温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ゆったり温泉(旧鶴寿温泉)

2012年05月26日 | 青森県
 
昨年(2011年)9月から休業していた鶴田町の鶴寿温泉が今年(2012年)4月に名称を「ゆったり温泉」へ変更の上でリニューアルオープンしたと知り、所用で津軽方面へ出かけた5月上旬に早速(というほど早くはありませんが)行ってみることにしました。こちらには約10年近く前に一度行ったきりでして、残念ながらその頃の記憶はほとんど忘却の彼方と消え去っているのですが、、玄関上の丸い屋根は塗装こそ異なるものの、形状は以前と変わっていないように憶えております。いかにも最近塗りましたという感じがする小豆色のトタン屋根に緑色の壁が印象的です。


 
ロビーやフロントまわりはすっかり綺麗になってどこもかしこもピッカピカ。従業員の方も心機一転と言わんばかりに、とても元気な対応で迎えてくれました。館内には公衆浴場の他、大広間や食堂、そしてダンスホールがあり、更には以前には無かった家族風呂が新設されたようです。玄関に設置されている券売機は、高齢者に配慮しているのか、ボタンがとても大きくて押しやすいタイプの機種が導入されていました。この券売機で料金を支払って、スタッフの方に券を手渡し、男湯の暖簾をくぐります。



脱衣所も典型的な公衆浴場らしい造りですが、当然ながら設備全てが新しくて明るさと清潔感が漲っています。銭湯らしく棚には白い樹脂のカゴがたくさん並べられていますが、ロッカーも設置されているので、ニーズに応じて使い分けることが可能。また有難いことに洗面台には無料でドライヤーが2台もあり、ゴチャゴチャにならないようバスケットに納められていました。


 
浴室も公衆浴場のお手本のようなレイアウト。男湯の場合、向かって左に浴槽が、右側に洗い場が、そして奥にサウナや水風呂が配されています。温浴槽は主浴槽とホワイトシルキーイオンバスの2種類があります。



こちらは主浴槽。黒い箱形の湯口からお湯が注がれ、浴槽中央ではジェットバスがけたたましく作動しています。そしてジェットバスの勢いを借りてか、浴槽の縁から泡と共にお湯が洗い場へとオーバーフローしています。お湯の見た目は薄い黄褐色透明、口に含むとしょっぱさの他にえぐみや舌のしびれを伴う苦みが感じられ、揮発油的なアブラ臭が嗅ぎ取れます。鶴田町に隣接する板柳町の「あすなろ温泉」は温泉ファンの間では有名なアブラ臭のお湯が体験できますが、あの「あすなろ温泉」の強いアブラ臭を弱めた感じと表現したらよいのかもしれません。また肌には食塩泉的なツルスベ浴感が伝わって気持ちが良いのですが、濃い目の食塩泉である上に、結構熱めの湯加減ですから、長湯すると体力が奪われてヘロヘロになること必至でしょう。館内表示によれば、源泉温度が高いため加水、槽内温度を均一にするため循環、衛生管理のため塩素系薬剤を使用、とのことですが、塩素らしさはほとんど感じられず、循環と言っても湯舟のお湯からは結構な鮮度が感じられましたし、上述のようにしっかりオーバーフローもしているので、新鮮な源泉の投入も併用している半循環なんだろうと思います。訪問時、湯口付近の浴槽底のタイル目地には砂が溜まっていましたが、これは源泉井でお湯と共に汲みあげちゃったものなのか、あるいは加水用の井水に紛れこんでいたものなのか、よくわかりません。



この扇形の浴槽はホワイトシルキーイオンバス。機械できめ細かい泡をつくっているもので、近年各地の入浴施設でしばしば見かけますよね。私はこのような人工的なお風呂をあまり好まないのですが、主浴槽が熱かったためにこの浴槽へ移ってみたところ、41℃くらいの絶妙な湯加減である上にあまりに優しく軽やかな浴感だったので、すっかりシルキーバスの虜になってしまい、その後はひたすらこの浴槽に浸かっていました。一般的にこうした人工的なお風呂には真湯が使われますが、こちらではこの浴槽にも源泉を用いており、しかも浴槽縁からしっかりとオーバーフローさせていました。主浴槽同様にこちらも半循環ではないかと思いますが、お湯をちゃんと溢れ出させているあたりは、湯量が豊富な温泉ならではですね。


