いまや五所川原のみならず津軽一円を商圏としている大型ショッピングセンター「エルムの街」の一角に、「エルムの湯」という温泉を使用したスーパー銭湯が存在していることは、私は開業以前から知っておりましたが、現代風の綺麗なスーパー銭湯は津軽の温泉らしくないという私の勝手な思い込みが訪問を阻止していたのみならず、加水循環消毒という湯使いであるという情報も従前から耳にしていたので、何度も目の前を通過していながらいままで利用してきませんでしたが、無料入浴券をもらったので、ものは試し、行ってみることにしたのです。上の画像は昼間に撮影したものですが、実際には閉館1時間前(夜11時頃)に利用しました。
フロントまわりはいかにもスパ銭らしい雰囲気ですね。この画像は館内に「ホタルの光」が流れているタイミングで獲ったため、客はおろか係員も写っていません。なお館内には廉価な簡易宿泊施設があるらしく、寝台で夜を越せるんだそうです。私は当地では「パークイン五所川原エルムシティ」を定宿にしているのですが、今度は宿代を浮かせるべく、こちらで一泊してみようかしら。
浴室入口付近にはドクターフィッシュが(もちろん有料)。これもスパ銭ではすっかりおなじみになりましたね。
100円リターン式のロッカーが並ぶ脱衣室。さすがに綺麗で使い勝手良好です。小上がりにはマッサージチェアーが2台置かれていました。
この施設で感心したことのひとつに、温泉の浮遊物に関する分析調査を掲示していることが挙げられます。大抵はお手製の簡単な説明(たとえば「温泉中の浮遊物は湯の華ですのでご安心を」みたいなもの)で済ませてしまいますが、こちらでは関係機関に調査を依頼した報告書をそのまま掲示しており、ウソ偽りなくお湯について説明しようとしている施設側の誠意が伝わってくるようでした。
浴室も典型的なスーパー銭湯そのものであり、奥行きが長く天井は高く、広々としていて開放感があります。そして室内にはたくさんの洗い場と多様な温浴槽が設けられています。
洗い場にはスパウトとシャワーのペアが計32組、いくつかの島に分かれて設置されています。水栓からは黒っぽい褐色のお湯が吐出され、そのお湯を口にしてみるとマイルドな塩味が感じられました。なお洗い場にはボディーソープやシャンプーが備え付けられているのですが、2~3ブースに1セットしかないため、数が足りていないように思われます。従いまして石鹸類は持参したほうは良いでしょうね。
温浴槽は手前から、座湯・電気湯・ジャグジー…
そして白湯の低温・中温・高温、という順に並んでいます。白湯というからには真湯なのかと思いきや、実際に投入されているのは無色透明の食塩泉とモール泉のような褐色の冷鉱泉をブレンドさせたものでして、食塩泉の温度が高いため、冷鉱泉を混ぜて温度調整しているんだそうです。このため3つある白湯浴槽は冷鉱泉の混合割合によってお湯の色が異なり、当然ながら温度の高い浴槽ほど色が薄く、高温槽では底がはっきり見えるものの、中温槽や低温槽では底がぼやけて見えるほどの着色と濁りを帯びていました。また源泉は成分総計8.468g/kgという数値を有する純食塩泉であるため、高温槽のお湯はかなりしょっぱいものでしたが、中温槽や低温槽ではかなり塩味がマイルドになっていました。
分析表に付記された表示によれば、循環ろ過装置使用・衛生基準を満たすため塩素系薬剤を使用、とのことですが、塩素臭はあまり気にならず、また浴槽縁の切り欠けからの溢れ出しもありましたから、循環装置併用の半掛け流しといった湯使いなのではないかと推測されます。
上述した温泉と冷鉱泉のブレンドについては、ちゃんと浴槽の上でも説明が掲示されていました。
こちらは露天風呂。節電中なのか照明はほとんど点けられておらず、結果的に画像もかなり暗くなってしまいました。頭上は屋根に覆われ、周囲は高い塀に囲まれ、外の景色はちっとも楽しめませんが、まぁ周囲には店舗などが建ち並んでいる立地ゆえに致し方ないでしょう。
こちらにも内湯の白湯浴槽と同様に源泉と冷鉱泉がブレンドされたものが投入されているようですが、暗かったので見た目に関してはよくわかりませんでした。しかしながらお湯の塩分濃度は白湯高温槽とほぼ同等であるように思われます。また外気に冷やされているためか、温度に関しては白湯中温槽と同じくらいにまで下がっていました。お湯は浴槽奥にある岩の湯口から落とされ、手前側の切り欠けから溢れ出ていますが、投入量と排湯量が釣り合っていないように見受けられ、おそらく槽内でも吸引が行われているのではないかと思います。
私が「エルムの湯」で感激したのは、実は温泉ではなくこの水風呂です。サウナ室前に据えられているのですが、この水風呂に用いられている冷鉱泉が秀逸なのです。上述のように温泉の温度調整のために混ぜられている冷鉱泉なのですが、まるで濃い烏龍茶のような深い琥珀色をした鉱泉からはモール系の匂いがふんわり漂い、ツルスベ浴感もはっきり得られて非常に爽快でした。今回は温浴槽より水風呂に入っている時間の方が長かったかもしれません。今年の夏のような猛暑にはピッタリ。なお塩素系薬剤の臭いがしたので、薬剤による消毒が行われているのかもしれません。
水風呂以上に気に入ったのがサウナ前の掛け水です。水風呂と同じ冷鉱泉のはずなのですが、こちらの方が知覚面がはるかにはっきりとしており、かなり強い金気の味と匂い、モール系の匂い、そして重曹系の清涼苦味が感じられました。また鉱泉が溜められている甕のまわりは真っ黒く染まっており、いかにこの鉱泉が濃いかがビジュアル面でも確認できました。そういえば近所の「音次郎温泉」にも同様の水風呂がありますね。この界隈では、塩辛くて熱い食塩泉と、モール系の冷鉱泉が、同じ場所で(ボーリングの深さを変えるだけで)同時に利用できるのですから、なんとも素晴らしい地下構造です。一方、水風呂の方もオーバーフローしているものの、その流路はほとんど着色されていません。甕は冷鉱泉100%であるけど、水風呂の方は水道水か何かで薄められているのかしら。真実の程はよくわかりませんが、とにかくこの甕の鉱泉は本当に爽快でした。温泉に来ておきながら水風呂に惚れるとは本末転倒な感は否めませんが、好きになっちゃったものは仕方が無い、恋は盲目なのであります。
エルム源泉
ナトリウム-塩化物泉 59.0℃ pH不明 溶存物質8.468g/kg 成分総計8.468g/kg
Na+:3082mg(95.78mval%),
Cl-:4737mg(95.49mval%),
H2SiO3:65.6mg, HBO2:66.6mg,
温度調整のために加水(お湯の汲替え時や温度が熱くなった時のみ)、
循環ろ過装置使用
衛生基準を満たすため塩素系薬剤を使用
青森県五所川原市大字唐笠柳字藤巻509-17
0173-34-1126
ホームページ
6:00~24:00(受付23:30まで) 無休
400円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★