いつものように思いつきで、10月の連休に黒部峡谷の水平歩道を歩いて阿曽原温泉、そして裏剱の仙人温泉へ行ってみようと計画した。しかし9月下旬から10月中旬にかけては、黒部川「下の廊下」の旧日電歩道区間が開通する時期なので、年に2ヶ月しかない開通シーズンを待ちに待った登山者が集中して阿曽原温泉小屋は大混雑し、布団1枚に2~3人は当たり前という修羅場が毎年繰り返される。特に連休は酷いらしく、実際に小屋へ問い合わせたら、私の希望日は既に定員の倍以上の予約が入っているとのこと。赤の他人と布団を共にするのは御免蒙りたいので、また来年以降に延期しようと断念したら、10月7日、とんでもないニュースが飛び込んできた。
数日前から後立山連峰を震源とする群発地震が起きていたのだが、その影響により「下の廊下」で落石が発生し、直撃を受けて1人が死亡、1人が負傷する惨事が発生してしまったのだ。更には登山道の岩盤も大規模に崩落し、旧日電歩道は通行止となったのである。日電歩道より下流側の水平歩道に影響は及んでいないらしいが、震度は弱いものの群発地震が収束する気配は無く、万一のことを考えたら、水平歩道も危ないかもしれない。結果的には延期して正解だった、そう思った。しかし一方で、日電歩道が通行止になったということは、阿曽原温泉小屋の混雑要素が消えることになるので、犠牲になった方には申し訳ないが、1人で布団1枚を確保できる機会に恵まれるかもしれない。絶好な天気もしばらく続く。
中止すべきか、あるいは思い切って決行すべきか、判断に迷っていたが、事故発生の2日後に阿曽原へ再度問い合わせてみたら、小屋の主人の佐々木さんが電話に出て「例の件でガラガラになっちゃったよ」との返答があったので、それを聞いた私は条件神経のように「じゃ予約お願いします」という言葉を口にしていた。もう行くしかない。10月9日、仕事を終えた私は車に乗り込み、関越道→上信越道→北陸道のルートで車を飛ばして、魚津のビジネスホテルで投宿(1泊4300円也)。朝6時半頃にチェックアウトして、宇奈月へ向かった。
・今回の行程
2011年10月10日~12日 単独行
1日目 欅平駅(黒部峡谷鉄道)→水平歩道→阿曽原温泉(小屋泊)
2日目 阿曽原温泉→水平歩道→仙人谷ダム→雲切新道→仙人温泉(小屋泊)
3日目 仙人温泉→(往路と同じルートを逆行)→欅平
※今回は1日目の阿曽原温泉到着までを記事にします。
※進行方向の都合上、逆光の画像ばかりで申し訳ありません。
ルート図や勾配断面はルートラボをご覧ください。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a0/e3bd15ce840f29d76a62830a98e82140.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/e9/b46d842609b14d8c45464b0090993145.jpg)
【7:32 宇奈月駅 出発】
朝7時過ぎに宇奈月駅へ到着。駐車場・列車ともにガラガラ。余裕で一番列車のチケットを購入。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/40/d5d091871db7a61fe0889b025ddd90de.jpg)
【8:47 欅平駅 着】
駅前にはすでに観光客の姿がチラホラ。登山者の姿も見受けられ、みなさん次々に出発してゆくが、そんな人たちを見送りながら、私は駅構内で立ち食いソバを食べたり、トイレを済ませたと、生理的な欲求を満たしてゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/bb/b5e7dcdebe13de7d576eb301c1fb06c5.jpg)
【9:15 登山道 スタート】
駅で30分ものんびりしてしまい、ようやく登山開始。1番列車に乗ってきた登山者の中で、私は最も遅いスタートのようだった。登山道入り口には、旧日電歩道が通行止である注意書きが掲示してある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/7c/73c202b93716c46fa52a6751caf72921.jpg)
いきなりジグザグの登り。一気に高さを稼ぐ。この登りで何人も追い抜く。私は運動不足の文化系人間なのに、なぜか山登りはペースが早い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/df/fc0ced820980a0a2c276248b0584c347.jpg)
【9:35 鉄塔1本目】
上り坂の途中で見上げると、その先には高圧電線の鉄塔が立っている。その鉄塔まで登ればいいのかと思っていたが、そうではなく、まだまだ登りは続く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/58/144d1c880450d3c7f00d80a106391963.jpg)
【9:45 鉄塔2本目 水平歩道方面分岐】
鉄塔2本目は廻遊歩道と水平歩道への分岐点。廻遊歩道は通行止なので、否が応でも水平歩道方面へ進む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/61/92b487566ef1290a783b029933fb2515.jpg)
まだ道は水平にならない。樹林帯の中を登ってゆく。この間もどんどん先行者を追い抜き、どうやら私が先頭に立ってしまったようだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/cd/b3db1b121f5afee0fe04ed88125c9716.jpg)
【9:55 鉄塔3本目 水平歩道始点】