 
洗い場にはシャワー付き混合栓が20基設置されています。青森県は津軽や南部を問わず、新しい温泉施設でも古典的な押しバネ式水栓&固定式シャワーを導入するケースが見受けられますが、こちらでは他県でも一般的なオートストップ式の混合水栓となっていました。なお水栓から出てくるお湯は真湯です。



浴室の中で最もお湯の質が良かったのがこの掛け湯でした。ハンドルがとられた蛇口から伊万里焼風の器へ源泉がチョロチョロと落とされているのですが、全く加水されていない源泉らしく、かなり熱くて指先で触るのがやっと、とても掛け湯になってできるような温度ではありません。でも源泉そのままなので、しょっぱさや渋み、アブラ臭など知覚面が浴槽よりもはるかに強く感じられました。

加水されているとはいえ濃い目の食塩泉であることには変わりなく、湯上がりはなかなか汗が引かず、しばらくの間は全身に熱が籠って火照り続けていました。新しい施設ゆえに気持ちよく利用でき、使い勝手も良好。界隈を訪れた際にはこちらへ立ち寄って入浴してみるのもいいかもしれません。


木筒温泉2号泉
ナトリウム-塩化物温泉 61.8℃ pH7.7 394L/min(掘削・動力揚湯) 溶存物質10.48g/kg 成分総計10.48g/kg
Na+:3469mg(91.09mval%), K+:365.9mg(5.65mval%),
Cl-:5675mg(94.14mval%), HCO3-:509.4mg(4.91mval%),
源泉温度が高いため加水、槽内温度を均一にするため循環、衛生管理のため塩素系薬剤を使用。

JR五能線・陸奥鶴田駅から徒歩25分(約2km)
青森県北津軽郡鶴田町大字木筒字西柳川61-2  地図
0173-22-6845

6:00~22:00 無休
350円
ロッカー(貴重品用小ロッカーおよび100円リターン式ロッカー)・ドライヤーあり、入浴道具類販売あり

私の好み:★★
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一本木沢温泉

2012年05月25日 | 青森県
 
十和田市の国道4号バイパス沿いに建つサークルKからちょっと入ったところで2011年12月に新規開業したばかりの温泉公衆浴場「一本木沢温泉」へ行ってきました。昨年末に新規オープンの報を聞き、その後早々に温泉ファンの方によってレポートされている評判を目にしたら、すぐにでも訪問してみたい欲求に駆られ、今年(2012年)の2月に廃止目前だった十和田観光電鉄へ乗り納めに行った際、工業高校駅からスケート場のようにカッチカチに凍った道を片道20分歩いて現地へ赴いたのですが、運が悪いことにその日は臨時休業だったために入浴することができず、非常に悔しい思いをしながらトボトボと駅へと戻っていったことがありました。東京圏で生活する私にとって、北東北、とりわけ青森県へ行き来することはかなり時間と体力と資本を必要とすることなので、そう簡単には再訪する機会が得られません。それからというもの、何としてでも早いうちに雪辱を果たしたいという執念に取り憑かれ続けていたのですが、その3か月後の5月上旬に所用で弘前方面へ出かける機会が得られたので、津軽地方からわざわざ青森県を横断して十和田市へ向かい、ようやくこちらでの入浴を果たすことができたのであります。

駐車場はとっても広々としており、道路に面した焼肉屋さんと共有しているのかと思われます。建物の外観はシックな色合いで、看板が無ければここが温泉であるとわからないかもしれません。


 
館内はどこもかしこもピカピカです。下足場にはたくさんの靴が置かれており、既に内部では多くのお客さんが利用していることが窺えます。玄関を入ると受付の女性が明るく朗らかに挨拶してくれました。券売機で料金を支払って中へと進みます。フロント前の広間の奥には休憩用のお座敷も設けられていました。



脱衣所も綺麗で使い勝手もまずまず(尤も、敷地面積に余裕があるのだから、もう少し広くしても良かったかもしれません)。公衆浴場らしく棚にはたくさんのカゴが置かれており、多くのお客さんはこのカゴを使っているようでしたが、カゴのみならずコインリターン式のロッカーもたくさん設置されており、荷物の安全面を気にするお客さんでも問題なく利用できる設備が整っていました。また、洗面台には無料で使えるドライヤーが2台も用意されており、有料で1台のみが多い青森県の他の公衆浴場と比べると細かなサービス面にも配慮が行き届いているように感じられました。



天井が高く開放感に溢れる浴室内は木目調の建材を多用したぬくもりのあるデザインとなっており、タイル貼りで無機質になりがちな他の浴場と比べて、落ち着きのある空間構成であるように実感しました。男湯の場合、右側に洗い場が、左側に浴槽がそれぞれ並んでいます。

洗い場は計39箇所のシャワー付き混合栓が、壁から櫛状に突き出た4~5本の低い仕切り壁に取り付けられており、その仕切り壁によって洗い場を利用している人の姿が見えにくくなるため、たとえ浴室内が混雑していても、それをあまり視覚的に感じさせない造りになっていました。なお水栓はごく一般的な混合水栓が用いられており、どんなに新しくても古典的な押しバネ水栓と固定式シャワーにこだわる青森県の公衆浴場の中では異色な存在かもしれません(というか古典的なスタイルにこだわる青森県こそ全国的にみれば異色なのですが)。水栓から出るお湯は源泉そのものでして、正直なところ、浴槽より水栓の方がお湯の知覚的特徴が強く感じられました。

浴槽類は手前から、サウナ・水風呂・低温槽・中温槽・中温バブル槽(ジャクジー)・高温深浴槽の順に並んでおり、温度の高低にかかわらず温浴槽には源泉が張られています。各温浴槽とも浴槽隅っこに設けられた湯口から源泉が投入されて、縁の切り欠けから溢湯しており、槽内吸引などは見られない事から、加水あるいは加温はあるかもしれませんが、循環などは行われていないのだろうと推測されます。



浴室入口付近にはこのような打たせ湯の他、掛け湯槽もありました。


 
公衆浴場なのに露天風呂を利用できるのは嬉しいですね。周囲を塀に囲まれているため景色は楽しめないものの、公衆浴場とは思えない広い空間が確保されている上に旅館のような庭園風のつくりになっているため、ゆったりと寛いで湯あみすることができました。頭上は屋根が覆っているので雨や雪の日でも大丈夫。浴槽の縁には木材が、そして槽内底面はチャコールグレーの平たい石材が用いられており、この底におしりが触れた時の感触が良く、また浴槽は全体的に浅くつくられているため、縁に頭を載せてちょっと寝そべったような体制で入るとちょうどよい塩梅で全身浴できました。



木の湯口から源泉が注がれており、排水口の吸引が間に合わないほどしっかりとオーバーフローしていました。お湯の特徴としては無色透明で、僅かに臭素的な香りとはっきりとした塩味を有し、いかにも食塩泉的な優しいスベスベ浴感が肌に伝わり、とてもよく温まります。各温浴槽とも同じ源泉を引いているはずなのですが、湯使いの違いからか知覚面、とくに味や匂いに差があり、個人的には低温槽とシャワーがもっとも濃く感じられました。

開業からまだ半年しか経っていないというのに、既に多くの常連客を獲得しており、訪問時(平日夕方5~6時)には常時20人近いお客さんが浴室を出入りしていました。広い空間と洗い場水栓の配置方法により、混雑していてもそれに気付くことなく、入浴していてストレスを感じさせないのは素晴らしいところです。お湯の質も使い勝手もまずまずですし、広く明るくて綺麗なところは非常に魅力的ですね。


一本木沢温泉(再分析)
ナトリウム-塩化物温泉 42.6℃ pH8.36 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質3.764g/kg 成分総計3.769g/kg
Na+:1204mg(86.86mval%),
Cl-:1892mg(88.88mval%),
H2SiO3:161mg

青森県十和田市大字三本木字一本木沢92-5  地図
0176-20-1001

5:30~22:00 年中無休
350円
ロッカー(100円リターン式および貴重品用小ロッカー)・ドライヤーあり、各種入浴道具販売あり

私の好み:★★★
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鶯宿温泉日帰り入浴情報・2012年春 / 高倉山温泉が閉館

