温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

リニューアルされた社寮社区公共浴室

2013年05月07日 | 台湾
新北市の金山温泉郷に点在するジモ専の共同浴場のうち、わかいにくいロケーションと鄙びた建物、そして棺のような形状の浴槽が非常に印象的な「社寮社区公共浴室」に関して、本年1月に拙ブログの記事に対して匿名の方から「残念」というタイトルで以下のような書き込みをいただきました。

雨の中今月の三連休に行きましたが、このお写真とは別ものになってました。近所の人に聞いてみたところ改装したようです。写真はないのですが、男女別のドアがあって真ん中に大きく 【湯】とかいてあるのでわかりやすいかもです。
但し 他の共同浴場と同じで確か午前は10時まで午後は4時からになってたように思います。とても楽しみにしてたのですが 昼に行ったので入れませんでした。今後の方のためにコメントしておきます。


情報をお寄せくださった方には改めて感謝申し上げます。それにしても、あの浴場が改装されて別ものになってしまった!? あの棺のような浴槽はどうなってしまったのか? 数ある台湾の温泉の中でも私の心にその光景が強く焼き付いたあのお風呂が変貌してしまったと聞いては、居ても立ってもいられなくなり、先日の台湾旅行の際に金山へ立ち寄って現状を確認してまいりました。



まずは上画像をご覧ください。赤枠で囲ったこの画像は2010年時点の「社寮社区公共浴室」です。浴場というより倉庫か機械室かはたまた公衆便所か、そんな感じの極めて無機的な外観であり、白い壁に書かれた男女の文字が辛うじて浴場であることを表していました。


 
一方でこちらが先月(2013年3月)の同浴場です。
うわわっ! いただいた情報の通り、見違えるように別ものに変わっちゃったよ!
場所は従前と同じですが、以前のような無味で質素な造りではなく、屋根は瓦葺きで茶色いタイルで囲まれた、風情のある湯屋らしい姿に全面改築されていました。中央には大きく「湯」と記されたプレートが掲げられています。その横には開設時間も案内されており、午前中は5:00~9:00、午後は16:00~20:00となっていました。以前は昼間でも制限なく入浴できましたが、界隈の他の共同浴場と同じく昼間は入浴できなくなってしまい、実際に私が訪れた15:00には入口の扉が施錠されていました。


 
1時間ほど別の場所で時間を潰してから16時過ぎに再訪してみると、湯屋の前にはバイクが止められており、入口の鍵も解かれていました。浴室は以前と同じく男女別に分かれており、男湯は正面向かって右側です。しかしいざ扉を開けようとすると押しても引いてもちっとも開かない。どうしたものかと思案に暮れながら扉をガタガタ揺り動かしているうちに左方向へスルスルっとスライドくれたので、無事に中へと入ることができました。単なる引き戸だったことに気付かなかった愚蒙な私は相変わらず大マヌケです。

浴室もすっかり様変わりしてしまいました。側壁には青と白タイルがモザイク状に貼られ、また海側は大きなガラス窓が設けられたために、室内のイメージや明るさが段違いに改善されました。また浴槽も以前のような棺桶スタイルではなく、台湾式個室風呂から仕切りを取り払ったような一人サイズの浴槽が左右に分かれて計4つ設置されていました。改築されてまだ間もないため、室内が温泉成分の付着によって汚れるような事態にも至っていません。
なおガラス窓の外側は小さなテラスのようになっていて、そこへ出られるようになっているのですが、高い塀に囲まれているため景色は何も見えず、露天風呂があるわけでもなく、ただ外気に触れるためだけのスペースのようでした。



ご参考までに2010年の浴室の様子も載せておきます。この当時は室内に温泉が飛び散って薄汚い赤茶色に濃く染まっており、棺のような浴槽が並んでいました。


 
浴室は全面リニューアルされたものの、入浴方法に関しては以前と同じスタイルが受け継がれています。長方形に掘られた一人用の浴槽は、使用の都度、コックを開いてお湯を溜めたり捨てたりするもので、室内に洗い場は無いため、体や髪を洗う際には、お湯を溜める前にまず浴槽内に入り、コックから吐出されるお湯を桶で受けながらシャンプーしたり体を泡だらけにしたりするわけです。つまり浴槽が洗い場を兼ねているのですね。
コックを開いて吐き出されるお湯の量はかなり多く、全開にしておけばドバドバ出てきて数分で入浴に適した嵩まで溜まるのですが、お湯自体は建物裏の貯湯槽から流れてくるものであり、そこから4つの浴槽へ分配されているため、他の浴槽でもお湯が使われると、吐出量が一気に減ってしまいます。なおお湯だけですとやや熱いので、多少加水した方が全身浴しやすいかと思います。

お湯は少々赤みを帯びた黄色に笹濁り、重炭酸土類泉的な金気と土気の味や匂い、弱い塩味、そして炭酸のような味が感じられました。湯船の湯を掻き回すとトロミがあり、肌をさすると重曹泉のサラスベ感と土類泉のキシキシ感が拮抗するもののキシキシ感の方がかなり優勢であるように感じられました。こうした知覚的特徴は以前と同様ですから、源泉は同じものを継続して使っているようです。



浴場にある備品は桶だけです。リニューアルに際して新品が用意されたのかもしれませんが、毎日お湯と接するこの桶には既に温泉成分がコテコテに付着しており、以前の浴場が醸し出していた渋い貫禄を今に伝えているようでした。



以前の浴場の裏側にあった源泉井や貯湯槽も印象的でした。前回訪問時(上の赤枠画像)には貯湯槽から漏れたお湯によって、土台部分やそのまわりがコンモリとした石灰質の析出に覆われており、その石灰華のボリュームに思わず歓喜してしまったのですが…


 
現在ではその貯湯槽も改修されており、石灰華が形成されているようなことはなく、排水溝に落とされるお湯も貯湯槽からオーバーフローした余り湯がチョロチョロと落とされているにすぎませんでした。もっとも、現状のちゃんと整備されている姿こそ浴場の設備としては好ましい状態なんですけどね。

全面改修によってかつてのようなマニア好みの渋い佇まいは失われてしまいましたが、室内は以前と比べてはるかに明るく衛生的になりましたし、温泉のクオリティは以前のまま、しかも入浴スタイルも継承されていますから、こちらを初めて利用されるのでしたら寧ろ現状の方が良いかもしれません。かつての浴場はいつ閉鎖されてもおかしくないほど老朽化していましたが、このように生まれ変わったのですから当分の間は安泰でしょう。
※地域住民のための共同浴場です。外来者も無料で利用できますが、現地の流儀に従い謙虚な姿勢で訪問しましょう。


新北市金山区磺港村 地図

5:00~9:00, 16:00~20:00
無料
脱衣の棚と桶以外、備品は一切なし

私の好み:★★★ 
コメント (4)
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