鉄塔3本目でようやく登り一辺倒の勾配が終わる。プレートには「水平歩道 始・終点」の文字が。いよいよここから黒部峡谷左岸の断崖絶壁を這って進む、高度感溢れる道がスタートする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/28/cbb941b4ea75c99a639f7bb0a6214f4a.jpg)
この辺りはお手並み拝見といったところか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/6f/9ab24cd146653e2e3f5d5d54baac8b15.jpg)
【10:25 鉄塔4本目】
水平歩道は絶壁の岩を穿って作られた道ゆえ、休憩場所にあまり恵まれていない。この4本目の鉄塔下は、水平歩道の歩行前半における数少ない休憩可能ポイントかもしれない。頭上の電線からはジージーといかにも高圧線らしい電磁音が聞こえてくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/85/81184e64351e9f341aee17a46001ec7d.jpg)
【10:30 蜆谷(トンネル)】
ルート上には何ヶ所かの隧道をくぐるが、まず1本目は蜆谷。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/d7/323e47fdfbdc3aa4ed8f4e15071b4e9b.jpg)
短い素掘りのトンネル。この程度なら照明は不要。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a9/7ef3cbccbbc21b86bb4ad058cc5d92d2.jpg)
確かに足を滑らせたら谷底へ真っ逆さまであり、常に緊張感が求められる道だが、道幅はある程度確保されているし、崖側は木が茂って枝が下方の視界を遮ってくれているし、危なそうなところにはちゃんと山側に番線(針金)が張ってあるので、特に恐怖感なく歩くことができた。晴れていて路面が乾燥していたことも幸いした。名称が示す通り、勾配があまり無く、ほとんど水平なので、疲れることなくどんどん進んでゆける。見晴らしも良い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/db/13684f7744617118e2313ea3661e7446.jpg)
振り返ると、いま自分が歩いてきた道がどのような地形を穿って作られているのかがよくわかる。岩肌に横一本の筋が入っているのが画像でも確認できるだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/a4/0f8bc3eafefd7c4b42de663b065d41e1.jpg)
【10:53 トンネル】
2本目のトンネル。ここも延長20m程度なので、ライト無しで通過できた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/fd/c51c7ee6a154553e985c5027a087fa85.jpg)
無理して岩を穿っているなぁ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/e8/fb58c8382955a2ddf43af8df38015645.jpg)
欅平から阿曽原まで、直線距離なら大したことないが、道は地形に沿っているため、谷があるごとに遠回りしなければならない。このあたりから徐々に志合谷へと進んでゆく。谷の反対側には、これから進む道が山の斜面にはっきりと水平に刻まれているのが望める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/9b/6e8d8635f1619c0363c93ab30aaa7070.jpg)
志合谷の最奥へとやってきた。谷の対岸に刻まれている水平な筋は途中で消えているが…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/37/235c0b80c103db0319cbb5f14e9962b0.jpg)
【11:07 志合谷(トンネル)】
その箇所はトンネルで通過する。谷の最奥部をU字形のトンネルで通過してゆくわけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/3c/63d00fdda711645d96cb2c46bce7cecc.jpg)
上述のようにトンネルはU字形で、しかも結構な距離があるため、ヘッドライトなどの照明が無いと通行は無理。しかも足元は数センチほど水が溜まっているので、防水仕様の靴が求められる(今の登山靴は大抵が防水仕様だろうけど…)。以前は全区間にわたって水が溜まっていたようだが、最近は排水用の溝が掘られたおかげで、トンネルの前半はあまり足元を気にせず歩くことができた。隧道内の岩に付着した水滴にLEDランプの光が反射して、幻想的な蛍光色を放っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/c4/aece8a5e2c5d7bc86cfcb32076ed32b8.jpg)
トンネル脱出。先へ進もう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/49/8208c61bae3de444706dcb4041911cb0.jpg)
志合谷を振り返ってみる。よくこんなところに道を拓いたものだ。昭和13年にはここで泡雪崩が発生し、トンネル工事の作業員が宿泊していた鉄筋コンクリート宿舎の3階と4階が川の対岸600m先に位置する奥鐘山の西壁まで一気に吹き飛んで多くの犠牲者が出たという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/0f/74938555801b321d5e39b690d269c016.jpg)
