温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

不忘の湯

2012年05月21日 | 宮城県

南蔵王の高原地に点在する温泉のひとつ「不忘の湯」で露天風呂を楽しんできました。県道254線沿いにはこんな看板が立てられているので、迷うことなく辿りつけました。こちらの名前は蔵王連峰南端の不忘山に因んでいるのでしょうね。第二次大戦中には、東京大空襲の襲撃を終えた米軍のB29が山中に墜落して乗員が死亡しており、敵味方を超えてその御霊を弔うことを目的として、付近には「不忘の碑」も建てられているんだそうです。
高原の風は清涼で爽快、と言いたいところでしたが、5月連休の蔵王山麓はまだ春と冬が行ったり来たりしている最中らしく、訪問時は気温が10℃を下回るとても寒い空気に包まれていました。


 
石灯篭が目立つ駐車場。当地は茨城県の業者が開発した温泉付きの別荘分譲地なのですが、妻面に「温泉」と書かれたこの小屋は別荘地の管理小屋らしく、その前に車を停めると小屋の中からおじさんが出てきて、料金を受け取るとともにお風呂へと案内してくれました。



管理小屋の右側には足湯や温泉たまご製造が楽しめる小屋がありました(私は利用していませんが…)。小屋の前には水戸ナンバーの黒いベンツが止まっていましたが、これは業者関係者の車かしら。


 
管理小屋の裏手が露天風呂の入口。戸の脇の柱には許可を得てから入浴するようにと書かれた注意書きの札が貼り付けられているとともに、銀色の料金箱が設置されていました。



脱衣小屋は棚に籠のみという極めて簡素な造り。


 
お風呂は露天風呂のみ。シャワー等のカランは無いため、備え付けの桶で掛け湯してからの入浴となります。
女湯はわかりませんが、男湯に関しては敷地外に対して視界を遮るものが何もないため、外から思いっきり丸見えです。お風呂というよりは庭園の池のような雰囲気ですね。周囲には別荘分譲地が広がっていますが、分譲が開始されてからまだあまり経っていないからか、空き地が目立ちます。果たして売れ行きの方はどうなんでしょう?


 
お風呂では大きな信楽焼の狸や、いなないて前足を上げている真っ赤なお馬さんが迎えてくれました。


 
浴槽は二分されており手前側(脱衣所側)はかなりぬるく、奥側(湯口側)が適温でした。浴槽のお湯は奥から手前へと流れ、槽内に突き出た塩ビ管により排湯されていきます。浴槽からお湯がオーバーフローすることはありませんでした。両浴槽とも表面積が大きく外気で冷やされるため、源泉温度に対して湯舟の温度が低く、特に手前側の浴槽ではそれが顕著でした。



岩組みの浴槽の一番隅っこには、成分が付着して一部が変色している、かつて湯口だったような岩の構造物がありますが、現在はまったく使われて使われていないようでして、その脇に伸びる樋から源泉が投入されていました。また樋から細い塩ビのパイプが伸びて手前側浴槽にも源泉を送っており、これによって手前側浴槽が極端に冷めるのを防いでいるようでした。湯口から出る源泉の温度はかなり熱く、湯舟が大したことない温度だからと油断して湯口のお湯に触ろうとすると火傷しちゃうかもしれませんね。
お湯はやや赤みと緑色みを帯びた黄土色に弱く濁っており、比較的熱い奥の浴槽では底がはっきり見えますが、ぬるくなっている手前側の浴槽では溶解度が下がってしまうためか、濁り方が若干強いようでした。薄い塩味に加え、芒硝や石膏そして金気の知覚が感じられ、スベスベと引っかかりが混在する浴感でした。



湯面などは赤く染まっており、成分の析出もみられます。この手のお湯の性として、いくら清掃しても不快なヌルヌル物質が浴槽内に付着しやすい傾向がありますが、こちらのお風呂でも(ちゃんと清掃しているんでしょうけど)少々発生しておりました。もっとも、本格的な旅館じゃありませんし、300円で入浴させてもらっているのですから、あまり文句は言えませんね。

