温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東鳴子温泉 高友旅館

2013年05月25日 | 宮城県
 
皆様おなじみの東鳴子「高友旅館」へ、黒湯に浸かって全身アブラ臭にまみれたくなり、先日日帰り入浴で訪問してまいりました。多くの温泉ファンによって愛され、そして語りつくされているこの高友旅館に関して、いまさらあーだこーだと申し上げるつもりはございません。日帰り如きでこの旅館のお風呂を語ることは野暮であることも承知しております。今回は余計なことを書くつもりはございません。もしこの旅館や黒湯について詳しく知りたいのでしたら、ネット上に素晴らしいレポートがたくさん上梓されておりますので、是非検索して他の方のサイトをご覧ください。今回は館内に複数ある浴室のうち2つについて、ただ冗長に、利用した時に感じた描写やお湯に関するインプレッションを述べてゆくつもりです。



玄関にて「ごめんください」と声をかけ、帳場から出てきたご主人に湯めぐりチケットを差し出して入浴をお願いしました。こちらには何度か訪問しておりますが、清掃のために一部の浴室が利用できない場合があり、前回までは運悪くそんなタイミングばかりだったのですが、今回は日帰り入浴で入れるお風呂すべてが利用可能でした。


 
いかにも東北の湯治宿らしい鄙びきった館内。廊下のガラスケースで口を大きく開けて牙を光らせているトラにもご挨拶。


●黒湯&プール風呂
 
黒湯へ向かう途中の小ホール。いつのものかわからないマッサージチェアや、メリーゴーランドから1頭だけ持ってきたような子供が跨る子馬の遊具など、明らかにここだけ時空間軸が周囲とねじれをおこしていますね。子馬は今でも稼働するのかな。


 
黒湯の入り口。木造の学校の廊下みたいですね。黒湯の浴室は混浴ですが、殿方と一緒に入るのはイヤッという淑女のために、奥にはこぢんまりとした婦人専用風呂もあり。脱衣室の壁に貼られていた「ケロリンカプセル」の古い広告に胸キュン。温泉とケロリンは切っても切り離せない関係ですね。ちなみに現在カプセルは販売されていないかわりに、カプレットやチュアブルなら販売されているそうですよ(参考:内外製薬のサイト)。でも私は服用したことないんだけどなぁ…。


 
戸を開けた途端に鼻孔をくすぐる芳醇な油臭に早くも陶酔。この香りを嗅がないと東鳴子に来た気になりません。目の前の勾玉のような形をしている浴槽が黒湯。実物を見るとそんなに黒っぽくないのですが、こうして画像で見ればたしかに黒いですね。
洗い場のシャワーの配管には「適度な温度になるまで一分三十秒程かかります」と記された案内がぶら下がっており、実際にシャワーのコックを開いてみると、きっかり1分30秒後に温かいお湯が出てきました。すごい。


 
黒湯の投入口では白い湯花がユラユラ。黒と白の対比が綺麗ですね。浴槽の内部こそ黒いのですが、お湯自体は鼈甲のような黄色と琥珀色の中間のような色合い。溶き卵のような湯の花が多数浮遊しており、上述のように強い油臭が放たれ、口に含むとインクを口に入れたかのような苦味・えぐみ・痺れが口腔に広がりました。完全掛け流しでやや熱めの湯加減。重曹のおかげで少々ヌルっとした感触が混ざるツルスベ浴感が爽快です。アブラ臭に酔い、重曹の浴感に惚れる・・・黒湯は何度入っても飽きることがありませんね。


 
黒湯と同じ室内にある四角い大きな浴槽はプール風呂。長方形でちょっと高い位置に設けられているその姿は、たしかにプールみたいだ。



このお風呂は夥しいカルシウムの析出が特徴的。


 
プール風呂の湯口まわりは噴泉塔のような鱗状の石灰華が形成され、お湯がこぼれてゆく流路には瘤のような丘ができ、とにかくすごいことになっております。いや、私は以前にもこの光景を見ておりますが、何度見てもその迫力に心が鷲掴みにされ、目が釘付けになってしまいます。



お湯から突き出る手摺りの湯面まわりにも析出がこびりつき、UFOみたいになっていました。
プール風呂に注がれているのは「顕の湯」源泉で黒湯とは全く性質が異なるものであり、見た目は白くぼんやりと霞む貝汁濁りで、溶き卵状の湯の花が無数に舞っています。硫黄臭や薄い油臭とともに石灰を思わせる粉っぽい匂いが湯面から漂い、炭酸的酸味や石膏味が感じられました。ちょっとぬるめの湯加減ですので、黒湯で体が火照ったらこちらに入って体温を落ち着かせるといいのかも。



●ひょうたん風呂

黒湯から一旦帳場へ戻って玄関の前を通り過ぎ、玄関右手へ延びる廊下を進んで旅館棟サイドにあるもう一つのお風呂へ。こちら側は男湯が「ひょうたん風呂」、女湯が「ラムネ風呂」というように分かれており、最奥に位置する「ひょうたん風呂」へ向かうには「ラムネ風呂」の前を通り過ぎて行くことになるわけですが、「ラムネ風呂」の手前にはいつの間にやらユニットタイプの新しい洗面台が置かれており、ドライヤーも用意されていました。


 
薄暗い通路をひたすら進んだ鉄格子の扉の先にあるのが「ひょうたん風呂」。どうして鉄格子なのかしら。悪いことをしたら収容されちゃう部屋に入っていく気分。


 
脱衣室・浴室ともコンパクトな造りで、名前通りひょうたん形をした浴槽は2~3人サイズ。室内には水道ホース以外のにカランが無いため、湯船から桶で直接お湯を汲んで掛け湯することになります。この日入浴してちょっとした違和感を覚えた私・・・あれ?「ひょうたん風呂」ってもうちょっと熱くなかったかな? 以前入浴した時の記憶を探りながら脱衣室内に掲示されている張り紙をよく読んでみたら、震災の影響によって湧出温度が低下していたんですね。低下したといっても40℃はありますから、入浴には全く支障ありません。


 
湯船では40℃前後ですが、湯口から出た直後ですと42℃くらいはあったように私の手は感じ取りました(いい加減な感触ですのであまりあてになりませんが)。お湯は暗い黄色に弱く濁り、油臭を漂わせ、炭酸味や苦味が感じられました。泡付きもしっかりしており、肌を滑るような滑らかな浴感がとっても良好。以前より若干ぬるくなった分、湯上り後の爽快感が増したような気がします。

館内にはこの他にも宿泊者用の家族風呂があり、今回紹介していない源泉が利用されていたりします。こちらのお宿をちゃんと知るためにはやっぱり宿泊しないとダメですね。


【黒湯】
幸の湯
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型) 57.8℃ pH6.7 溶存物質2490.2mg/kg 蒸発残留物1630mg/kg
Na+:518.9mg(85.30mval%),
Cl-:141.1mg(13.76mval%), HS-:2.5mg(0.28mvl%), HCO3-:1430mg(81.02mval%),
H2SiO3:228.1mg, CO2:385.3mg, H2S:3.8mg,
(平成21年10月2日分析)
完全掛け流し

【プール風呂】
顕の湯
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉 74.6℃ pH6.8 溶存物質2252.6mg/kg 蒸発残留物1461mg/kg
Na+:375.7mg(64.76mval%), Mg++:34.1mg(11.14mval%), Ca++:105.8mg(20.93mval%),
Cl-:104.3mg(11.00mval%), SO4--:222.6mg(17.32mval%), HCO3-:1166.9mg(71.53mval%),
H2SiO3:228.1mg, CO2:385.3mg,
(平成21年10月2日分析)
完全掛け流し

【ひょうたん風呂・ラムネ風呂】
玉の湯
ナトリウム-炭酸水素塩泉 49.3℃ pH6.5 溶存物質1191.4mg/kg 蒸発残留物803.4mg/kg
Na+:234.3mg(83.52mval%),
Cl-:37.6mg(8.72mval%), HCO3-:659.2mg(88.82mval%),
H2SiO3:188.4mg, CO2:360.3mg,
(平成21年10月2日分析)
完全掛け流し

陸羽東線・鳴子御殿湯駅より徒歩3分(250m)
宮城県大崎市鳴子温泉鷲ノ巣18
0229-83-3170
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
500円(鳴子湯めぐりチケット2枚)
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (5)
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