道はデンジャラスな雰囲気を帯びてきて、桟道を渡ってゆくと…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/34/5779744f3ae3aa93595d77814b9c8750.jpg)
【11:30 大太鼓】
水平歩道の象徴ともいうべき大太鼓に到達。水平歩道でここが最もスリリングとされており、岩をコの字形に穿って道が拓かれているのがよくわかる。頭上の岩がオーバーハングしており、ここを通過する時には、まるで岩に食われているかのような気分だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/b9/0b2561686ad749b57eb60815c2fa2d11.jpg)
番線を掴みながら慎重に進む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/43/201ebbda0db3c738f10792b07c875c65.jpg)
もしコケたら数百メートル下の谷底へ真っ逆さまだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/35/b680dc4a1e5d47a17ade136d31b8b5ca.jpg)
危ない場所だが眺望は素晴らしい。スタート地点の欅平駅付近にある赤い奥鐘橋が望める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/1a/83dbb6e050d49a8ae97ff8c0846bd87e.jpg)
この日は晴れているから問題なかったが、木の桟道は雨の日になると滑りやすいだろうな。
なんだかんだで無事に大太鼓を通過。意外とあっさりクリアしてしまった。画像や映像で見るとものすごく怖いが、実際に歩くと、それほどの恐怖感は無かった。不思議だ。
大太鼓を歩いているときの様子を安物のデジカメで動画撮影してみた。ちょっとは恐怖感が伝わるかしら?
でも手ぶれがひどく、また熊除けの鈴の音や風切り音が騒々しく、あまり良い映像ではないのであしからず。途中でズームアップして欅平の奥鐘橋を映そうとしているが、すぐに戻ってしまうので何が何だかわからない。
上の往路の動画よりも帰りの復路で撮った動画の方が比較的安定しているので、ついでにその動画もアップ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/ec/4803bbcd7b3879ca07c46893db5da237.jpg)
雲一ついない最高の天気。良い眺めだ。対岸には国内最大級の巨大な岩壁「奥鐘山西壁」が屹立。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/4b/6a53eeb41f61302c1e173dae83c4cd88.jpg)
再び樹林帯に入る。歩きやすい道。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/e1/926f801fda0fd14a3331ed08e9011823.jpg)
折尾谷へ入ってゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/37/cf89b1f57a24b613d8debb137675e689.jpg)
【12:05 折尾谷 堰堤下通路】
この谷は堰堤下の通路を潜り抜ける。この日は足元数センチ水が溜まっているだけだったが、大雨の時などはこの堰堤の通路内が冠水してプールのようになってしまうらしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/23/ee254285f992464df7ef331c602cf9b0.jpg)
堰堤通過後のこの斜面が妙にぬかるんで滑りやすかったので、私にとっては大太鼓よりもこの数十メートルの方がはるかに怖かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/30/9b04b676ae531464e848f6c171248436.jpg)
【12:15/30 折尾の大滝 休憩15分間】
滝の下でちょっと休憩。朝コンビニで買ったおにぎりを頬張る。この滝の水は飲用可能。冷たくて美味い。日陰である上、滝から飛んでくるミストが降りかかってくるので、ここで腰を下ろしていると肌寒い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/bf/56f1b675516815f8147abd7f15f180f8.jpg)
休憩で体力を回復し、再び歩き出す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/38/c928e339b380701f0ecfa7488708943b.jpg)
【12:58 階段】
ひたすら絶壁を水平にトラバースする道を進んできたため、たまにこのような高巻くための階段を登ると、ちょっと腰にくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/8c/d425ec3c41984dad9b02bb58a0abbe92.jpg)
登りの後はすぐに下り。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/b4/fb592d41b68754da9308cc795e2b343a.jpg)
再び水平状の道に戻ると…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/85/1400ff9b39536880a60d23c32ede0c43.jpg)
【13:12 小屋が見える】
