温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

梵梵温泉

2013年05月03日 | 台湾
 
宜蘭県の「梵梵温泉」は数ある台湾の野湯(台湾では野渓温泉と呼びます)の中でも有名な部類に属しているんだそうでして、日本で出版されている一部のガイドブックでも取り上げられているほどですが、現地までの公共交通機関が非常に不便であるため今まで訪問機会に恵まれず、レンタカーを借りた今回、ようやく念願叶って現地へ行くことができました。
まずは台7線の英士橋手前に聳えるゲートを潜って英士集落へ入ります。台湾の山間部、特に原住民が暮らす集落では部族を問わずにキリスト教信仰が深く浸透しており、この小さな集落でも十字架を屋根に戴く教会が、集落入口付近と集落奥の丘の上に、計2軒も建てられていました。


 
集落で最も広い敷地を擁する施設は小学校なのですが、その校庭(トラック)横には「梵梵温泉」訪問客専用の駐車場が用意されていますので(地図)、ここに車を止め、この先の渡渉に備えて水着等の濡れても良い格好に着替えておきます。私は足元を踵を固定するタイプのサンダルに履き替えたのですが、後々の渡渉ではこれが大いに役立ちました。野湯専用の駐車場があるのですから、いかにこの集落が温泉に対して熱を入れているかが伝わってきますね。尤も、車を降りてからは渡渉を含む川歩きをしなければいけないので、普通の温泉施設の駐車場にとめるのとは訳が違うのですが…。


 

駐車場からはしばらく先は、随所に立っているオレンジ色の看板が誘導してくれます。校庭を見下ろしながら川の上流に向かって堤塘の上を歩き、看板の矢印に従って河原へと降りてゆきます。


 
川際まで達すると、そこに立っていた看板の矢印は上流側を指し示していましたが、一歩引いてあたりを見回すと、やや下流側に丸太を数本束ねた橋が架けられていましたので、それで右岸へ渡ってみることにしました。見た目は不安定そうな橋ですが、ワイヤーでかなり堅く結束されており、多少の衝撃ではビクともしないような頑丈な造りでした。



広い河原を上流へ遡ってゆくと、やがて車の轍と合流します。


 
轍を辿ってゆくと「梵梵坡」という民宿の小さな看板が目に入ってくるのですが、轍(車道)はここから川と別れて左の山へそれてしまいますので、道から離れて川の方へ戻ります。でも河原が消えて崖が迫ってきますので、川に入って崖沿いの浅瀬をジャブジャブと歩いて遡ります。


 

数十メートルで川歩きは終わり、再び歩きやすい川原が現れます。ちょうどその箇所の崖下を見下ろすと、不気味に澱んだ湯溜まりを発見しました。梵梵温泉の源泉のひとつです。上の画像はそれぞれ下流側を向いて撮影したものですが、藻が大量に繁茂しており、見るからに汚く、温度も32.6℃とぬるくて、とても入浴できるようなものではありませんから、ここは見捨てて更に上流を目指します。



川はゆるやかに蛇行しており、歩きやすい川原も左岸や右岸に途切れながら分布しています。このため所々で歩きやすい川原が広がっている方へ渡渉しなければなりません。上述の汚い湯溜まりを過ぎたあたり(上画像の地点)のそのひとつでして、ここで私は川を横断して歩きやすい左岸へと渡りました。なお川は一番深いところでは膝下まで潜るほどあり、しかも勢いもかなり強いので、滑らないよう一歩一歩川底を踏みしめながら慎重に足を運びました。


 
左岸の崖下でも温泉が湧いていました。梵梵温泉って川沿いにいくつも源泉が点在しているんですね。でも浅く小さいので足湯するのが精一杯ですし、お湯もぬるくて汚らしい藻類だらけですから、肌を触れさせたくもありません。残念ながらここもパスします。


 
駐車場から20分ほど歩き続けたところで、右岸(対岸)の崖下に、明らかに川水とは色の異なるプールが出現しました。これは明らかに温泉の湯溜まりであり、しかも今までのものと違って大きく、お湯もクリアです。ネット上で紹介されている「梵梵温泉」はこれのことを指しているのでしょう。期待に胸を膨らませながら、本日3回目の渡渉をして対岸へ。ここも流れが早いので、足元を掬われないようゆっくりと進みました。


 
川原の石を積んで人工的に造られたその温泉プールは、とても広くて深さも充分にあり、湯加減も41.3℃と、入浴には最適のコンディションとなっていました。


 
湯溜まりの底部のあちこちからブクブクと温泉が湧出しており、湧出ポイントの多さと湧出量の勢いによって湯面がさざなみ立っているほどです。湯溜まりの中を裸足で歩くと、湧出点からは熱いお湯が出ているので、足の裏には熱い針で突かれたような刺激が感じられました。お湯は無色透明ですが金気の味と匂いが明瞭に感じられ、その金気の影響によってお湯が触れる石や岩は赤く染まっています。


 
湯溜まり内部のみならず、川原の随所でも湧出しており、そうしたお湯も湯溜まりへと流れ込んでいます。そのうちの一つに温度計を突っ込んでみたら、湧出口では60.2℃、他の湯溜まりでも50~60℃の温泉が湧いていました。お湯のままですと本来は入浴に適さない熱さになってしまうのですが、湯溜まりには川の水がうまい具合に導かれており、これによって適度に加水されているため、ちょうど良い湯加減が維持されているのでした。この温泉プールを作ってくれた先人に感謝。



河原の石が赤くなっているところはすべて温泉の泉源か、そのお湯が流れている流路です。あちこちで湧出しているんですね。



湧出量が多くて常にお湯が入れ替わっているためにお湯の鮮度感は抜群であり、また野湯にありがちな濁りや不快な沈殿などもありません。底からブクブク湧いているので、足元湧出の勢いを体感しながら新鮮なお湯に浸ることができます。寝そべることなく自然な姿勢で入っても無理なく全身浴できるのも嬉しいところです。その上、目の前に清らかな川が流れる開放的でワイルドなロケーションなんですから、まさに極楽ですね。あまりに爽快だったので自己撮りしてしまいました。

この訪問時は私一人だけでしたが、休日には多くの人で賑わうそうでして、特にオフロード車は私が渡渉してきた川を走行できてしまうので、湯溜まりの目の前まで車で乗り付けてくる方もいらっしゃるようです。人気を博して当然の素晴らしい野湯でした。
なお、今回の記事で紹介しました湯溜まりや渡渉箇所に関しては、川の状況によって大きく変化する可能性があります。また増水時には渡渉が困難となるので、天候や川の水位には要注意です。




宜蘭県大同郷英士村  地図
(リンク先のグーグルマップには現地まで道路があるように描写されていますが、実際には道路は存在しません)

野湯につきいつでも入浴可能
無料

私の好み:★★★
コメント (2)
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