温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

塩原・古町温泉 もみじの湯

2009年04月13日 | 栃木県


塩原温泉で公共に開かれた露天風呂といえば福渡温泉の「岩の湯」やその奥の「不動の湯」が有名ですが、JRバスのターミナルがある古町温泉にもこじんまりとした露天風呂「もみじの湯」があります。
バスターミナル斜前には、文芸的な視点で塩原を捉えた観光施設「塩原もの語り館」が建てられていますが、この建物の裏手を流れる箒川に架かる「紅の吊橋」で川の対岸に渡ると、お目当ての露天風呂がすぐ目の前に現れます。小判形の浴槽ひとつに棚があるだけで、一応簾が掛かっているものの対岸の「もの語り館」からはほぼ丸見えで、露天風呂の裏を通る遊歩道に至っては遮る物すらなく、こうした外部からの視線の問題や混浴という点で、女性にとっては入りにくいかもしれません。

浴槽は真ん中でふたつに区切られ、一方は源泉が直接注がれて熱め、もう一方は幾分冷めたお湯が流れてくるので適温となっていました。落ち葉などが入ってくるのは仕方ないとしても、湯船の底のヌルヌルはあまりお手入れされていないことを示しているのでしょうか。無色透明無味無臭のお湯は弱いキシキシ感があり、湯上り後はさっぱりします。川を吹く風がお湯で火照った体を冷ましてくれるので、泉質由来のさっぱり感と相俟ってなかなか爽快です。
「もの語り館」に車はとめられ、バス停からも近く、かといってあまり混雑していないという、人目さえ気にしなければ意外と使い勝手の良い露天風呂かと思います。




泉質表示なし

栃木県那須塩原市塩原 地図
JRバス関東・時刻表のページ

日の出~日没
100円

私の好み:★★
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観音温泉

2009年04月10日 | 静岡県


個人的な感覚として、商売っ気の強い温泉施設はあまり好みではないのですが、しかしお湯が良質であると、その場所に限っては例外的に好評価となってしまうことを認めざるを得ません。私にとって、伊豆半島の下田の山奥にある観音温泉はその典型例です。

通販などで温泉水を売り出したり、次々に宿泊棟を増築していったりと、積極的な経営が目立つ観音温泉は一体どういうところなのだろうかと以前から興味があったのですが、積極的なものを目の前にすると俄然怯んでしまう私の性格が災いして、長い間足が遠のいていました。しかし物は試し、一度行ってみようと、車一台がやっと通れる山道をひたすら登り、敷居の高そうな立派な建物に入ってお湯に浸かってみたのですが、これが聞きしに勝る良質のお湯で、なるほど世間の高評価も頷けました。

15時まで入浴できる大浴場「ガラディア」にはいろんな浴槽があります。屋内は大きな檜風呂と飲泉所の他、アルカリ性泉による美肌効果を狙った洗顔専用の木製シンクまであり、広いスペースによる開放感や行き届いた手入れによる清潔感もあって、多くの女性から好感を得ること受けあいです。また別棟のような形で隣にはアメリカンスパと称される歩行湯まであります。屋外には露天風呂や打たせ湯、そして小さなサウナが設けられており、屋内と屋外を行ったり来たりして楽しんでも飽きが来ません。


屋内の大檜風呂


飲泉用の柄杓が置かれている木工細工の湯口


それぞれの浴槽に掛け流される源泉は地下600mから汲み上げられる無色透明無味無臭のもので、湯口ではやや熱めですが内湯の浴槽では適温となり、露天風呂ではややぬるめになりますが、何しろ肌に良さそうなヌルヌル感が特徴的で、興奮して何度もお湯の中の肌をさすってしまいました。また、飲んでみると味は無いものの超軟水だけあって非常に飲みやすい。源泉そのままのお湯も飲みやすいのですが、脱衣所には冷水サーバがあって冷やした温泉水が飲め、これが実に美味いのです。飲むと喉からすぅっと体に滲みこんでいくようで、調子に乗って何杯も飲んでしまいました。この喉越しも観音温泉ならではであり、通販で温泉水が売れる理由もわかります。

入浴するだけで1000円は若干高めですが、和風旅館的な高級感があり、広く清潔でアメニティも整っていて、良質な温泉が堪能できると思えば、相応のコストパフォーマンスを得られると思います。万人受けする温泉です。