梢の向こうに小屋が見えた。山歩きの常として、小屋は見えてからが長い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/60/650c3b740f249a0a95b97b38ddca94e4.jpg)
ちょっとジグザグに登った後、一気に下ってゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/62/790fd4cc25191429f3b63ca657bd31c5.jpg)
橋を2本渡って…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/e1/f4564580fe72d943779101868a6acd19.jpg)
テント場を通過し…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/3f/1074a4293257b5cd1e58b104e85d4f08.jpg)
【13:45 阿曽原温泉小屋 到着】
無事到着。『山と高原地図 剱・立山 2011年版』(昭文社)
によると欅平~阿曽原の標準タイムは5時間なんだそうだが、私は4時間半で済んだ。欅平から水平歩道始点までの登りこそ辛いものの、そこさえクリアしてしまえば、あとはひたすら平坦な道が続くので、あまり体力的にきつい感じは受けなかった。断崖絶壁で転落防止柵なんてものは無いから常に緊張感が求められ、よそ見をしながら歩くことは厳禁だが、高度感溢れるルートであり、適度なスリルが味わえ、眺望のよい区間も多いため、面白く爽快なトレッキングが楽しめた。ただ距離が長く、その間に休憩ポイントが少ないこと、何か所か新しい落石の跡が見受けられたこと、雨が降ると足元が滑りやすくなって一気に滑落の危険性が高まること、折尾谷の堰堤通路が冠水して歩けなくなってしまうこと、そしてエスケープルートが無いこと、などなど、初心者には向いていない道であることも間違いないだろう。
次回は阿曽原温泉について書き綴ってみます。
数日前から後立山連峰を震源とする群発地震が起きていたのだが、その影響により「下の廊下」で落石が発生し、直撃を受けて1人が死亡、1人が負傷する惨事が発生してしまったのだ。更には登山道の岩盤も大規模に崩落し、旧日電歩道は通行止となったのである。日電歩道より下流側の水平歩道に影響は及んでいないらしいが、震度は弱いものの群発地震が収束する気配は無く、万一のことを考えたら、水平歩道も危ないかもしれない。結果的には延期して正解だった、そう思った。しかし一方で、日電歩道が通行止になったということは、阿曽原温泉小屋の混雑要素が消えることになるので、犠牲になった方には申し訳ないが、1人で布団1枚を確保できる機会に恵まれるかもしれない。絶好な天気もしばらく続く。
中止すべきか、あるいは思い切って決行すべきか、判断に迷っていたが、事故発生の2日後に阿曽原へ再度問い合わせてみたら、小屋の主人の佐々木さんが電話に出て「例の件でガラガラになっちゃったよ」との返答があったので、それを聞いた私は条件神経のように「じゃ予約お願いします」という言葉を口にしていた。もう行くしかない。10月9日、仕事を終えた私は車に乗り込み、関越道→上信越道→北陸道のルートで車を飛ばして、魚津のビジネスホテルで投宿(1泊4300円也)。朝6時半頃にチェックアウトして、宇奈月へ向かった。
・今回の行程
2011年10月10日~12日 単独行
1日目 欅平駅(黒部峡谷鉄道)→水平歩道→阿曽原温泉(小屋泊)
2日目 阿曽原温泉→水平歩道→仙人谷ダム→雲切新道→仙人温泉(小屋泊)
3日目 仙人温泉→(往路と同じルートを逆行)→欅平
※今回は1日目の阿曽原温泉到着までを記事にします。
※進行方向の都合上、逆光の画像ばかりで申し訳ありません。
ルート図や勾配断面はルートラボをご覧ください。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/6e/acf6180eba9c10e66631645e1eb57001.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a0/e3bd15ce840f29d76a62830a98e82140.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/e9/b46d842609b14d8c45464b0090993145.jpg)
【7:32 宇奈月駅 出発】
朝7時過ぎに宇奈月駅へ到着。駐車場・列車ともにガラガラ。余裕で一番列車のチケットを購入。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/40/d5d091871db7a61fe0889b025ddd90de.jpg)
【8:47 欅平駅 着】
駅前にはすでに観光客の姿がチラホラ。登山者の姿も見受けられ、みなさん次々に出発してゆくが、そんな人たちを見送りながら、私は駅構内で立ち食いソバを食べたり、トイレを済ませたと、生理的な欲求を満たしてゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/bb/b5e7dcdebe13de7d576eb301c1fb06c5.jpg)
【9:15 登山道 スタート】
駅で30分ものんびりしてしまい、ようやく登山開始。1番列車に乗ってきた登山者の中で、私は最も遅いスタートのようだった。登山道入り口には、旧日電歩道が通行止である注意書きが掲示してある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/7c/73c202b93716c46fa52a6751caf72921.jpg)