むしろ源泉掛け流しのお湯を開放的な露天風呂で堪能できるのですから、とっても気持ち良くて有難いもんです。いったん入浴すると、お風呂の気持ちよさと外気の寒さの両方のため、なかなか湯舟から出ることができませんでした。カランなどは無いためしっかり体を洗うような入浴はできませんが、界隈へ立ち寄った際に手軽に露天風呂を楽しみたいのでしたら丁度良いかと思います。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 70.8℃ pH6.6 74.3L/min(動力揚湯) 溶存物質3491.0mg/kg 成分総計3774.5mg/kg
Na+:空欄(72.95mval%), Ca++:270.5mg(20.35mval%),
Cl-:564.7mg(24.81mval%), SO4-:1870mg(60.64mval%), HCO3-:560.8mg(14.31mval%)
(分析表の数値はメチャクチャ?)

宮城県白石市福岡八宮大網前143-1  地図
ホームページ

10:00~17:00
300円
備品類なし

私の好み:★★★
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黄金川温泉 白鳥荘

2012年05月20日 | 宮城県

今回スポットライトを当てるのは、ご近所のお年寄りに大人気であり、かつ温泉ファンからの評価も高い蔵王町の老人福祉施設「白鳥荘」です。こちらは2010年2月に突然源泉が出なくなったために休業していましたが、新しい源泉を掘削して同年12月に営業再開しております。その翌年に発生した東日本大震災の時には再び一時休業に追い込まれたそうですが、数日後に見事復活を遂げ、何度もトラブルに見舞われてもめげずに復活するという歩みは、白鳥というよりフェニックスと称すべきかもしれません。
私もこちらには何度か訪れていますが、新源泉使用後はなかなか訪問できずにおり、先日機会を見つけてやっと訪問できました。源泉井改修とともに建物も若干改装したそうですが、建物の外観には特に変化がないようでした。


 
新源泉を使用するようになってからは湧出量が倍増したらしく、その恩恵を受けてか足湯が新設されていました。


 
内部も一見すると目立った変化はないようでしたが、以前喫煙室があったところが自動販売機コーナーへと改修されて喫煙室が建物の隅っこへ追いやられていたり、有料の休憩室が拡大されていたりと、よく見たらいくつかの変化点が確認できました。このため受付横に掲示されている料金表も、パッと見では以前のままのようですが、館内レイアウト変更に伴い内容が大幅に変更されています。でも入浴料金など基本的なものは同じで、町外の利用者の入浴料金は350円のまま。事務所の前ではたくさんの農産物が販売されていました。

さて料金を支払って浴室の扉を開けると、その向こうのスリッパ脱ぎ場には夥しいスリッパが床を埋めつくしていました。うわわ…、内部は相当混雑しているんだな…。覚悟を決めて中へ(混雑のため内部の様子はほとんど撮影しておりませんのであしからず)。奥へ細長い構造の脱衣場は全面木目の内装材が用いられており、スチールロッカーが設置されています。ロッカーは以前はコイン使用のリターン式だったはずですが、今では無料(コイン不要)で施錠できるようになっていました。この脱衣所で特徴的なのが、脱衣室内に置かれている扇風機でして、1台程度でしたらどの温泉でも見かけますが、こちらは床置き1台とロッカー上2台の計3台が狭い室内でウンウン唸りながらグルグル廻っているのです。後述しますが、ここの温泉はとてもよく火照ってしまうので、湯上り後もなかなか汗が引かず、かなり体力が奪われてしまいますから、主要な利用者であるお年寄りの体調に配慮して、このようにたくさんの扇風機が用意されているのかと思います。


