温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

清水地熱の野湯

2013年05月01日 | 台湾
 
宜蘭県大同郷は温泉資源の宝庫。その中でも地熱エネルギーが地表に目に見える形で表れているという「清水地熱」を訪れてまいりました。実にストレートなネーミングであるその地熱エリアは、清水渓という川に沿って広がっており、その一部が観光地として一般に公開されています。
幹線道路台7丙線の清水橋そばから標識に従って川沿いの一本道に入って道なりにしばらく南下すると、右手の川岸に広い駐車場が見えてきます。その駐車場から川原を望むと、中洲の奥の方で白い湯気が濛々と上がっていました。あそこが地熱の出現ポイントの一つなんでしょうね。



駐車場の先にはちょっとした公園のような空間があって、トイレや休憩用の東屋の他、温泉玉子をつくるための温泉槽や足湯など、湧出している温泉を活かした設備類を無料で利用することができます。この場所は「旧中油工作站地熱広場」と名づけられているのですが、その名前からわかるように、ここではもともと台湾の国営石油企業である中国石油が地熱発電プラントを試験運用していました。しかし、その当時の技術では費用対効果が悪くて期待していた結果が得られなかったことから運用は中止されてしまい、宜蘭県がその跡地をこのように公園として整備したんだそうです。


 
こちらは温泉玉子をつくるための温泉槽です。真ん中の塔からは湯気が立ち上り、その周りを取り囲む槽にはふつふつと煮えたぎる熱湯が注がれています。



私が訪れた時には、おばちゃんがたも網に卵を入れて温泉玉子を作っていました。


 
ご丁寧に冷却用の冷水槽まで用意されています。茹で上がったタマゴをここに浸せば、すぐに食べられるわけですね。


 
お湯で温めるのはタマゴだけではありません。人間様が寛げるよう、屋根つきの足湯も設けられていました。



公園の裏手には地熱の生産井や配管など各種設備が設置されていました。これらは工業技術研究院(国の研究機関)の地熱開発施設(「工研院鑽探井区」)でして、いずれも中油時代のものを改修して使用しているそうです。コスト面を理由に一旦は試験運用が中止されたものの、その後効率の良い地熱活用方法が開発されるようになり、世界的にクリーンエネルギーが注目されるようになったため、再びこの清水地熱が注目されはじめているのです。



地熱資源が豊富であるのならば、是非とも全身浴ができる温泉とお目にかかりたいものです。事前に調べた情報によれば、この先に入浴に適した湯溜まりがあるらしいのですが、残念ながらバリケードのために車両通行止となっていました。どのくらい先にあるのかわからないので歩いていくのは躊躇われます。



とりあえずさっき見つけた中洲の噴気孔だけでも見学しておくか…。そう思って、石の上をジャンプしながら川を渡って中洲へと向かいました。


 

広い中洲を歩いて噴出孔の目の前までやってきました。ボコボコと音を立てながら真っ白い湯気とともに熱湯が勢いよく湧出しているのですが、試しに温度計を突っ込んでいたら94.5℃! 直に触れたら大やけど必至ですね。



噴出孔の下流側には白濁した温泉の湯溜まりが形成されていました。誰かさんが人工的につくったのでしょう、適度に川の水がブレンドされています。良い予感がしますね。


 
ちょうど人が入れそうなサイズの湯溜まりを見つけたので、「もしや…」と期待を抱きながら温度を計測したら、入浴に最適な42.2℃という数字が表示されたではありませんか! これをただ見て帰るなんてもったいない。入らないでどうするの!


 
というわけで、巨大な流木の陰に隠れて水着に着替え、欣喜雀躍で入浴してしまいました。広い中洲ですから開放感は文句なし、周囲の山の緑がとても美しく、清流のせせらぎを耳にしながら浸かる野湯は格別です。あまりに気持ちが良いため、調子に乗って自己撮りしてしまいました。ロケーションの素晴らしさが伝わるでしょうか。
最高なのはロケーションのみならず、お湯のクオリティも素晴らしい。噴出したばかりのお湯は美しいミルキーホワイトであり、湯溜まりの底には同色の沈殿も大量に溜まっているため、私が湯溜まりへ足を突っ込むとお湯は益々白さを増して本当に牛乳の中に浸かっているような気分になりました。お湯からは硫化水素臭がふんわりと漂い、タマゴのような味も少々感じられました。特筆すべきはその浴感でして、まるでローションを全身に塗りたくっているかのようなツルツルスベスベ感がはっきりと肌に伝わり、その気持ち良さのため何度も湯中の肌をさすってしまったほどです。硫黄を含む白濁した温泉とはいえ、酸性的な知覚はほとんどなく、重曹を主成分とした多少なりともアルカリ性に傾いているお湯なんだろうと思われます。メタケイ酸も多く含んでいそうですね。開放感抜群の野湯で美肌効果のあるツルスベの白濁湯に入れるんですから、極楽としか言いようがありません。


宜蘭県大同郷清水村  地図

温泉玉子槽や足湯がある「旧中油工作站地熱広場」の開園時間は9:00~17:00ですが、駐車場はその時間外でも利用できるようです(実際に私は朝8:00頃に駐車しました)。
野湯につき無料ですが、中洲という場所柄、川の増水などによって流れが変化し、今回紹介した湯溜まりが消えてしまう可能性も大ですのであしからず。

私の好み:★★★





コメント (4)
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