関東の人間にとって長岡の温泉といえば、ピンクなコンパニオンでおなじみの静岡県・伊豆長岡温泉を思い浮かべることが多いかと思いますが、越後の長岡にも小規模ながら温泉地が存在しており、長岡の街の郊外で3軒の旅館が軒を並べております。その中でも湯元という文言に惹かれて「湯元館」で立ち寄り入浴してきました。長岡という地名は、新潟県第二の都市として、あるいは旧城下町として交通の要所として角栄の地盤として花火の街として、日本人なら知らない人はいないかと思いますが、まさか温泉があるとは恥ずかしながら存じ上げず、無名なのだからきっと相当寂れた小規模なものに違いないと勝手に決めつけて訪問したのですが、「湯元館」の敷地はそんな私の思い込みを裏切る庭園風の広いもので、確かに蒼然とした雰囲気が強いのですが、庭には錦鯉が泳ぐ池があり、それを見下ろすように客室が並んでいます。
道路を挟んだ向かい側には、ぬるい源泉が落ちている小さな滝を発見。このお湯は何に使われているのかしら。もしかしたらこのまま捨てられているのかしら。旅館のお庭では老犬がお昼寝中。
敷地こそ広くて立派ですが、建物は外見・内部共に相当古く、玄関から見える内部の薄暗さにいささかの不安を覚え、入館をちょっと躊躇ってしまいました。でも帳場で入浴を乞うと、元気溌剌なおばちゃんが対応してくれ、私の不安もたちまち解消です。
館内は30年前から時計の針が止まったかのような佇まいです。床にはグリーンのカーペットが敷かれており、途中で卓球台やマッサージチェアが置かれた広間を通過します。温泉に卓球台という組み合わせは、いかにも昭和の雰囲気ですね。
脱衣所はここ数年で改修されたのか、意外にもかなり明るく綺麗です。グリーンカーペットの上に古い卓球台が置かれていた館内と同じ建物とは思えません。籠には手書きでネームが入っていました。
脱衣所からは古さはあまり感じられませんでしたが、浴室は昭和のお風呂そのもので、全面タイル貼りとなっており、女湯との境には白波立つ海岸の光景が描かれたタイル画が施されています。そして浴室の中央に小判型の浴槽がひとつ据えられています。浴槽にはSUS製の武骨な手摺が取り付けられていますが、その外観や使ったときのフィーリングは、お風呂というよりも建設現場や非常用設備を想像させます。浴槽のタイルは長年の使用のために色が褪せており、全体的な色調も中間色によって占められており、あたかも玉手箱を開いたかのように、室内にただいるだけで、一気に自分が老化しちゃいそうな空気が漂っていました。
洗い場には古典的な押しバネ式カランが6基、そしてシャワーのみの水栓が2基設置されています。カランのお湯もおそらく源泉使用かと思われ、わずかに金気感とタマゴ的な匂いが感じられました。
浴槽中央の底からは加温された源泉が供給され、湯船に張られた湯は浴槽の切り欠けから洗い場へと溢れ出てゆきます。湯使いは加温の上での掛け流しであり、湯船に人が入るとお湯は豪快にオーバーフローします。
お湯の見た目は無色透明ですが、やや黄色み掛かって微かに濁っているようにも見えます。カランでは金気やタマゴ感が確認できましたが、湯船ではほぼ無味無臭で、浴感にはあまり特徴が無く、かなり薄いお湯であると言えそうです。湯中には湯垢みたいな浮遊物が沢山舞っていましたが、館内表示によれば「湯華や砂が多量に出てくる時もございます」とのことですから、私が目にしたのは垢ではなくて湯華なんでしょうね。上述のようにお湯は加温されたうえで供給されていますが、過度に加温されているわけではなく、むしろぬるめであり、じっくり長湯ができました。
お湯そのものは正直なところやや面白みに欠けますが、レトロな雰囲気がたっぷり漂う館内は、懐古趣味の方には一見の価値があるかもしれません。ゆっくりと時間の流れる鄙びたお宿でした。
2号井
単純温泉 36.5℃ pH7.8 169L/min(動力揚湯) 溶存物質295.3mg/kg 成分総計298.9mg/kg
Na+:58.2mg(72.08mval%), K+:15.7mg(11.40mval%),
Cl-:75.9mg(60.45mval%), HCO3-:81.8mg(37.86mval%),
H2SiO3:50.2mg,
新潟県長岡市高畑町42 地図
0258-32-2492
10:00~21:00
400円
ロッカー・シャンプー&石鹸・ドライヤーあり
私の好み:★★