 
(今年(2012年)訪問時には混雑のため浴室内の撮影できなかったので、2009年撮影の画像を掲載させていただきます。)
本年(2012年)利用時は土曜の午後2時頃に利用したのですが、浴室は常時15人以上のお客さんがおり、7つあるカラン(シャワー付き混合栓)には空き待ちが発生するほどの大混雑でした。ここはいつ行っても混んでますね。以前と比べると室内は若干改装されており、側面は腰部まで煉瓦のような壁材が貼られ、そこから上はクリームホワイト色に塗装されていました。一方、浴槽廻りは以前とあまり変わっていないようで、平たい岩を積み上げたような造りの湯口から加水された源泉がドバドバ投入され、浴槽の縁の全辺から贅沢にオーバーフローしています。オーバーフローのお湯が流れる床は10円玉のような赤銅色に染まっており、特に浴槽の縁はつやつやとした金属的な光沢を放っていました。

床をそんな色に染めるお湯は、まるでミネストローネスープのような赤みを帯びながら黄金色に強く濁っており、とてもしょっぱく、塩味の他に金気や何かが黒く焦げたような硫黄的な知覚も感じられます。旧源泉時代には湯口でタマゴ臭が嗅ぎ取れましたが、現在の新源泉ではタマゴ臭ではなく上述のような黒焦げ的な匂いへと変化しているようです。また旧源泉より新源泉の方が赤みや濁り方が強いようにも思われます(あくまで個人的見解ですが)。公営の温浴施設なのに塩素消毒されていないのは非常にうれしいところです。

源泉は高温のために加水されているそうですが、加水量が少ないのか湯舟はちょっと熱めの湯加減に設定されており、濃い塩分と熱めの湯加減というコンボが無法者ボクサーのような凶暴な性質となって湯あみ客の体をボディーブローし続け、ものの数分でたちまちノックダウン、あっという間にヘロヘロになってしまいます。このため床では何人もの御爺ちゃんがグッタリと蹲っていました。そんな攻撃的なお湯なのに客足が途絶えないのですから、この温泉を愛する皆さんは余程のMだったりして。

こうしたお湯のお風呂ですと、一般的には客の回転が速くなるものですが、利用客がお年寄りばかりなので、どうしても回転が遅くなってしまうのが、お風呂の混雑に拍車をかけてしまうのでしょう。お風呂は単なる内湯しかなく、特に趣向も風情もあるわけではなく、その上常時混雑しているので、泉質重視の温泉ファン以外にはあまりすすめられませんが、新源泉移行後も濃厚で凶暴なお湯を堪能することができるのは嬉しい限りです。


黄金川温泉第二源泉
ナトリウム-塩化物温泉 49.0℃ pH7.0 蒸発残留物11100mg/kg 
Na+:3652mg(85.31mval%), Ca++:334.3mg(8.96mval%),
Cl-:6013mg(91.78mval%),
遊離CO2:225mg,
加水あり(高温のため)

【参考 旧源泉の分析表】
ナトリウム-塩化物温泉 49.7℃ pH7.2 蒸発残留物11430mg/kg 
Na+:3626mg(82.48mval%), Ca++:442.5mg(11.55mval%),
Cl-:6292mg(92.74mval%),
遊離CO2:44.7mg,
高温のため要望があった時に加水

宮城県刈田郡蔵王町宮字中野129
0224-32-3960

9:00~22:00
町外350円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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曲竹温泉 こもれび温泉(旧ルビナスセンター) 2012年春・あれれ?