2012年05月24日 | 岩手県
たまには趣向を変えて、このブログでは珍しく、岩手県の温泉の最新?情報を二つお届けします。


●鶯宿温泉の日帰り入浴情報 2012年春版

先日岩手県の鶯宿温泉へ出かけたところ、現地の観光協会にて、日帰り入浴を受け付けている施設の一覧を入手できましたので、皆様にもご紹介させていただきます。この一覧には各施設における受付時間および料金、そして露天風呂の有無が記されており、当地で日帰り入浴するには非常に便利なデータとなっています。詳しくは一覧をご覧ください。なおこの表は今年(2012年)5月現在のものですが、施設側の都合により予告なく変更されることが予想されますので、予めご承知おきください。ちなみに私の実体験エピソードをひとつお話しますと、この一覧では日帰り入浴OKになっている「石塚旅館」ですが、実際に訪れてみると女将さん曰く、もううちのお風呂は古く草臥れていてシャワーも無いから、知っている人しか入浴を受け入れていないんですよ、とのこと(でも交渉したら入浴OKになりましたけどね)。


(↑画像をクリックすると拡大します)



●高倉山温泉が閉館!

先々週(2012年5月第2週)に、岩手県花巻市、花巻温泉郷のひとつに含まれる「高倉山温泉 豊楽園」へ立ち寄ったのですが・・・


温泉名の看板が笹藪で隠れちゃっているぞ。なんだかイヤな予感がします。



建物の方は一見したところ特に問題は無さそうですが…



んん!? 玄関に何やら貼り紙があるぞ。



そこには赤い文字で「閉館」、そしてプリンター出力により「この度閉館することとなりました。長い間、ご利用誠にありがとうございました。館主」と書かれていました。今年の冬にはまだ営業していたはずなので、閉館したのはおそらくつい最近のことと思われます。
こちらは数年前から宿泊客をとらずに入浴のみの営業となっていましたが、ついに幕を下ろしてしまったんですね。花巻温泉郷屈指の渋くて鄙びた佇まいが魅力的だったのですが、本当に残念です。

なおこの情報に関しては、なるべく早めに温泉ファンのみなさんへお伝えした方が良いだろうと判断し、私からspatravelerさんのブログ「温泉情報」へ情報提供し、先行して取り上げていただきました(該当記事はこちら)。
コメント (6)
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ぬぐだまりの里 秘湯 八甲田温泉(旧遊仙) 2012年5月上旬

2012年05月23日 | 青森県
※この記事は2012年5月上旬時点の状況をレポートしたものです。


八甲田山中の田代平から近い一軒宿「八甲田温泉遊仙」が昨年(2011年)秋に休業したという話を聞いた時には「あぁ、またしても貴重な温泉宿が消えてしまうのか…」と落胆したのですが、その不安は杞憂だったようで、半年後の2012年4月には「ぬぐだまりの里 秘湯 八甲田温泉」と名称を変更した上で営業が再開されました。しかも名称のみならず施設そのものも模様替えしたらしいので、5月の連休最終日、青森県で所用を済ませたついでに、どんな感じになっているのか行ってみることにしました。


 
青森市街から駒込川に沿って八甲田山中へ伸びる県道40号線。標高が上がるにつれて路肩には雪が目立ち始め、銅像茶屋の先はまだまだどっさりと雪が残っていました。5月の連休も終わるというのに、こんなに残雪が積もっているなんて珍しいですね。私の車は夏タイヤだったので、この雪にちょっとビクビクしながら先へと進みました。


 
昭和13年に弘前で編成されてその後仏印へ移動した歩兵第82連隊「第四中隊之碑」の足元もまだ雪で覆われたまま。


 
さて現地へ到着しました。外観は特に大きな変化は見られませんね。
既に営業再開しているはずですが、建物のあちこちで色々と工事中。本当に営業しているのかしら。



画面ではほとんど見えませんが、玄関には旧名称「遊仙」の二文字が書かれた大きな提灯がぶら下がっていました。


 
玄関に入ると宿の主人が出迎えてくれたので、早速入浴したい旨を申し上げると「現在原因究明中なのですが、大浴場は源泉湧出の量と温度が低下しているため利用できません。らむね風呂だけでしたら大丈夫ですけど、いかがなさいますか」とのこと。私個人としては寧ろ「らむね風呂」に入りたかったので、二つ返事で入浴をお願いしたところ、上述のような事情を理由に主人は入浴料をちょっぴりオマケしてくれました。なおフロントの前には券売機が設置されているので、日帰り入浴を積極的に受け入れる営業姿勢をとっているようです。



