猛暑が続いていた盛夏の某日、ふと房総のツルツルな鉱泉に浸かりたくなり、アクアラインをかっ飛ばして房総半島で鉱泉をめぐってきました。まず一軒目は「勝浦つるんつるん温泉」です。場所としては勝浦の市街から大多喜街道を北上し、松野交差点を右折してから更に田んぼの中の路地をちょっと入った先にありまして、温泉のみならずキャンプ場も併設されていて、道中の随所に看板や幟が立っているので、それに従って進めば迷うこと無く到着できるでしょう。
やや古い建物にキッチュなオレンジ色の塗装が施された外観、そしてあちこちに立っている手書きの看板など、かなりB級感が漂う施設なのですが、季節柄、海水浴帰りの兄ちゃん姉ちゃんで賑わっており、食堂兼休憩室のお座敷から若い歓声が駐車場へ響いていました。
受付で直接料金を支払って奥へと進みます。浴室へと続く廊下には飾り物のへっついが置かれているのですが、こちらで食事をするとこの竈炊きのごはんがいただけるんだとか。
廊下の浴室手前にはロッカーやお水のサービスが用意されていました。お水はてっきり鉱泉水かと勝手に想像していたのですが、実際に飲んでみたら単なる普通の水でした。
壁にはたくさんのサイン色紙が貼り出されているのですが、その多くは失礼ながら私の存じ上げない演歌歌手の方々でして、これが却って施設のB級感を強めているようでした。
脱衣室はけっこう狭く、3人で同時に利用したらば窮屈感は否めないでしょう。また造りとしても質素であり、ただ棚に籠が並べられているだけなのですが、しかしながらエアコンが設置されているため、暑い日でも湯上がりは涼しく快適であり、汗を気にせず着替えることができて助かりました。
お風呂は内湯と半露天の2つが合体しております。まずは内湯から。ヨットの帆のような形状をした浴槽は、縁が石材で槽内がタイル貼りの4~5人サイズ、隅っこには溶岩のような岩の湯口があるのですが、訪問時には止まっており、かといって槽内で循環しているような形跡もありませんので、お湯は適宜供給される溜め湯式なのかと思われます。湯船に貼られているお湯は濃い琥珀色で、その色つきの濃さゆえに底はほとんど見えません。湯中では茶色・黒色・灰色の湯華が浮遊しています。なお、内湯の向こうに見える小さな槽は半露天です。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設置されており、水栓から出てくるお湯や水は、ともに源泉です。桶にカランのお湯を落としてみたら、紅茶のような色のお湯が溜まりました。
一方、ガーデンルームに覆われている半露天の湯船は、内湯よりも小さな3人サイズ。浴槽の縁には飾りの石が並べられ、槽内はタイル貼りです。こちらにも加温された源泉が溜め湯式で張られているのですが、内湯と違って外光がダイレクトに降り注いでいるために、濃い琥珀色の湯船の底もこちらではちゃんと目視できました。
半露天にも洗い場があり、4つ設けられているうちシャワー付きは2つでして、いずれからも源泉が出てきます(お湯と水両方)。備え付けられているボディーソープは「勝浦つるんつるん温泉」オリジナルのものなんですね。
半露天には布袋様が佇んでいる湯口があり、その傍らには4つのバルブがあって、客が各自で開閉して湯加減を調整できるようになっていました。4つのバルブの内訳は、お湯の元栓・露天のお湯・内湯のお湯・水、となっており、お湯を出したい場合は、まず元栓を開けてから、出したい方の湯船のバルブを開けます。かなり熱めに加温されているので、バルブ開閉時は火傷に注意。一方、水のバルブはひとつしかなく、試しにこれを開けてみますと、半露天側では何らの反応が無い一方、壁の裏手でジャージャーと音が聞こえてきました。あれれ、どういうこと?
不思議に思って音が聞こえる内湯側を確認してみますと、さっきは何も流れていなかった溶岩の湯口から、非加温の源泉が勢い良く吐水されているではありませんか。そこで、何も手が加えられていない源泉を大量に内湯に注ぎ、非加温源泉比率を高めた内湯に入って、その嬉しゆえにひたすらニヤニヤしながら湯浴みしてしまいました。琥珀色のお湯は、アルカリ性に傾いていること、重曹が多いこと、そして炭酸イオンもかなり含まれているなど、ツルスベ浴感をもたらす要素がしっかり揃っており、施設名の通り本当にツルスベ感が強く、湯上り後も長い時間に亘って肌のスベスベ感が持続します。しかもサッパリとした爽快感もあり、実に夏向きの鉱泉であると言えそうです。
鉱泉を口にすると、マイルドな塩味の他、ヨードや臭素のような匂いがはっきり嗅ぎ取れ、重曹のほろ苦みも有しています。館内表示によれば加温は行われているものの、加水・循環・消毒は無いとのこと。湧出量が毎分2.5Lなので、さすがに常時掛け流しとするわけにはいかないのでしょうけど、溜め湯式とはいえ、循環させないで放流式にしている点は立派だと思います。実際にバルブを開けながら入浴したら、浴槽縁からしっかりとオーバーフローしていました。
客が各自でバルブを開閉できるため、先客の匙加減によって湯加減が変わるのでしょうけど、でも自分流にお湯をアレンジできますし、やり方によっては私のように源泉をたっぷり楽しむこともできます(使用後、バルブはちゃんと締めましょう)。房総らしい黒湯を楽しめる、なかなかおもしろい鉱泉でした。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 18.2℃ pH8.33 2.5L/min(動力揚水) 溶存物質3.520g/kg 成分総計3.527g/kg
Na+:1154mg(95.13mval%), NH4+:14.9mg,
Cl-:1198mg(64.69mval%), Br-:5.8mg, I-:2.5mg, HS-:<0.1mg, S2O3--:<0.1mg, HCO3-:906.9mg(28.45mval%), CO3--:101.3mg(6.47mval%),
H2SiO3:74.1mg, HBO2:11.5mg, CO2:7.1mg, H2S:<0.1mg,
入浴に適した温度に保つため加温
外房線・勝浦駅より小湊鉄道バスの大多喜車庫行(宿戸経由)などで勝浦温泉入口バス停下車、徒歩10分(800m)
千葉県勝浦市松野1143
0470-77-0311
8:30~20:00 無休(臨時休業あり)
800円(毎月10日・20日は500円)
ロッカー(無料)・シャンプー類あり、ドライヤーは帳場貸出
私の好み:★★