いきなりジグザグの登り。一気に高さを稼ぐ。この登りで何人も追い抜く。私は運動不足の文化系人間なのに、なぜか山登りはペースが早い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/93/87fa9b5fe5dd6a182581b68a0dc3ee21.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/df/fc0ced820980a0a2c276248b0584c347.jpg)
【9:35 鉄塔1本目】
上り坂の途中で見上げると、その先には高圧電線の鉄塔が立っている。その鉄塔まで登ればいいのかと思っていたが、そうではなく、まだまだ登りは続く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/76/2c9788e0a3efb12659305122baa2a96a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/58/144d1c880450d3c7f00d80a106391963.jpg)
【9:45 鉄塔2本目 水平歩道方面分岐】
鉄塔2本目は廻遊歩道と水平歩道への分岐点。廻遊歩道は通行止なので、否が応でも水平歩道方面へ進む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/61/92b487566ef1290a783b029933fb2515.jpg)
まだ道は水平にならない。樹林帯の中を登ってゆく。この間もどんどん先行者を追い抜き、どうやら私が先頭に立ってしまったようだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/f2/02f91859e43faa96a5ddf7e340f71c1c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/cd/b3db1b121f5afee0fe04ed88125c9716.jpg)
【9:55 鉄塔3本目 水平歩道始点】
鉄塔3本目でようやく登り一辺倒の勾配が終わる。プレートには「水平歩道 始・終点」の文字が。いよいよここから黒部峡谷左岸の断崖絶壁を這って進む、高度感溢れる道がスタートする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/28/cbb941b4ea75c99a639f7bb0a6214f4a.jpg)
この辺りはお手並み拝見といったところか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/6f/9ab24cd146653e2e3f5d5d54baac8b15.jpg)
【10:25 鉄塔4本目】
水平歩道は絶壁の岩を穿って作られた道ゆえ、休憩場所にあまり恵まれていない。この4本目の鉄塔下は、水平歩道の歩行前半における数少ない休憩可能ポイントかもしれない。頭上の電線からはジージーといかにも高圧線らしい電磁音が聞こえてくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/fc/9b81fd98b40593711a0ff464d9c2713e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/85/81184e64351e9f341aee17a46001ec7d.jpg)
【10:30 蜆谷(トンネル)】
ルート上には何ヶ所かの隧道をくぐるが、まず1本目は蜆谷。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/d7/323e47fdfbdc3aa4ed8f4e15071b4e9b.jpg)
短い素掘りのトンネル。この程度なら照明は不要。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/24/4b969de498629a2c11ddba71c912723e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a9/7ef3cbccbbc21b86bb4ad058cc5d92d2.jpg)
確かに足を滑らせたら谷底へ真っ逆さまであり、常に緊張感が求められる道だが、道幅はある程度確保されているし、崖側は木が茂って枝が下方の視界を遮ってくれているし、危なそうなところにはちゃんと山側に番線(針金)が張ってあるので、特に恐怖感なく歩くことができた。晴れていて路面が乾燥していたことも幸いした。名称が示す通り、勾配があまり無く、ほとんど水平なので、疲れることなくどんどん進んでゆける。見晴らしも良い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/db/13684f7744617118e2313ea3661e7446.jpg)
振り返ると、いま自分が歩いてきた道がどのような地形を穿って作られているのかがよくわかる。岩肌に横一本の筋が入っているのが画像でも確認できるだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/cb/75c21383ef028dded73e76ded7916a94.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/a4/0f8bc3eafefd7c4b42de663b065d41e1.jpg)
【10:53 トンネル】
2本目のトンネル。ここも延長20m程度なので、ライト無しで通過できた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/fd/c51c7ee6a154553e985c5027a087fa85.jpg)