2012年05月19日 | 宮城県
※2015年冬頃に閉館してしまったようです。

 
宮城県蔵王町の「こもれび温泉」へ行ってきました。こちらは以前「ルビナスセンター」という名前で営業していましたが、一時休業の後、経営権変更の上で2009年12月に営業を再開しております。再開の報はかなり前から知っていたのですが、その後なかなか訪れる機会に恵まれず、先日ようやく訪問することができました。「ルビナスセンター」時代には1度利用していますし、営業再開後の様子もネットでチェックしていたのですが、先日訪問してみたら「あれれ?」と首を傾げたくなるポイントがいくつかあったので、その「あれれ?」な部分を今回レポートさせていただきます。


 
玄関で靴を脱ぎ、福助が出迎える廊下を進んで奥へ。この辺りは以前とあんまり変わらず。



帳場前の引き戸には料金と営業時間が貼ってありました。料金は450円。あれれ? 以前は400円でしたから、50円値上げしたんですね。営業時間もかつては夜11時までだったのに、今は8時で終了ですから、3時間短縮されたことになります。
この扉の向こう側には食堂コーナーの食券販売を兼ねた券売機が設置されていました。この券売機は以前には見られなかったかと思います。


 
食堂コーナーと休憩室。食堂ではおばあちゃんが一人でラーメンをすすっていました。帳場のおばちゃんが厨房での調理も兼務。なお休憩室は有料で一人400円ですが、午後4時以降は無料とのこと。以前の館内はもっとゴチャゴチャしていたように記憶しているのですが、今ではある程度整理されており、むしろ物寂しげな雰囲気すら伝わるほどです。


 
脱衣所入口にはルビナスセンター時代の分析表が掲示されたままです。
脱衣室内は表現の難しい妙な臭いが漂っていました。またコインロッカーは半分ほどが施錠できない状態でした。ドライヤーが無料で使えるのは嬉しいところ。



さて浴室へ。以前と変わらず、広々としていながらも所々が崩れかかっており、かなり草臥れていますが、あれれ? 木の浴槽なんてあったっけ? この目新しい木の浴槽を含め、浴槽は3つに分かれており、残り二つは以前からあるものを若干改造しながら転用しています。


 
湯口のお湯が直接注がれる木の浴槽は激熱でとても入れる湯加減ではありませんでした。そんな木の浴槽の激熱湯は浴槽縁の切欠から隣の槽へ、更にその隣へと一つの川のように順々に流れてゆき、そうして流れ落ちてゆく過程で徐々に冷めてゆくので、真ん中の槽ではやや熱い程度、そして一番奥の大きな槽では丁度良い湯加減となっていました。


 
洗い場にはシャワー付き混合栓が7基。以前はもっと水栓があったようですが、その半分近くは撤去されており、配管が封栓されている洗い場跡とおぼしき場所が浴槽の前に横たわっていました。洗い場にはシャンプーやボディーソープが用意されているものの、容器にはマジックで種別が手書きされていました。


 
木組みの新しい湯口からお湯が供給されているのですが、今回最大の「あれれ?」はお湯の質です。以前は緑色がかった黄土色に濁る、金気をも帯びる食塩泉でしたが、いま目の前の浴槽へ注がれているお湯は無色透明でほぼ無味無臭の、知覚面ではとても特徴の少ない単純泉のようなものだったのです。浴槽内では細かな土気色の浮遊物が見られましたが、これが湯の華なのかあるいは単なる汚れなのかは不明。お湯の投入量も浴槽からオーバーフローしてゆく量も多いので、いわゆる放流式の湯使いが実施されているのでしょうけど、濁った食塩泉が全然癖の無い無色透明の単純泉へ変貌するとは、まったく予想だにできませんでした。同じ源泉で短期にここまで泉質が激変することはないでしょうから、源泉井戸を変えたのだろうと思われます(まさか沸かした真湯を放流式で使い捨てるわけないでしょうから、お湯は温泉なんだろうと思います)。
営業再開後に訪れた温泉ファンの方のレポートを拝見する限りでは、再開後も濁り湯の食塩泉だったそうですから、無色透明のお湯に切り替わったのはつい最近のことではないかと思われます。もしかしたら震災が影響しているのかな。どちらのお湯が良いかという問題は、利用する人の好みによるので、あえてここで論じるつもりはありませんが、毎日の入浴にはむしろ癖の無いお湯の方がいいかもしれませんね。


