温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鬼首 奥の院地獄で尻湯(2012年9月連休)

2012年09月21日 | 宮城県
数日前の2012年9月連休に鬼首の「奥の院地獄」を軽く探検してきました。荒湯地獄を筆頭に片山地獄やNo.4地獄など、鬼首の一帯には温泉ファンなら存在を知っている、あるいは実際に行ったことのある野湯が点在しておりますが、数年前に発生した土石流により谷間地形の地獄(噴気帯)が土砂に呑みこまれたり、あるいは鳴子地熱発電所における事故以降、発電所周辺地域への立入が厳しく制限されるようになったりと、近年この地域の野湯を取り巻く環境は厳しくなっており、「荒湯地獄」以外に関してはここ1~2年、ネット上での訪問記やレポートが見当たらないようです(もし最新レポートをアップなさっている方がいらっしゃったらゴメンなさい)。野湯を楽しめる状況ではないと諦めて訪問する人が減っているのか、あるいは危険性を考慮して野湯ファンがレポートの公開を自粛なさっているのか、そのあたりはよくわかりませんが、最新情報が無いのなら俺が行ってやるぜ、と一人よがりの意気軒昂に身を任せて鬼首へと車を走らせました。


 
水神峠に車をとめ、折り畳み自転車を組み立てます。現在鳴子地熱発電所は工事を行っており、PR館も休業中につき、一般者は発電所のゲート以降は一切立ち入ることができず、PR館の駐車場も使えません。また水神峠と発電所ゲートまでの間には転回場所もないため、峠から先へ車で進むとかなり面倒くさいことになります。従いまして、私はここへ車を置いて、自転車へ乗り換えることにしました。歩いても大した距離じゃないので、わざわざ自転車でなくてもいいんですけどね。



発電所へ向かってひたすら下り坂です。途中から白いガレを流れる小さな川が左手に並行します。こちらを訪れている方にとってはおなじみの景色ですね。



川の一部では岸に真っ黒い塊が発生し、それが溶けだして黒いモヤモヤとなっている箇所もありました。硫化物なのでしょうか。


 

沢の水は冷たいのですが、ところどころで温泉が落とされているパイプが突き出ており、お湯が落ちてゆく場所にはまるで腸のような筒状の析出が出来上がっていて、その細い筒をめがけてお湯が注がれていました。お湯の温度を測ったら54.7℃。子供用プールでお湯を溜め、川の水でちょっと薄めたら気持ち良いお風呂ができあがりそうですが、お湯が溜まるまでに相当時間がかかっちゃうかもしれませんね。



発電所ゲートを撮影しようとしたら、中から職員の方に睨まれちゃいましたので、臆病者の私はその場で何も撮らず、即座に踵を返してきた道を戻ってしまいました。最近、発電所は発電方法を問わず、どこでもピリピリしていますね。
さてゲートからちょっと戻ったところには「花山寺跡」の碑が立っていますが、字は殆ど消えていて判読困難です。


 
その碑から更に数十メートル戻ったところにあるこの沢をさかのぼります。沢の水量がやけに少ないのが気がかりですが、とにかく現場へ行ってみましょう。道端に自転車を置いて、いざスタート。それほど古くない踏み跡があるので、私と同じように沢を遡っている人もいるようです。


 
沢の水は既に温かいのですが、入浴するにはぬるすぎます。川沿いの土は柔らかいものの、場所をしっかり選べばズブズブ潜るようなことはありませんでした。画像右(下)の箇所で左岸へ。


 
ここからしばらくは、登山道の跡と思しき杣道が残っているので歩き易いのですが…


 
やがて土石流の詰め跡が視界に飛び込んできました。発生から数年経っているはずですが、ほとんど当時のままの姿をとどめています。こんな大木が流されちゃうんですね…。ここから先は道が消えちゃっていますから、足元をよく確認しながら先へと進みます。

