はらはらと舞い散る桜を眺めていたら清涼感のあるツルスベな温泉に入りたくなり、4月上旬、中央線に乗って山梨県へと向かいました。今回降り立ったのは小林一三の故郷であり中田英寿の出身高校も存在する韮崎です。
韮崎駅前のロータリーから韮崎市民バスの上円井行に乗車し、10分弱で通過する「韮崎大村美術館前」にて下車します。なお桜が咲く季節に限定して運行される「清流と甲斐駒ヶ岳周遊バス」の韮崎駅~フレンドパークむかわを結ぶ「桜ルート」も利用可能。バス停は見晴らしの良い場所に位置しており、釜無川が流れる韮崎の市街や昇仙峡方向を眺めることができました。
バス停のすぐ前にある「韮崎大村美術館」では、化学者の大村智博士がご自身で蒐集した女流作家の作品(絵画や彫刻)が展示されているんだそうです。
今回の訪問先は大村美術館と同じ敷地内に建てられている「武田乃郷白山温泉」です。いかにも現代建築らしい美術館とは異なり、温泉はモダン和風のテイストですね。私は2005年秋の開業直後にこちらへ一度訪問したことがあるのですが、それ以来約7年ぶりの再訪となります。韮崎の温泉といえば「韮崎旭温泉」が非常に有名であり、その近所に位置しているためかこちらは知名度や人気が今一つの感が拭えませんけれども、いかにも甲州の温泉らしい良いお湯なんですよね。
外観からは立派な施設を想像しますが、玄関を入ると意外とこぢんまりしており、民家にお邪魔したかのような雰囲気です。フローリングのロビー左手に置かれている券売機で料金を支払い、窓口に券を差し出して奥へと進みます。ロビーの右手には民家のリビングのような無料休憩室が用意されています。なおその奥のお座敷は予約制なんだそうです。
浴室は眺望の良い2方向がガラス張りになっており、明るくて開放感があり、清潔感も漲っています。後述する露天風呂より庭木から離れている内湯の方が視界が広く確保されるため、八ヶ岳をはじめとする山々の姿がはっきりと眺められました。
室内には10~12人は余裕で同時に入れそうな大きさの浴槽が一つ据えられており、槽内はタイル貼りで縁は木材使用、隅っこに取り付けられた木組みの湯口からお湯が注がれ、縁からしっかりオーバーフローしていました。湯船の温度は40~41℃でして、少々ぬるめの長湯向きのお風呂が多い山梨県らしい湯加減です。
浴室の窓がない残り2方向には洗い場がL字型に設けられ、シャワー付き混合水栓が計8基取り付けられています。カランから吐出されるお湯は真湯です。開業から8年近くが経過しようとしており、そろそろ汚れや経年劣化が現れ始めてもおかしくない時期ですが、メンテナンスが行き届いているためか、少なくとも客が目にする範囲内ではそのような劣化などは見受けられず、とても気持ちよく利用することができました。
浴室入口すぐ左には掛け湯用の小さな枡が設置されており、100%の源泉が蛇口より落とされていました。その蛇口は温泉成分により変色しています。枡に溜められているお湯はやや緑色を帯びた黄色の透明で、重曹感や金気がはっきりと感じられました。結論から申し上げちゃいますと、内湯や露天を含めた全浴槽の中ではこの掛け湯枡のお湯が最もコンディションが良くて知覚面が際立っており、枡の内側には金気による赤い着色が見られました。
露天風呂は軒先の日本庭園に造られているような趣きで、釜無川の氾濫原を見下ろす気持ちの良いロケーションです。浴槽は7~8人サイズの岩風呂で、底は石板敷きです。内湯同様に40~41℃という湯加減ですから、景色を眺めながらいつまでものんびりと長湯できちゃいます。また長湯して体が多少火照っても、高台を吹く風でクールダウンさせれば実に爽快です。
垣根の向こうにはまだ頂に雪が残る八ヶ岳が聳えていました。露天の庭園はこうした山々を借景にしているのでしょうね。
岩組みの湯口をよく見ると茶漉しのような網が被せられていました。湯の花キャッチャーなんでしょうけれども、網目が粗いためかお湯の中では茶色っぽい細かな湯の花が浮遊していました。私個人としては湯の花がたくさんあった方が嬉しいのですが、湯の花を嫌うお客さんって地域を問わず結構多いようですから、クレームを避けるためにある程度濾し取らなきゃいけないんでしょうね。湯口はまずまずの量のお湯が投入されており、縁から絶え間なくオーバーフローしていました。
内湯・露天ともにお湯は若干緑色を帯びた薄い黄色の透明で、味覚面では重曹味や薄塩味のほかに新鮮な金気味、臭覚面ではモール泉っぽい匂いや金気臭とともに砂消しゴムに似て非なる不思議な匂いが感じられました。なお塩素臭と思しき臭いも内湯・露天の双方から感じ取れたので、湯使いとしては塩素消毒を実施した上での放流式ではないかと思われます(掛け湯枡からはその臭いが感じられませんでした)。重曹と食塩がミックスされたお風呂ゆえにその両方の特徴がよく現れており、入浴中は重曹泉的なツルスベ浴感が楽しめ、湯上りも爽快なのですが、同時にいつまでも持続する温まりも得られ、一粒で二度美味しいような入浴効果が実感できました。比較的ぬるいお湯なので、高台の景色を眺めながらゆっくり長湯できるのも嬉しいところです。
湯上りは温泉の建物に併設されている蕎麦処「上小路」の暖簾をくぐり…
鳥もつのもりそばを注文しました。お蕎麦は少々太めの田舎風で歯ごたえと風味が活きており、ツルツル感も良好。おつゆはちょっとしょっぱいかも。ネギ・ショウガ・大根おろしなどいろんな種類の薬味をおつゆに入れていただきました。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 45.5℃ pH7.8 216.8L/min(動力揚湯) 溶存物質1.313g/kg 成分総計1.339g/kg
Na+:366.3mg(87.19mval%), Mg++:12.8mg(5.75mval%),
Cl-:434.3mg(64.47mval%), HCO3-:409.1mg(35.26mval%),
H2SiO3:44.3mg, CO2:26.0mg,
韮崎駅から韮崎市民バスの上円井行に乗って「韮崎大村美術館前」で下車、徒歩1~2分
山梨県韮崎市神山町鍋山1809-1
0551-22-5050
ホームページ
10:00~21:00 木曜定休
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★