ナトリウム-塩化物温泉 45.0℃ pH7.3 溶存物質7425.0mg/kg 蒸発残留物7567mg/kg
Na+:2286mg(82.55mval%), Ca++:306.2mg(12.68mval%),
Cl-:3776mg(87.68mval%),
(平成5年1月6日)

宮城県刈田郡蔵王町大字曲竹字河原前1  地図
0224-33-2445

10:00~20:00
450円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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明日の湯温泉

2012年05月18日 | 宮城県

5月連休の某日、仙台市泉区の人気温泉施設「明日の湯温泉」へ行ってきました。この日は朝から清々しい五月晴れとなり、近くのコンビニの駐車場から望む泉ヶ岳方面の山並みがとっても綺麗で、行政区分こそ仙台市ですが、とても市内とは思えない長閑で麗らかな風景が広がっていました。


 
温泉近隣の田圃は水を張ったばかり。田圃は空の色を映して真っ青に染まっています。もう少し経ったら田植えでしょうね。トタン板に囲まれた野菜の無人販売もあったりして、長閑なことこの上ありません。


 
温泉の斜前には馬頭観音や山神碑などの石碑類が固められた一画があります。おそらく周辺地域の区画整理に伴い、各地に点在していたものがここへ集められたのでしょう。その中に平成8年建立の「明日の湯温泉碑」を発見。湯神を祀って温泉の末永い湧出を祈るとともに、仁明天皇が湯元神を祀ったことにもちなんで、当地の湯神を湯殿神に合祀する、といった内容の碑文が刻まれていました。


 
馬頭観音や山神など全国で見られるものもあれば、出羽三山(月山・湯殿山・羽黒山)の碑などいかにも南東北らしい信仰も見られます。


 
さて本題の「明日の湯温泉」です。黄色い外壁が目立つ平屋の建物。裏手の駐車場はそこそこ広いので、駐車スペースで困ることはないでしょう。


 
暖簾を潜って玄関に入ると、正面の受付カウンターには恰も場末のスナックのママみたいな風貌をした恰幅の良いおばちゃんがデンとこちらを向いて座っています。おばちゃんのインパクトに若干たじろぎながらも、券売機で料金を支払って券をそのおばちゃんに手渡すと、おばちゃん曰く「一番風呂だよ」と教えてくれました。そうなのです。こちらのお風呂は人気があって、いつも混雑しているという情報を得ていたので、この時は朝一番に訪れたのです。
脱衣所は田舎の共同浴場を連想してしまう狭く質素な造りで、鏡台と洗面台が一体化した昭和の分譲住宅によく見られる出来合いの水回り、そして鍵が掛からない錆びたスチールロッカーなど、平成になってオープンした施設にもかかわらず、室内からはどこか昭和の面影が感じられます。


 
浴室は浴槽がひとつあるだけの、これまたシンプルな構造。浴槽は8人サイズで、縁を除いて全面タイル貼りです。一番風呂ですから先客ゼロ。悠々と湯あみできるぞ…と思いきや、数分もしないうちに次々と後客がやってきて、室内はたちまち4~5人の客で混雑し始めました。人気のほどが窺えます。



洗い場にはシャワー付き混合栓が4(もしかしたら5)基。カランから出てくるお湯は真湯。画像を撮り忘れてしまいましたが、浴槽と洗い場の境は腰高ほどの板で仕切られており、その板には油絵が描かれていました(何の絵だったかは失念。風景画たっだような気がしますが…)。