フロントから左側へ向かい、古民具が陳列されている廊下を進み…


 
お座敷があるところを右へ曲がり…


 
廊下を進んだ突き当りの非常口に、家庭のお風呂掃除で使うようなペラペラのビニルスリッパがたくさん並べられていました。どうやらここで履き替えて屋外へと出るようです。



屋外へ出ると、右に見えるこの建物は内風呂ですね。今回は利用できませんでしたが、いつ復活するんでしょうか。



コンパネの上にブルーシートが敷かれたデコボコの仮通路の先にはログハウス調の新しい小屋が建てられていました。昔は「白樺荘」という別棟だったかと思いますが、完全に建て直したんですね。上物は出来上がったけど、その周囲(アプローチ)などはまだ工事中のようです。


 
浴室は男女別に分かれている他、家族風呂もあるみたいですが、訪問時家族風呂には「使用中」の札が提げられていました。



脱衣室には木製無地の屏風が立てられ、床には籠が置いてあるのみ。棚や鏡台などは無く、実に簡素な造りです。この状態ってまだ未完成で今後設備を充実させてゆくのかな? あるいはこれでもう完成形なのかしら?



木の香りが強く漂う浴室には、室内の幅いっぱいにひとつの浴槽が据えられていました。真新しい白木ならではの美しさと明るさに満ちています。側壁下方に常時通風のルーバー窓が設けられていますが、これは後述するように二酸化炭素ガス中毒を防止するためのものでしょう。なお浴室内にはシャワーなどの設備はなく、水の蛇口がいくつかあるばかり。このお風呂は体を洗うのではなく、じっくり湯に浸かるためだけの施設と割り切った方がよさそうです。


 
木枠の湯口からラムネ湯の源泉がドボドボと大量に投入され、浴槽の縁から惜しげもなくオーバーフローしてゆきます。
お湯はほんのり青白色っぽさを帯びたほぼ無色透明に近い色、口に含むと強烈にすっぱくて口腔が一気に収斂し、加えて強い炭酸味と硫黄味が感じられます。また火山の噴気孔的な硫化水素臭が湯面からはっきりと漂い、入浴後の体にしっかりとこびりつきます。薄い白&黄の湯の華が沢山浮遊しています。こんな強い個性だけでも十分興奮するのに…


 
「らむね湯」というだけあって、肌が真白く見えるほど夥しい炭酸の気泡が全身にまとわりついてきます。いやぁ、こりゃ凄いぞ! 拭っても拭っても泡付きはとどまることを知りません。この泡付きを目にして興奮しっぱなし。これほどの炭酸ガスを含んでいるんですから、中毒を防ぐためのルーバーは必須ですね。この泡のおかげで、本来は引っかかりを有しそうな泉質なのにスベスベ浴感が勝っていました。本当にワンダフルです。加水加温循環消毒なしの完全掛け流し。源泉温度はそれほど高くなく、湯船では36~7℃ですが、この湯加減のおかげでいつまでも長湯でき、しかも炭酸ガスのおかげで体の芯からポカポカ。入浴中は夢の世界にトリップしているようでした。

営業再開後も工事中の箇所がまだ残っているので、連休に間に合わせるべくちょっと見切り発車でオープンしちゃったのかもしれません。今回は「らむね館」しか利用できませんでしたが、今後整備が進んで大浴場も復活したら、避暑目的で改めて再訪してみたいと思います。


温泉分析表見当たらず

青森県青森市駒込深沢766-2  地図
017-738-8288

日帰り入浴10:00~17:30
大浴場500円・らむね館800円・大浴場+らむね館1000円
らむね館には備品類なし

私の好み:★★★
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蔵王開拓温泉

2012年05月22日 | 宮城県
 
南蔵王の山麓にポツンと佇む「蔵王開拓温泉」へ行ってきました。こちらは2011年前半に源泉設備の不調で休業していましたが、同年7月に営業を再開しております。


 
開拓という言葉には、フロンティアスピリッツという積極的な意味合いの他に、えてして郷愁や悲哀といった寂寥感が付いて回るものですが、荒涼とした蔵王山麓の高原地はまさに後者の雰囲気がぴったり。