露天風呂


アメリカンスパと称される歩行湯&ジャグジー


アルカリ性単純泉
51.0℃ pH9.5 第一号源泉:230L/min+第二号源泉:100L/min 成分総計301mg/kg

静岡県下田市横川1092-1 地図
0120-01-9994
観音温泉ホームページ

11:00~15:00
(別館浴室では15:00~18:00で入浴可)
1000円

私の好み:★★★
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銀山温泉 大湯

2009年04月09日 | 山形県


銀山温泉はドラマ「おしん」で脚光を浴びて以来、山形県では屈指の知名度を誇る温泉地となり現在に至っています。V字の狭い谷底を流れる銀山川の両岸に沿って、大正から昭和初期に建てられた和洋折衷の旅館が軒を並べ、それぞれが三層四層といった多層建築で、唐破風の玄関に格子の窓、木造のバルコニー、鏝絵(漆喰のレリーフ)で飾られた外壁、歩道沿いに建てられたガス灯など、大正ロマンを感じさせる光景は温泉マニアならずとも多くの人に知られるところとなっています。いかにこの光景が美しいかは多くの方が筆で写真で世に発していますので、ここでは多くを語りますまい。


銀山温泉の風景

遊歩道に設けられた足湯「和楽足湯」

この銀山温泉には外湯がふたつあり、そのひとつが温泉街の中心に位置する「大湯」です。無人で各自料金箱にお金を投入します。大湯とはいっても中に入るとかなりこじんまりとしており、脱衣所は3人も入れば窮屈に感じられるほどで、浴槽も3人が限度でしょう。昔からの外湯なのでロッカーなどは無く、確か浴室にはカランも無かったはずです。湯船には無色透明で熱めのお湯が、高温のため加水されているものの放流式で注がれています。

訪問時には誰もおらずお湯を独り占めできましたが、しばらく来客がなかったのか、かなり熱めだったため、純粋なお湯を楽しみたかったのですが、止むを得ず水で薄めて入ることにしました。それでも銀山ならではのお湯の特徴はしっかりと残っており、湯面に鼻を近づけると焦げたタマゴの匂いが鼻孔を巡り、湯口のお湯を掬って飲んでみると塩味においしい出汁の味、そしてタマゴの味がミックスされたような味が感じられました。
江戸時代の寛保年間には既に湯治場として賑わっていたという歴史あるお湯を、安い料金でしっかり堪能できる、まさにsimple is best の外湯です。


シンプルな浴室内

熱い源泉が注がれる湯口


含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
61.4℃ pH6.8 蒸発残留2246mg/kg 

山形県尾花沢市銀山新畑 地図
銀山温泉ホームページ

8:00~20:00
200円

私の好み:★★
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古遠部温泉

2009年04月08日 | 青森県


古遠部温泉といえば温泉ファンなら誰しもが納得するであろう名湯であり、その良さは諸氏のホームページで語られているところですから、ここで多くを申し上げる必要はないでしょう。
青森県の碇ヶ関から秋田県の小坂へ抜ける国道282号線が碇ヶ関関所跡で国道7号線から分かれて坂梨峠へ向かう手前に北へ伸びるダートがあるので、この道をしばらく進めば北東北にありがちなトタン葺きの一軒宿が目に入ってきます。国道282号線沿いに看板が立っているので迷うことはないでしょう。

浴室は男女それぞれひとつしかなく、しかも内湯だけですが、とにかくお湯の量といい析出物の様といい、お風呂にまつわる全てがそのシンプルさを補って余りあるほどの感動を入湯者に与えます。浴室の扉を開けるとまず目に入ってくるのは、床が常に洪水状態になるほどドバドバと浴槽へ流れ落ちては溢れ出てゆくお湯の様で、まるで浴槽が滝壺となってそこへ落ちる滝と滝壺から流れ出る川を見ているかのようです。年季の入った浴槽の縁には石膏の析出物がこんもり覆いかぶさり、床に至っては赤茶色に染まって千枚田のようになっています。浴室の外には排出されたお湯によって石灰ドームができていることからも、成分の濃さを窺い知ることができます。