 
ライオンの湯口から源泉が注がれ、浴槽縁の切り欠けから溢れ出ています。加温加水循環消毒が一切ない、完全掛け流し。
浴槽サイズに対して源泉投入量が多いため、湯船に人が入るとザバーっお湯がオーバーフローして洪水状態になりました。お湯はタイルの色の影響なのかごく薄い黄色を帯びているようにも見えますが、実際にはほとんど無色透明なのかもしれません。味わってみるとマイルドながらしっかり舌に伝わる塩味が感じられ、口に含みっぱなしですとしょっぱさすら覚えます。また、塩味の他にも薄いダシ味や微金気味・弱芒硝酸味、そして非鉄系の金気臭や食塩泉によくある有機的な温泉臭も確認できました。
肌をさするとはっきり実感できるツルスベ浴感がとても気持ちよく、また40~1℃位の湯加減であるためにいつまでも長湯したくなる夢心地のお湯でした。ネット上で見られた温泉ファンのレポートによれば泡付きがすごいとのことでしたが、この時は汚れや湯疲れのない一番風呂だったにもかかわらず、泡付きはあまり確認できませんでした。泡付きの有無はお湯のコンディションによるのかもしれませんね。
いずれにせよ素晴らしいお湯には違いなく、地元の方々の人気を博すのは当然のこと、温泉ファンの評価が悉く高いのも十分頷けます。私個人としては、仙台市内にはあまり気に入った温泉がないのですが、ここだけは例外ですね。


ナトリウム-塩化物温泉 42.5℃ pH8.3 蒸発残留物3872mg/kg 溶存物質3938.9mg/kg
Na+:1293mg(89.11mval%),
Cl-:1912mg(85.74mval%), SO4--:375.2mg(12.42mval%),
HBO2:118.6mg

地下鉄泉中央駅より仙台市営バス10・11・12・13・15・16系統で「根白石デイサービスセンター入口」下車、徒歩1~2分
宮城県仙台市泉区根白石新坂上34-10  地図
022-376-7886

10:00~22:00
500円
ロッカー有料(10円)、シャンプー&石鹸あり、ドライヤーなし

私の好み:★★★
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麗しの埔里でのんびりサイクリング その2 (台湾中部)

2012年05月17日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず


前回記事のつづきです


●広興紙寮と愛蘭甘泉

埔里酒廠から中山路を西進し、街外れまで走ってきました。


 
水が清らかで自然も豊かな埔里は手漉き紙の産地でもあり、当地ではかつてから伝統的な手法による製紙業が盛んにおこなわれていたんだそうですが、現在は数軒が残るのみで、そのなかでもいまだに伝統手法にこだわっているのが「広興紙寮」。こちらでは手漉きの工程を間近で見学することができるらしいので、興味津々、訪問してみたのです。


 
紙の原料となる植物の数々、そして原料による紙の違いが展示されていました。この一帯ではマコモダケ・サトウキビ・バナナなど、いかにも繊維質がしっかりしていそうな作物が盛んに栽培されているため、こうした作物を紙にしているわけです。


 
繊維を煮て漂白してドロドロにしている工程。手作業でバケツへ移していますが、かなり熱そうです。


 
職人さんが紙漉きしている最中。日本和紙の紙漉きと同じような感じでしたが、漉桁の中の原料繊維を均し、桁からすあみを外してすあみから紙をはがしてゆくという職人さんの一連の工程には無駄な動きが全くなく、実にリズミカルで、見とれずにはいられませんでした。。日本だったら作業場と見学エリアの間に鎖が張られちゃいそうですが、こちらの工房では仕切りが一切無し、間近で(しかも無料で)作業の様子を見ることができるのです。


 
すあみから剥がして湿ったしわしわな紙にアイロンをかけて皺を伸ばしているところ。こちらの作業も華麗な腕捌きで、あっという間に一條の皺もない美しい紙が次々に出来上がってゆきます。素晴らしい職人技だ。



別途申し込めば手漉き体験ができるみたいです(今回はパスしました)。


 
敷地内には「埔里紙産業文化館」という資料館も併設されており…


 
館内では製紙の文化や特徴などが学べる数々の資料が展示されていました。


 
「広興紙寮」の前に可愛らしい店を発見。こちらは生チョコレートが売りらしく、試食させてもらいました。口の中でとろけちゃう生チョコはとっても美味。でもまだまだサイクリングしなきゃいけないし、持ち帰れないので、生チョコの購入は断念し、しぼりたてのオレンジジュースをいただくことにしました。