無理して岩を穿っているなぁ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/a2/30b34e33619c7f72c5fbc73254ecbe3e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/e8/fb58c8382955a2ddf43af8df38015645.jpg)
欅平から阿曽原まで、直線距離なら大したことないが、道は地形に沿っているため、谷があるごとに遠回りしなければならない。このあたりから徐々に志合谷へと進んでゆく。谷の反対側には、これから進む道が山の斜面にはっきりと水平に刻まれているのが望める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/74/0639517d34af3602f7d44e308e4a76b3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/9b/6e8d8635f1619c0363c93ab30aaa7070.jpg)
志合谷の最奥へとやってきた。谷の対岸に刻まれている水平な筋は途中で消えているが…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/0d/a100b79505af7907436526f864584638.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/37/235c0b80c103db0319cbb5f14e9962b0.jpg)
【11:07 志合谷(トンネル)】
その箇所はトンネルで通過する。谷の最奥部をU字形のトンネルで通過してゆくわけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/3c/63d00fdda711645d96cb2c46bce7cecc.jpg)
上述のようにトンネルはU字形で、しかも結構な距離があるため、ヘッドライトなどの照明が無いと通行は無理。しかも足元は数センチほど水が溜まっているので、防水仕様の靴が求められる(今の登山靴は大抵が防水仕様だろうけど…)。以前は全区間にわたって水が溜まっていたようだが、最近は排水用の溝が掘られたおかげで、トンネルの前半はあまり足元を気にせず歩くことができた。隧道内の岩に付着した水滴にLEDランプの光が反射して、幻想的な蛍光色を放っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/d8/affd57bf66b76f984a5afb7d596f3167.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/c4/aece8a5e2c5d7bc86cfcb32076ed32b8.jpg)
トンネル脱出。先へ進もう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/49/8208c61bae3de444706dcb4041911cb0.jpg)
志合谷を振り返ってみる。よくこんなところに道を拓いたものだ。昭和13年にはここで泡雪崩が発生し、トンネル工事の作業員が宿泊していた鉄筋コンクリート宿舎の3階と4階が川の対岸600m先に位置する奥鐘山の西壁まで一気に吹き飛んで多くの犠牲者が出たという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/0f/74938555801b321d5e39b690d269c016.jpg)
道はデンジャラスな雰囲気を帯びてきて、桟道を渡ってゆくと…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/34/5779744f3ae3aa93595d77814b9c8750.jpg)
【11:30 大太鼓】
水平歩道の象徴ともいうべき大太鼓に到達。水平歩道でここが最もスリリングとされており、岩をコの字形に穿って道が拓かれているのがよくわかる。頭上の岩がオーバーハングしており、ここを通過する時には、まるで岩に食われているかのような気分だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/b9/0b2561686ad749b57eb60815c2fa2d11.jpg)
番線を掴みながら慎重に進む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/43/201ebbda0db3c738f10792b07c875c65.jpg)
もしコケたら数百メートル下の谷底へ真っ逆さまだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/80/b5f4e95f0db53df29d42be3fc23798e3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/35/b680dc4a1e5d47a17ade136d31b8b5ca.jpg)
危ない場所だが眺望は素晴らしい。スタート地点の欅平駅付近にある赤い奥鐘橋が望める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/1a/83dbb6e050d49a8ae97ff8c0846bd87e.jpg)
この日は晴れているから問題なかったが、木の桟道は雨の日になると滑りやすいだろうな。
なんだかんだで無事に大太鼓を通過。意外とあっさりクリアしてしまった。画像や映像で見るとものすごく怖いが、実際に歩くと、それほどの恐怖感は無かった。不思議だ。
大太鼓を歩いているときの様子を安物のデジカメで動画撮影してみた。ちょっとは恐怖感が伝わるかしら?
でも手ぶれがひどく、また熊除けの鈴の音や風切り音が騒々しく、あまり良い映像ではないのであしからず。途中でズームアップして欅平の奥鐘橋を映そうとしているが、すぐに戻ってしまうので何が何だかわからない。
上の往路の動画よりも帰りの復路で撮った動画の方が比較的安定しているので、ついでにその動画もアップ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/ec/4803bbcd7b3879ca07c46893db5da237.jpg)
雲一ついない最高の天気。良い眺めだ。対岸には国内最大級の巨大な岩壁「奥鐘山西壁」が屹立。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/4b/6a53eeb41f61302c1e173dae83c4cd88.jpg)
再び樹林帯に入る。歩きやすい道。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/e1/926f801fda0fd14a3331ed08e9011823.jpg)
折尾谷へ入ってゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/37/3e34ff353cb7ada07ee9a22ebe492b1c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/37/cf89b1f57a24b613d8debb137675e689.jpg)
【12:05 折尾谷 堰堤下通路】
この谷は堰堤下の通路を潜り抜ける。この日は足元数センチ水が溜まっているだけだったが、大雨の時などはこの堰堤の通路内が冠水してプールのようになってしまうらしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/23/ee254285f992464df7ef331c602cf9b0.jpg)
堰堤通過後のこの斜面が妙にぬかるんで滑りやすかったので、私にとっては大太鼓よりもこの数十メートルの方がはるかに怖かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/46/f5a214826ae8da63c4009d8e17341178.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/30/9b04b676ae531464e848f6c171248436.jpg)
【12:15/30 折尾の大滝 休憩15分間】
滝の下でちょっと休憩。朝コンビニで買ったおにぎりを頬張る。この滝の水は飲用可能。冷たくて美味い。日陰である上、滝から飛んでくるミストが降りかかってくるので、ここで腰を下ろしていると肌寒い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/bf/56f1b675516815f8147abd7f15f180f8.jpg)
休憩で体力を回復し、再び歩き出す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/38/c928e339b380701f0ecfa7488708943b.jpg)
【12:58 階段】
ひたすら絶壁を水平にトラバースする道を進んできたため、たまにこのような高巻くための階段を登ると、ちょっと腰にくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/8c/d425ec3c41984dad9b02bb58a0abbe92.jpg)
登りの後はすぐに下り。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/b4/fb592d41b68754da9308cc795e2b343a.jpg)
再び水平状の道に戻ると…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/85/1400ff9b39536880a60d23c32ede0c43.jpg)
【13:12 小屋が見える】
梢の向こうに小屋が見えた。山歩きの常として、小屋は見えてからが長い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/f3/89b2e4daed30ecb079a762e7c7157c9a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/60/650c3b740f249a0a95b97b38ddca94e4.jpg)
ちょっとジグザグに登った後、一気に下ってゆく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a4/4ae9f8e910fc0d978890ffb9a3aaec4d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/62/790fd4cc25191429f3b63ca657bd31c5.jpg)
橋を2本渡って…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/e1/f4564580fe72d943779101868a6acd19.jpg)
テント場を通過し…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/3f/1074a4293257b5cd1e58b104e85d4f08.jpg)
【13:45 阿曽原温泉小屋 到着】
無事到着。『山と高原地図 剱・立山 2011年版』(昭文社)
次回は阿曽原温泉について書き綴ってみます。