しかしながら実際にお湯に浸かってみると石膏成分の影響でキシキシ感がありましたが、それほどトロトロに濃厚という感覚はなく、絶妙な湯加減も相俟って、寧ろすっきりさっぱり入れる長湯仕様のお湯でした(濃いお湯は長湯すると疲れますからね)。薄い褐色に濁り赤茶色の湯の花も浮遊、金気の匂い、金気の味に塩味と出汁の味がプラスされ、炭酸の味も感じられます。炭酸味を裏付けるように、湯口ではパチパチと炭酸が弾け、湯中の肌には気泡が付着します。

この温泉は宿泊するとさらに良さが実感できるそうです。しかもかなり安い値段だとか。機会があれば一度泊ってお湯をじっくり堪能してみたいものです。飾り気のない宿の外観からお湯の良さはなかなか想像できませんが、この素っ気無さや浴室の古めかしさが、余計にお湯の味わいを一層醸し出しているのかもしれません。


お湯が大量に溢れ出す浴室


浴室の外には排湯により石灰ドームができている


含石膏弱食塩泉
41.5℃ pH7.5 500L/min 成分総計6362mg

青森県平川市碇ヶ関字西碇ヶ関山1-467 地図
0172-46-2533

9:00-20:00
300円

私の好み:★★★

コメント (2)
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恐山 薬師の湯

2009年04月07日 | 青森県


山の斜面が崩れて岩石がごろごろしている場所をガレ場といいますが、特に火山帯の噴煙地に見られるガレ場はその荒涼たる様から地獄とも呼ばれます。信州の地獄谷、阿蘇の地獄温泉、別府の地獄めぐり、宮城県の荒湯地獄、秋田県の川原毛地獄など、地獄は各地に点在しており、箱根の大涌谷もかつては地獄谷と呼ばれていました。こうした地獄の総本山ともいえるのが、日本三大霊山のひとつで、いたこで有名な「恐山」でしょう。

火山岩に覆われた禿げ山のあちらこちらに石が積まれ卒塔婆が立てられ、背筋が凍るようなおどろおどろしい光景が広がる一方で、カルデラ湖である宇曽利湖が静かに水をたたえ白い砂の美しい極楽浜がその周囲を取り囲み、まさにここが此岸と彼岸の境界なのだと思わせる見事なまでのコントラストを造り出しています。恐山を開山したのは最澄のお弟子さんの円仁(慈覚大師)ですが、よくぞこの地に辿り着いて開山したものだと感心させられます。

さてこの恐山の境内には入山料さえ払えば入湯し放題の温泉浴場が4つあります。古滝の湯(男性限定)、冷抜の湯(女性限定)、薬師の湯、花染め湯です。このうち薬師の湯に入湯してきました。恐山自体が火山の噴煙地なので、境内の至る所でふつふつと音を立てながら温泉が湧いているのです。
山門を潜ると正面に地蔵殿が鎮座していますが、この山門と地蔵殿の間の左側に古滝の湯と冷抜の湯が、右側に薬師の湯がそれぞれ設けられています。いずれもアウシュビッツ(ビルケナウ)のバラックを思わせる木造の掘っ立て小屋で、砂利の敷かれた敷地にぽつんと建っており、中に入っても外観から受ける想像通りを裏切らない簡素な造りとなっています。

しかしお湯が素晴らしい。源泉からそのまま流れてくる薄っすら青白く濁ったお湯がふたつに分かれた浴槽に注がれ、木造の浴槽は析出物で青白く染まっています。成分表示はありませんが、おそらく酸性硫黄泉のお湯で硫黄の匂いが強く、酸っぱみとともに苦味も感じられます。硫黄の温泉が好きな方にはたまらないお湯です。やや熱めなので入ったり出たりを繰り返しながらのんびり湯浴みをするのがよいでしょう。湯屋のまわりは地獄ですが、お風呂だけは極楽でした。


地蔵殿 写真右に「薬師の湯」が、左に「冷抜の湯」がそれぞれ見切れています


シンプルなつくりがかえって味わい深い浴槽


地獄から望む宇曽利湖と極楽浜


成分表示なし

JR大湊線・下北駅より下北交通バス恐山行で40分
下北交通ホームページ
青森県むつ市田名部字宇曽利山3-2
0175-22-3825(恐山寺務所)
下北ナビ


5月1日~10月31日開山(それ以外は閉山)
6:00~18:00
入山料500円

私の好み:★★★
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