近所の路地には小規模な養蜂場があり…


 
ミツバチがせっせと蜜を運んでいました。自然環境が豊かですから、蜜集めには苦労しないでしょうね。


 
裏手には「愛蘭甘泉」と呼ばれる水汲み場を発見。紹興酒の甕の象ったタンクがあることからもわかるように、ここで湧く名水が埔里の紹興酒製造に使われてきたそうですが、この名泉を発見したのは日本統治時代(昭和期)の日本人なんだそうです。現在ではこの水を自由に汲めるようになっており、私が見学している時でも何人かがタンクやボトルに水を詰めて帰ってゆきました。



水汲み場の前には四阿があるので…


 
その四阿の下にあるベンチに腰かけて眼前に広がる田園風景を眺望。せせらぎの瀬音や小鳥の囀りが耳に優しく、日陰で周囲を木々に囲まれているため、外の厳しい日差しが嘘であるかのように涼しく爽快な微風が四阿の中を吹き抜けてゆきます。潤いのある景色と爽やかな環境に包まれ、気付けば1時間ほどここで微睡の世界へと誘われてしまいました。


●田園風景
 
埔里の北側の街外れ、中台禅寺(台湾の四大仏教の一つ中台の総本山)付近の平地には見渡す限り延々と田園風景が続いています。紙漉き場を後にした私は、あてもなくこの田園風景の中に紛れ込んでみました。途中の古びた集落には「建設社区 継続発展」という前時代的なスローガンが書かれた壁が残っていました。


 
民家の軒先に咲くブーゲンビリアが綺麗です。


 
埔里を周遊していて気付くのは、マコモダケの水田が非常に多いこと。この地の土地と豊かな水資源がマコモダケ栽培に適しているんだそうです。


 
あぜ道の両側に広がるマコモダケの水田。サイクリングしていると、常にどこからか農業用水が迸る潤いのある音が聞こえてきます。マコモダケは商品価値が高いからか栽培を希望する農家が多いそうでして、あぜ道の辻々には「土地を売ってください」の札が張られていました。



こちらはバラ栽培のビニルハウス。


 
ここも花卉栽培ですね。


 
これはパパイヤですね。実は青くてまだまだ堅そうです。


 
少数派ながらサトウキビ栽培も健在。

青々と伸びるマコモダケをはじめ、色とりどりの作物が数多栽培されているこの田園地帯では、豊かな水や緑が潤いみなぎる美しい景色を造り出しており、目に鮮やか、耳に心地よく、いくらこの景色を眺めていても全く飽きることがありません。旅に出たら時間の許す限り観光名所を巡りたくなるのが旅人の心情ですが、何も考えずに麗しい景色の中に身を紛れ込ませてみたら、ガイドブックには決して乗らないような場所であるにもかかわらず、有名な観光地よりも余程印象に残る時間が過ごせました。心の襞のひとつひとつまで綺麗に洗濯できました。



夜はバーで宿のオーナーさんと語らいのひと時。台湾ならではのバナナビールというものをいただきました。薄いビールにバニラフレーバーを混ぜただけのものですが、これも南国らしい味なのかも。

周囲を山に囲まれた埔里は、自然が豊かで風光明媚、おいしい農作物にも恵まれ、ちょっと離れれば温泉もたくさん存在しており、また各宗教宗派の信仰の中心地ともなっており、自然環境や時間の流れ方が感性豊かな人を惹きつけるのか、芸術家の方もたくさんお住まいなんだとか。日本で譬えるならば信州・長野県と非常によく似ているように思いました。

※長らく続けてきました台湾シリーズの記事も今回でひとまず終了。
次回から再び日本の温泉を取り上げてまいります。
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