当地では初秋がアスパラの旬なんですね。シイタケは変な癖が無く、身も厚くて、感動的な美味しさでした。お膳には郷土料理の棒鱈、生きくらげなど。キノコ汁も美味かったなぁ。極めつけはご飯。ラッキーなことに、この日から新米に切り替わったそうで、お櫃の中のお米はツヤツヤと輝き、新米ならではの良い香りが漂ってきました。品種はもちろん魚沼コシヒカリ。さすがに文句の言いようがない美味しさです。思わずお櫃でおかわりしちゃいました。


御膳と一緒に添えられている手作りの粽は、食堂で食べても良し、部屋へ持ち帰って夜食にしてもよいそうです。

 
部屋に戻ると灯油ランプに火がともされていました。電気では再現できない、とっても温かな光です。

でも部屋に閉じこもることなく、食後、私は囲炉裏に座って、他のお客さんと一緒に大女将のお話を伺いました。電気が届いておらず、自家発電に頼るほかないこの宿では、電灯など必要最低限以外の電化製品は無く、テレビもありません。このため、お喋りが唯一の娯楽になります。東京深川生まれでこちらへ嫁いできた大女将は下町仕込みの饒舌ぶりを発揮し、淀むことなくしゃべり続けて、私たちを楽しませてくれました。曰く、湧出量が多いため、コーヒーに淹れるお湯以外、ここで使う水はすべて温泉水を使っており、トイレの水も温泉なんだそうです。めちゃくちゃ贅沢なトイレですね。

大女将が浦佐の自宅へ帰った後は、仕事が終わったご主人が交代して、引き続き話し相手になってくれます。夜も更けるにつれ、徐々に他のお客さんが抜けていきますが、このご主人はとっても人生経験が豊富、話題も豊富、頭脳明晰でバイタリティにも溢れており、面白い話がご主人の口から次々に出てきます。とてもここでは紹介できない話題ばかりですが…。最終的には私と常連のご夫婦、そしてご主人が残り、囲炉裏の火も燠しか残っていないのに話題は尽きることを知らず、結局囲炉裏端の話が終わったのは夜中の12時。その後、更に私とご主人が内湯へ一緒に入って喋り続け、結局話し終わったのは夜1時、布団に入ったのは1時半頃でした。あんなに喋ったのは久しぶり。時間を忘れるほど楽しい時間が過ごせました。ご主人には感謝です。

 
朝ごはんは7:30から。前夜に夜更かししたため、すっかり寝坊して朝風呂を逃してしまい、朝食の掛け声ともに慌てて飛び起きました。
朝食は魚沼名物の大力納豆や豆乳鍋など、植物性タンパク質が中心のヘルシーな献立です。大して標高は高くないのですが、谷あいで冷え込む土地なので、朝の鍋は体が温まって嬉しかったなぁ。

朝食後も昨晩同様囲炉裏で客同士がおしゃべりに花を咲かせたのですが、結局私と昨晩の常連ご夫婦が残って話し続けてしまったため、とりあえず10時に精算を済ませてから、1+2=3人で一緒にお風呂へ移り、そこで更にしゃべり続けることに。結局宿を出たのは昼1時半でした。こんな遅くまで居座る客を追い出すことなく、長居させてくれるのは、他の旅館ではなかなかないことですね(大抵はチェックアウトの時間を以て追い出されますから)。こちらの宿は常連が多いそうですが、なるほど心の底から納得できます。
お湯よし、食事よし、対応よし、本当に素晴らしいお宿でした。


駒の湯源泉
アルカリ性単純温泉 32.5℃ pH8.6 320L/min(掘削自噴) 溶存物資186.9mg/kg 成分総計187.0mg/kg
Na:19.0mg(33.74mval%), Ca:32.2mg(65.45mval%), SO4:69.1mg(66.06mval%), HCO3:25.2mg(18.81mval%)

駒の湯2号源泉
アルカリ性単純温泉 31.5℃ pH8.6 1800L/min(掘削自噴) 溶存物資236.3mg/kg 成分総計236.4mg/kg
Na:19.1mg(26.60mval%), Ca:45.4mg(72.76mval%), SO4:105.1mg(74.24mval%), HCO3:24.1mg(13.22mval%)


新潟県魚沼市駒の湯  地図
090-2560-0305(衛星電話)
公式サイト(ブログ)
駒の湯ではインターネットができません。携帯も通じません。このため御主人が仕入れのため里へ下りてきたときにブログを更新するスタイルをとっています。

11月上旬まで(2011年は11月6日まで) 冬期休業
日帰り入浴500円 利用できるのは休憩舎のみ
宿泊は宿のブログを参照。
シャンプー類あり

私の好み:★★★
コメント (7)
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