温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

梅ヶ島温泉 湯元屋

2013年05月27日 | 静岡県
 

梅ヶ島温泉では十数軒の旅館が営業しており、その多くで日帰り入浴を受け入れていますが、日帰り入浴を専業とする施設は温泉街の最上流部に位置する「湯元屋」の一軒だけです。こちらでは入浴のほか、食堂営業や土産物販売も行なっていますが、他に食堂営業している施設は存在しませんので、当地で外食や買い物をしたければ、必然的にこの「湯元屋」でお世話になるわけです。


 
明るく応対してくれるご主人に料金を支払い、土産物売り場の一角にある扉から奥へ進んで、階段を上がって浴室へ向かいます。浴室は「虹乃湯」と名付けられているんですね。


 
お風呂へ向かう途中には、いかにも古そうな振り子時計や背負子が飾られていました。



「湯元屋」さんは崖と川に挟まれた狭隘な土地に建てられているため、全体的にコンパクトな造りです。湯屋部分は比較的新しいのか、温かみのある内装が施されており、綺麗でよく手入れされていました。また限られたスペースを工夫して各設備がレイアウトされており、ちょうど下足場の裏側に当たるわずかな空間に洗面台が配置されていました。


 
浴室には浴槽がひとつ、そしてシャワー付き混合水栓が3基設置されており、奇を衒わない至ってシンプルで実用本位な構造です。室内は天井を除いてタイル貼りで、川や露天風呂に面している方向はガラス窓です。窓からは春の陽光がふりそそいでいました。なおシャワーから出てくるお湯は真湯(ボイラーの沸かし湯)です。
浴槽は4人サイズで正方形に近い形状をしており、縁には黒っぽい御影石が用いられ、槽内は水色のタイルが、そして女湯側の側面には天然石の板が貼られています。


 
湯口からは加温されたやや熱めの源泉が注がれており、露天風呂側のガラス窓直下に開けられた穴より排湯されています(人が入って急に嵩が増えた時には切り欠けよりオーバーフロー)。つまり湯使いは加温した上での放流式です。お湯は無色澄明で綺麗に澄み切っており、前回取り上げた「梅薫楼」よりタマゴ感(味や匂い)はやや弱いのですが、湯船に肩まで浸かると「梅薫楼」では感じられなかった燻されたようなタマゴの香りが湯面からふんわりと漂っていることに気づかされます。またタマゴ味と同時にアルカリ性単純泉によくある収斂がはっきりと感じられました。梅ヶ島らしいヌルスベ感もしっかり有しており、このお湯に入れば誰しも美人になること間違いなし。お湯から伝わってくる鮮度感も、屋号に冠されている「湯元」の名に恥じることのない良好なものでした。梅ヶ島温泉は混合源泉を各施設で分配して利用しているそうですが、同じお湯でも分配する経路や湯使いによって、末端(つまり客が利用できるお風呂)におけるフィーリングはかなり違ってくるんですね。


 
一方、露天風呂は猫に額ほどの空間を竹垣のようなエクステリアで囲んだ、申し訳程度につくった岩風呂でして、囲いが高いために景色はあまり眺められません。見上げれば山の緑がちょこっと目に入ってくる程度です。館内表示によれば露天風呂のお湯は加温循環濾過されているとのことで、ご主人は受付で「内湯のお湯は最高ですけど、露天は・・・」と自ら弁明していましたが、私が訪問した日は露天にほとんどお湯が張られておらず、循環云々という問題以前の状態でした。この日はシーズンオフでしたので、客が少ないのにわざわざ循環装置を運転させるのはもったいなかったんでしょうね。ま、私としてはクオリティの高い内湯のお風呂に入れただけで十分満足です。


 
入浴中にお話したお客さんが「ここの蕎麦とおでんは美味いよ」とすすめてくださったので、湯上りに食堂で猪そばと静岡おでんをいただくことに。このそばが本当に美味い! 特に出汁がよく効いたおつゆは絶品でして、最後の一滴まで残すことなく飲み干してしまいました。そしてドス黒い色をしたご当地ならではのおでんも一度食べたら病み付きになってしまい、上の画像では大根とガツ(胃)の2本を写しておりますが、これを食い終わった後も味の虜になってしまって、コンニャクなど次々に追加でいただいてしまいました。どのネタも1本100円です。特にコンニャクはイワシの粉との相性が最高でした。

お風呂に関してはご主人曰く、一度料金を支払えば当日なら何度入浴してもOKとのこと。ですから、まずここへ来たらひとっ風呂浴び、湯上りに辺りを散策し、汗をかいたらここへ戻って再度入浴して汗を流す、そしてお腹も満たす・・・という利用方法もできるわけですね。


 
「湯元屋」の目の前には朱塗りの橋がかかっており、川の対岸には「おゆのふるさと」と名付けられた回遊式の公園が整備されています。敷地の一角には各旅館へお湯を分配するための貯湯槽が設置されていました。



公園の階段を上ってゆくと細い湯滝の沢に沿って梅ヶ島温泉の源泉があり、いくつもの配管が傾斜に這わされていました。


 
「ゆ」と掘られた石の下にはガラスの戸で閉ざされている穴があるのですが、ここは以前「岩風呂」として入浴利用されていたんだそうです。今では梅ヶ島温泉の源泉として引き続き使われていますが、入浴はできません。


単純硫黄温泉 38.2℃ pH9.4 成分総計0.243g/kg
Na+:61.5mg,
HCO3-:48.4mg, CO3-:51.9mg, HS-:12.1mg, S2O3--:3.0mg, SO4--:3.0mg,
H2SiO3:51.1mg,
(昭和63年1月12日)
内湯:加温あり、加水循環なし
露天:加温・循環濾過あり

静岡駅北口あるいは静鉄新静岡駅よりしずてつジャストラインの安倍線(梅ヶ島温泉行)に乗車して終点下車、徒歩1~2分。
静岡県静岡市葵区梅ヶ島5258-13
054-269-2318
ホームページ

10:00~17:00(受付16:00まで) 不定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする