最近私は毎月仙台へ所用で出かけているのですが、ただ単に往復するのでは芸がないので、時間を上手く遣り繰りして、なんとか界隈の温泉へ足を伸ばせるように努力しています。先月(2013年4月)は用件を済ませた翌日を上手い具合にオフにすることができたので、これ幸いと仙台市街中心部の東二番丁通・電力ビル前から高速バスに乗って鳴子へ向かうことにしました。
まず一軒目は昨年(2012年)12月に全面リニューアルオープンした「旅館岡崎荘」です。かつては「ファミリーじすい岡崎荘」という渋い佇まいのお宿でして、ネット上ではまだ前施設を紹介しているサイトやブログの方が圧倒的に多いかと思います。
予め用意していた「鳴子湯めぐりチケット(シール)」を片手にしながら訪い、玄関の前でお仕事していた女将さんにシールで入浴したい旨を申し上げると、明るく気さくな女将さんは仕事の手を休めて快く応対してくださり、お風呂へと案内してくださいました。玄関にはバリアフリー対策として車いす用のスロープが設けられていました。
館内に入るとどこもかしこもピッカピカ。新築の建物の匂いがプンプン。建物でもなんでも、新しいものって良いですね。「建もの探訪」の渡辺篤史だったら「ほっほぉ~」と感嘆しながらあたりを見回して何か特徴ある構造を見つけて褒めるのでしょうけど、愚鈍な私にそんな繊細な才能が無く、玄関左手に浴室の入口があることを確認するだけで精一杯でした。旅館と称する割には帳場周りが妙にすっきりしていますが、リニューアル後も従前のように素泊まりや自炊宿泊の客を受け入れる営業スタイルとしているため、余計なものは不要なのでしょうね。
新築だから当然かもしれませんが、浴室入口の引き戸が指先の力だけでスルッと軽快に開いてくれたので感心してしまいました。どんな部屋でも扉がスムーズに開いたり、あるいは衝撃無くしっかりと閉まったりすると、その室内にいる間はストレスが軽減されるような気分になりますよね。
脱衣室も明るくて清潔感が漲っており、材木の香りが漂っていました。籠が置かれている棚の下には貴重品を預けるロッカーがあり、棚の手前には洗面台代わりのシャンプードレッサーが2台設置されています。
浴室は窓に面して四角い浴槽がひとつ据えられ、(男湯は)手前右側にシャワー付き混合水栓が2基取り付けられています。内装としては腰壁部分がベージュのタイル貼りで、それより上は白い防水建材が貼られています。2つある水栓はシャワーヘッドが大きくて使いやすく、またそこから吐出される水流も気持ち良いものでした。なお左側の水栓の水道側には蛇口が増設されており、ホースが繋げられるようになっていました。この日はホースは未接続でしたが、必要に応じてホースを繋げて湯船へ加水したり清掃したりするのでしょうね。
正方形に近い形状の浴槽は約4人サイズ。縁には石材が、内部にはタイルがそれぞれも用いられており、湯面近くの壁面には硫化水素中毒を防止するための丸いルーバーが2つあけられています。
浴槽の角っこには小さな石板を組んでつくられた湯口があり、そこから熱いお湯がチョロチョロと注がれていました。こちらでは下地獄源泉を複数ブレンドしたお湯を引いていますが、温度が激熱のために温度調整をする目的で投入量を絞っているのかと推測されます。なお館内表示によれば加水しているとのことでしたが、訪問時のお湯には加水されているような様子が見受けられなかったので、加水を止めていたか或いは必要最低限にとどめていたのではないかと思われます。湯使いは完全掛け流し(場合によって加水あり)でして、浴槽を満たしたお湯は浴槽縁の切り欠けから洗い場へ溢れ出ていました。
こちらのお宿には小さいながらもれっきとした露天風呂があるんですから驚きです。といっても直ぐ目の前は駐車場であり、また周囲には他の宿や民家が建ち並んでいるため、さすがにあけっぴろげな状態にすることはできず、三方が大和塀によって囲まれています。大和塀は板を交互に張っているもので、目隠しと通気性を兼ね備えた目隠し塀として旅館などでは多用されますね。塀からは木材の匂いがプンプン香っていました。
浴槽はコンクリ造の2人サイズでこぢんまりしており、若干の圧迫感は否めませんが、外気に触れてクールダウンをする空間としては貴重だろうと思います。もちろん内湯同様にこちらも放流式の湯使いでして、塩ビ管から源泉がチョロチョロと落とされており、そのお湯の流路は黄色く染まっていました。なお12月から3月まで(つまり冬季)は露天風呂の使用が中止されるそうです。
さて肝心のお湯についてですが、下地獄源泉など計11の源泉をブレンドしたものが引かれており、内湯・露天ともほぼ無色透明ながら僅かに黄色を帯びているようにも見えました。湯中には薄い黄色の溶き卵のような湯の花がちらほら舞っています。浴室にはいわゆる硫黄の匂い(具体的にはタマゴ臭・砂消しゴム臭・噴気孔的刺激臭をミックスさせたような匂い)が漂い、お湯を口に含んでみるといかにも硫黄らしい味とともにホップのような清涼感を伴う苦味が感じられました。硫黄のお湯ですが酸性に傾いておらず中性ど真ん中ですので、入浴しても酸性泉のような体への負担を感じること無く入れるのがいいところ。掛け湯をするだけでもローションを浴びているかのような潤い感・しっとり感が肌を覆い、入浴すると全身でツルスベ感が楽しめました。
源泉温度の関係で投入量を絞らざるを得ないようですが、それゆえに混雑時にはお湯が鈍ったりしないかちょっと心配でもあります(そんな時には源泉投入量を増やすと同時に加水もするのかな?)。ま、そんなことはともかく、鳴子温泉では今のところ最も新しい施設であるかと思われますので、新しいもの好きの皆さんは是非足を運ばれてはいかがでしょうか。
下地獄1・2・5・6・9・12・13・14号泉、東北大学鳴子分院1・2・4号泉
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 85.6℃ pH7.6 溶存物質1169.7mg/kg 蒸発残留物1096mg/kg
Na+:301.mg(91.88mval%), Ca++:15.3mg(5.32mval%),
Cl-:160.7mg(31.86mval%), HS-:4.0mg(0.84mval%), S2O3--:2.7mg(0.35mval%), SO4--:393.6mg(57.67mval%), HCO3-:76.4mg(8.79mval%),
H2SiO3:163.7mg, HBO2:37.7mg, CO2:70.3mg, H2S:1.4mg,
JR陸羽東線・鳴子温泉駅より徒歩4~5分(350m)
宮城県大崎市鳴子温泉字新屋敷51 地図
0229-83-4050
ホームページ
日帰り入浴時間:18時まで(開始時間不明)
400円(湯めぐりチケット2枚)
ロッカー・シャンプー類あり、ドライヤー見当たらず
私の好み:★★★