この一帯は戦後に農地開拓事業で切り拓かれた入植地なんだそうです。敗戦にともなって外地から引き揚げてきた人達の対策として日本各地で見られたいわゆる戦後開拓地の多くは頓挫して最終的には放棄されてしまった場所が多いのですが、こちらも昭和末期には廃業へと追い込まれており、寂寞とした原っぱに放置された廃車のバスや農耕車は、夢破れし開拓地の象徴のようです。でも農業や酪農がダメなら温泉があるじゃないかと奮起して開発したのが現在の温泉。不撓不屈精神の賜物なんですね。


 
青い屋根の建物。外壁には温泉名が書かれていますが、「王」の字が剥がれちゃっていますね。
玄関前には料金が記された板が立てられています。以前は1000円でしたが、さすがに高すぎると判断したか、今では800円へ値下げされていました。それでも周辺の同業他施設に比べるとはるかに高い金額設定です。「そばうどんありますが持ち込み自由です 大広間で一日ゆっくりお過ごしください」と書かれているように、広間での一日休憩料があらかじめ入浴料にパッケージングされていると捉えた方がよいのかもしれません。



木の塀の向こうには露天風呂があるわけですね。これから行きまっせ。

さて中へお邪魔すると、玄関はまるで来客を想定していない民家のように雑然としており、料金高いのにこんなんで大丈夫なのかという不安感がよぎります。玄関からすぐのところに小さな受付があるのですが、訪問時には誰もおらず、あれれ、お留守にお邪魔しちゃったかと思っていたら、奥の方からメガネをかけたお兄さんが登場。このお兄さん、人と接するのが苦手な性格なのか、あるいは偶々面倒だったのか、語尾は必ず「~なんですけどぉ…」と締め、モゾモゾと小声で不安げに接客するのです。普通のお客さんだったらここで引き返してしまうかもしれませんが、このただならぬ雰囲気に却って興味を抱いてしまった私は何が何でもここで入浴したくなり、800円?大丈夫ですよ! 6時でオシマイ?OK!問題ありません! とお兄さんの何倍も明るく大きな声で答え、半ば強引な勢いでお兄さんにお風呂へと案内していただきました。


 
とても800円を取るとは思えない質素な造りの草臥れた脱衣室。草臥れてはいますが、清掃はきちんと為されています。室内には100円リターン式のコインロッカーがたくさん設置されていましたが、私以外に客はいなかったので、施錠しないで利用しちゃいました。



室内の台にはバスケットに詰められたシャンプー類が置かれており、お風呂場で使いたい客は各自でここから好きなものを借りてゆくシステムのようです。なお私は常に自分用のボディーソープなどを持ち歩いているので、今回こちらのものは利用しませんでした。



かなり広い浴室内に入ると、ゴツい姿の岩が配置されている大きな内風呂が目に飛び込んできました。室内なのにずいぶん立派なお風呂を造ったものですね。室内は薄暗くて湯気がかなり籠っており、あまり居心地の良い環境ではありませんでした。店じまいに近い時間帯に訪れたので、こんな状態になってしまったのかもしれませんが…。


 
男女仕切り壁へ食い込むように鎮座する大きな岩から源泉が落とされていました。お兄さん曰く「(遅い時間なので)もう水を止めちゃったから、内は熱いと思いますよ」とのことでしたが、本当に熱い! 加水加温循環消毒なしの完全掛け流しなのですが、73℃もある源泉を加水もしないで湯船へ注いだら入浴できるはずもなく、この時の内湯温度は体感で50℃近くもあったため、残念ながら内湯へ入浴することができませんでした。もっともこの熱さこそ、この温泉が正真正銘の本物である証なんですよね。


