温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

名取温泉

2013年05月19日 | 山梨県
※残念ながら閉館しました。

 
甲府の隣駅である竜王駅で中央線の普通列車を降り、国道52号線「美術館通り」を東に向かって歩いてゆくと、やがてカラシ色の外壁と大きな看板が目立つ「名取温泉」にたどり着きます。この界隈には「山口温泉」という素晴らしい温泉があるため、「名取温泉」は目の前を何度も通りすぎていながら今まで訪問する機会が無かったのですが、界隈の温泉とはちょっと異なるお湯らしく、以前からちょっと興味があったため、今回は通過しないで立ち寄ってみることにしました。


 
エントランスはピロティ式の駐車場内部にあり、温泉とは程遠い雰囲気です。以前は相当キッチュな建物だったらしく、近年になっておとなしい内装へリニューアルされたそうですが、1階入口を入ったところには岩を模した造形で囲まれている扉があり、一昔前のチープなラブホみたいです。エレベーターや階段で受付や浴場のある2階へ上がります。


 
階段を上がったところに設置されているショーケースには、温泉分析表や掘削工事当時の写真などとともにボーリングコアやピットが展示されていました。近年はボーリング工事の相場もかなり下がってきたそうですが、かつてはちょっと掘るだけでも相当の費用を要したそうですから、オーナーさんにとっては人生を賭すような一大事だったことでしょうね。こちらでは地下1000mまで掘って温泉を汲み上げているそうでして、湧出温度が約35度なので入浴に適する温度にするため加温しているものの、加水循環消毒は行わずに放流式の湯使いを実践していることが表示されていました。


 
受付では料金と引き換えに番号が指定されているロッカーキーを受け取ります。脱衣室には縦長で細いロッカーが並んでおり、温泉というよりサウナ専門施設のような感じ。洗面台の前を通って浴室へ。洗面台の周辺ではテレビの音声だけ聞こえるのですが、これってなぜなのかしら…。


 
浴室に入ってすぐ左にサウナが、正面には水風呂が設けられていました。右手へ進むとお風呂でして、洗い場の手前には源泉が溜められている掛け湯枡が据えられています。位置的に考えますと、洗面台で聞こえたテレビの音声は、サウナの置かれているテレビから脱衣室(洗面台)側へ漏れているんでしょうね。


 
男湯の浴室は右手に浴槽が3つ、左手に洗い場が配置されており、室内にはテレビの音声が響いています。洗い場の上にテレビが設置されており、湯船に入りながら視聴できるんですね。洗い場にはシャワー付き混合水栓が12基並んでおり、お湯は源泉が出てきます。金気を多く含むお湯であるためシャワーのホースは赤く着色していました。


 
ガラスサッシを挟んで露天風呂も設けられているのですが、露天といっても完全に建物に覆われており、外側も高い塀が立ちはだかっているため、景色はおろか開放感も得られません。外気に触れながら入浴するスペースと捉えた方が良さそうです。石を積み上げたような湯口から塩ビのパイプが突き出ており、素手で触れるギリギリの温度まで加熱された源泉が注がれていました。その流路は温泉成分の付着により赤黒く染まっています。湯口ではかなり熱いものの、外気に熱を奪われてしまうためか、湯船では40℃以下に下がっていました。浴槽は石板貼りの長方形で、湯口側は寝湯ができるように浅くなっています。


 
3つある浴槽のうち手前側にある小さな浴槽は高温、その隣の中サイズは中温(一般的な湯加減)となっており、両者の中間に設けられている平らな丸い石を積んだ湯口よりそれぞれへお湯が供給されています。双方へ注がれるお湯の温度は同じでしたから、浴槽の大きさ(湯面の表面積の大きさ)によって湯温の高低が生まれているのでしょうね。湯船のお湯はやや赤みを帯びた山吹色に弱く濁っており、若干緑色を有しているようにも見えます。湯口の上にはコップが置かれていましたので試しに飲んでみますと強い金気が特徴的で、甲府盆地の温泉らしいモール泉っぽい匂いや味も感じられます。金気の多いお湯って引っ掛かりのある浴感である場合が多いのですが、こちらのお湯は重曹の影響なのか意外にもスベスベ感がしっかりと得られました。


 
残りの浴槽は気泡風呂でして、内湯のなかで半分の大きさを占める主浴槽でもあります。循環していないことを暗にアピールしているかのように、こちらの湯口にもコップが置かれていました。手前側2つの浴槽よりぬるめの湯加減(40℃以下)となっており、こちらへ入るお客さんはみなさん気泡に体を当てながら長湯なさっていらっしゃいました。山梨県の温泉浴場にぬるい浴槽は欠かせません。なお各浴槽のお湯は洗い場へオーバーフローせず、反対側(背面)へ溢れて排湯されていました。

気泡風呂やテレビの音など浴室内での騒々しさが気になりますが、お湯の鮮度はなかなか良好で、しかも湯上がりはいつまでもポカポカし続けましたので、お湯の持つ実力は相当なものなのでしょう。


単純温泉 35.0℃ pH7.7 溶存物質0.882g/kg 成分総計0.926g/kg
Na+:217.2mg(79.08mval%), Mg++:15.2mg(10.46mval%), Ca++:18.0ng(7.53mval%), Fe++:0.3mg(0.08val%), Fe+++:1.7mg(0.75val%),
Cl-:301.3mg(71.07mval%), HCO3-:204.2mg(28.01mval%),
H2SiO3:102.9mg, CO2:44.2mg,
加温あり

中央本線・竜王駅から徒歩10分
山梨県甲斐市名取324
055-276-4126

※残念ながら閉館しました。
10:00~24:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
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