倒木の合間をぬって先へ進むと、目の前が開けて奥の院地獄に到着しました。土石流発生から暫くの間は地面が相当柔らかくて歩けるような状態ではなかったかと推測されますが、現在では地面もかなり落ち着いており、柔らかい場所でもせいぜい足首まで潜る程度で、よく地面を観察していかにも柔らかそうな場所を避ければ、問題なく歩くことができました。
しかし木はかなり腐っており、丈夫そうに見える木でも脆くてたやすく折れちゃいますから、木を足掛かりにしようとするときは要注意です。



地獄の底部には温泉の沢が流れていますが、どこまでいっても流れが細く、また湯だまりになっている箇所も無く、野湯を楽しめるような状況ではなさそうです。今夏の少雨のため、流量が減ってしまっているのでしょう。



沢をしばらく遡っていると、この画像の箇所で流れが東西二手に分岐しており、東側の沢からはミルクティー色に濁ったお湯が、西側からは灰白色に濁ったお湯がそれぞれ流れてきて、ここで2つの沢が合流し、黄土色の濁りとなって下流へと向かっているのでした。


 
西側の灰白色の沢に沿って奥へ歩いてゆくと、その先には白い湯気を濛々と挙げている噴気帯がありました。



激熱の濃い灰色を帯びた泥を吐きながらボコボコと音を立てている噴気孔にも遭遇。硫化水素ガスに注意を要します。この一帯は地面も熱くなっており、ところどころ柔らかい箇所もあるため、ボッケにハマって大やけどをする危険性もあり、歩行には十分な注意が必要です。私はそこらに転がっていた木を拾って杖の代わりにし、一歩一歩、杖を突いて地面の状況を確かめながら歩きました。



灰白色の沢とミルクティー色の沢は20~30メートル程度の隔たりを保ちながらほぼ平行に流れていました。一旦ミルクティー色の沢へと移り、その水温を測ってみたらなんと57.6℃。とても入浴できる温度ではありません。



灰白色の方に戻って温度を計測しましたが、やはり同じような熱さでした。つまり沢が二手に分かれた箇所から上流は熱くて入浴不可能ってことだ…。このため二つの沢の合流地点から下流側へ戻ることに。


 
途中で湯溜まりを発見。ちょうど一人入るにはもってこいの大きさで、温度も43.5℃と丁度良かったのですが、デカい蛾の死骸が浮いている上、底から絶え間なくポコポコと泡が浮かび上がっており、場所柄、もしかしたら底は激熱になっている可能性もあったので、ここでの入浴は敬遠することにしました。


 
上述の湯溜まりからちょっと下流に当たるこの画像の箇所が、地獄内では一番流れが緩やかで、温度も42.2℃と丁度良い感じ。倒木が多くて殺風景ですが、他に良さそうな場所は無い…



ということで、すっぽんぽんになって湯あみ実行です。見にくい裸体をお目にかけて申し訳ございません。一応、周辺から手頃な石を集めて堰をつくったのですが、常に泥が流れてくるため忽ち堰は泥で埋まり、また底の泥はとても柔らかいので、堰の下がすぐに抉れてしまって折角溜めたお湯もあっという間に流出してしまう有様。大きなスコップを持参すればよかったと後悔しきりです。
こんな状況ですから、寝そべってもせいぜい背筋が浸かる程度で、普通に座ったら尻湯どころか、肛門湯あるいは蟻の渡渡り湯とでも称すべき状態でした。今夏の宮城県が深刻な水不足に陥っていることは周知のとおりです。降雨量不足が市民生活や農業に影響を及ぼすのは当然ですが、まさか野湯遊びにも支障をきたすことになろうとは、まったく想像できませんでした。尤も、山に雨が降らなきゃ沢の水は減りますもんね。そんな簡単な事実に気がつかなかった私がマヌケでした。でも自分の肌で温泉のぬくもりを感じ、泥湯的な感触も味わえたので、まぁ良しとしましょう。
ちなみに湯あみ後は堰を解体しております。


野湯につき分析表なし

宮城県大崎市鬼首某所 (今回は地図による場所の特定を控えます)

野湯につき備品類なし
無料

私の好み:評価保留

コメント
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