 
洗い場には源泉がでるお湯と水の蛇口の組み合わせが8組。蛇口上の壁面には「洗場のじゃ口のお湯の温度は73度です」と手書きされていますが、蛇口からは本当に激熱のお湯が出てくるのでビックリ。直接触ったら間違いなく火傷しちゃうな。あぶねぇ、あぶねぇ。



露天風呂へ出るには、熱々の内風呂に足を突っ込まないと行けない構造になっているのが難点。ウサギのようにピョンピョン飛び跳ねながら引き戸を開けて露天へ。


 
板塀に囲まれた露天風呂。こちらは外気に冷やされて最高な湯加減でした。この日は残念ながら山裾を雲が覆っていたため、蔵王連峰を眺望することができませんでしたが、天候に恵まれれば山側には壮大な景観が広がるんでしょうね。景色こそ見れなかったものの、山から吹き降りてくる風が心地よく、熱いお湯で火照った体をこの風でクールダウンさせると爽快この上ありませんでした。



露天風呂の岩風呂は2つに分かれているのですが、最近は片方しか使用されていないようでして、未使用の方はカラカラに乾いていました。清掃用のホースが客から思いっきり見える場所に置いてあり、豪快と言うか大雑把というか…。全体的にワイルドというかザックリとしており、やや荒れているような気配すら漂っていました。



南蔵王山麓のお湯は大雑把に表現すれば、遠刈田をはじめとして黄土色に濁った土類系の泉質が多く、こちらのお湯もご多分に漏れず黄土色に濁っていますが、一つ一つにはそれぞれ異なった個性が見られるのが面白いところでして、蔵王開拓温泉のお湯は周辺(たとえばすぐ近くの「不忘の湯」)に比べて金気や石膏の知覚がはっきりしており、芒硝的知覚も感じられ、更には弱めながら塩味も含まれていました。湯口の周りはいかにも硫酸塩泉らしいサンゴのようなトゲトゲがたくさん付着していました。この湯口から吐湯された源泉は、槽内の底からまっすぐ上へ突き出た塩ビ管によって排水されてゆきます。設備面ではあまり素人受けしそうにないお風呂ですが、お湯の質は掛け値なしで素晴らしい! 蔵王連峰から吹き下ろす風に当たりながら、しばし時間を忘れて爽快な湯あみを堪能しました。


 
あまりに気持ち良いお湯だったので、すっかり閉館時間のことを忘れていたのですが、気付けばもう時計の針は6時を指していました。慌ててお風呂から上がって退館しようとすると、先程のお兄さんから「あのぉ、お茶がはいってますけど…」と声を掛けられたので、その声に導かれるようにしてお座敷へ行ってみることに。


 
お座敷でほうじ茶をいただきました。こちらの利用客にはお茶と温泉卵が振る舞われるそうですが、この日は温泉卵は無く、そこ代わりにお茶菓子をいただきました。座敷からの眺望は素晴らしく、晴れた日には海まで望めるんだとか。


 
座敷内を見回すと、販売品であるおばちゃん向けの服を発見。月にどれくらい売れるのかしら。また部屋の隅に積み重ねてある座布団の横には、当施設で以前使われていたと思われる表札も発見。こんなに立派な札なんだから玄関に掲げればいいのに。


 
本棟からちょっと下ったところに源泉井を発見。腰ほどの高さの箱の中にポンプがあって、そこから本棟へ向かって引湯管が伸びています。画像から見切れている青い小屋が電気室でしょうね。引湯管の保温目的のため発泡スチロールを管に抱きつかせているのですが、その極めてプリミティブな構造には思わず感心。コストがかかる設備を使わずに既存品をうまく活用する開拓者スピリッツを垣間見たような気がします。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 73.5℃ pH6.7 溶存物資4002.3mg/kg 成分総計4272.2mg/kg
Na+:921.7mg(72.84mval%), Ca++:246.9mg(22.38mval%),
Cl-:578.9mg(29.19mval%), 1442.8mg(53.69mval%), HCO3-:573.4mg(16.80mval%),
H2SiO3:122.5mg, 遊離CO2:269.8mg

宮城県白石市福岡八宮字不忘308-6
0224-24-8814

9:00~18:00
800円 
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類あり、ドライヤー見当たらず
(2011年の営業再開以降、営業時間や料金が変更されているので注意)

私の好み:★★
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