今夏(2012年)、宮城県内では水不足が深刻な問題となっており、上画像で写っている鳴子ダムの貯水率が一桁にまで落ち込んでしまったことは全国ニュースでも取り上げられました。ダムがカラカラに干からびているということは、ダム湖に水を供給する周辺の山々が蓄えている水の量も減っているわけだ…。このことを踏まえて、以下の話を進めてまいります。
前回取り上げた「奥の院地獄」のついでに「荒湯地獄」にも寄ってみることにしました。拙ブログでも立ち上げ初期に取り上げており、その時はまだ残雪が深い時期に雪まみれになって野湯を楽しんだことをレポートさせていただきました(当時の記事はこちら)。
こちらの野湯は今やあまりにメジャーになりすぎてしまったので、どうせ誰かいるだろうと思い込んで訪問したのですが、どういうことか誰もいませんでした。どうしてなのかしら。
荒涼とした地獄お馴染みの景色。閻魔様の裁きを受ける前から、自らすすんで地獄へ足を運ぶのが温泉ファンの不可思議な心理です。ガレの至る所で湯気やガスが噴き上げられていますが…
野湯でおなじみのこちらの沢にはちっとも水が流れていません。雨が長い間降っていないため、一帯の水が涸れちゃったんですね。これぞ本当の枯山水、なのか…。
でも涸れ沢をしばらく下ってゆくと、ようやく温泉噴出箇所に遭遇しました。シューシューと音を立てて熱湯が湧いていましたが、水分が少ないので辛うじて湧いてくるお湯も熱で蒸気になってしまい、結果的にチョロチョロ程度のお湯しか沢へ流れ出てきていません。それでもここから下方には小さな湧出箇所がいくつもあるらしく、それらが少しずつ集まって、いつの間にやら沢らしい姿を整えていました。
沢が地獄から出てゆくところには斜面を滝のように落ちる箇所があり、その途中には人工的に堰きとめられている湯溜りがいくつもあって、私がここを訪れるときには、これらの湯溜りの中で自分の好みの湯加減になっているところを選んで湯あみしているのですが…
以前利用したこの湯溜りは、温度こそ問題ないのですが、流量不足が祟って嵩が全然足りません。入ったとしてもお尻が浸かる程度です。奥の院地獄でも流量不足で尻湯になってしまいましたが、2箇所連続で尻湯はイヤなので、ここはパス。
一番下の湯溜りはぬるすぎでした。流量が少ないから、すぐに冷めちゃうんですね。
地獄から緩い滝のような斜面を下りきったところで、南の方から流れてくる別の沢と合流しますが、この合流地点にはご覧のような、ブルーシートでつくられたデカい露天風呂がつくられています。ネット上を見る限り、このお風呂で入浴なさっている方が多いようですね。荷物を置くパレットまで持ち込まれており、野湯にしてはかなりやり過ぎな感があって興醒めですが、他の湯溜りは全然嵩が足りないので、今回は入浴することにしましょう。
近くの山肌からは実測で86.5℃の熱湯が湧出しており、このお湯を沢の水とブレンドさせて湯船に溜めています。地獄の上の方と比べて低い位置にあるこちらの噴出孔では、帯水域の保水量に余裕があるのか、決して多くは無いものの、それなりの量のお湯が湧き出ています。
沢水が流れ込んでくる量も絶妙で、湯船の温度は40℃弱。ぬる湯好きの私にとっては文句ない湯温です。槽内に沈められているホースによってサイフォンの原理で排湯されていますが、注入量とのバランスがうまくいっており、湯船の嵩もちょうどよい具合でした。あまりに人工的で野湯の趣向にやや欠けるのですが、悔しいかなお風呂としては完璧でした。まだ残暑厳しい陽気でしたが、アブの姿はほとんど見られなかったのも嬉しいところ。唯一難点を挙げるならば、槽内にアカムシが数匹いたことぐらいでしょうか。
ということで入浴です。いや~、気持ち良い!
山の地下にもう少し水が蓄えられていれば、もっといろんな湯溜りを選べたのでしょうし、この湯船の温度ももう少し高くなっていたかもしれません。それにしても、少雨の影響が荒湯地獄にも及んでいたとは…
野湯につき温泉分析表なし
宮城県大崎市鳴子温泉鬼首
野湯につき24時間入浴可能
無料
地獄内は硫化水素ガス濃度が高いため、立入禁止となっていますす。もし野湯を楽しむ際は自己責任で。