温湯温泉から1.5kmほど黒石の市街地側へ西進した国道103号の旧道傍にある「長寿温泉」に立ち寄り入浴してまいりました。外壁はマスタード色、屋根のトタンは黒っぽいペンキで塗られており、「泉温寿長」という右書きの看板が目を引きます。
こちらは温泉銭湯としての営業がメインですが、旅館業も兼業しておりまして、この手の営業スタイルの銭湯は青森県でよく見られますね。私は2度目の訪問でして、前回は3年前に中野もみじ山の夜間ライトップを鑑賞した後に利用し、今回は黒石地区での湯めぐりの締め括りとして訪問させていただきました。今回の記事を書くにあたって温泉名を調べたところ、黒石にあるのに「西十和田温泉」という意外な名称であることが判明したのですが、まぁ確かに十和田の西かもしれませんが違和感は否めず、また長寿という抽象的な名称を冠する温泉施設は弘前にもあったりしますから、私個人としては名前を言われても、この温泉が思い当たらないのが悲しいところです。
ガラス張りの番台にて料金を直接支払います。その奥に広がっている休憩スペースには、長椅子やパイプ椅子などが置かれており、温泉というより古びた診療所の待合室みたいな雰囲気です。照明は必要最低限しか点いていないので、昼間に訪れても館内は薄暗いのですが、別段震災による節電を意識しているわけではないようでして、震災以前に訪れたときもこんな感じでした。
休憩スペースにはこの温泉の歴史を物語る写真が展示されていました。昭和28年に電気屋さんとして開業し、3年後にはガソリンスタンドの兼業を開始、昭和38年に温泉を掘り当てたようです。高度経済成長と軌を一にしながら事業を拡大していったんですね。
お風呂は公衆浴場と家族風呂の2種類を選択できますが、前回同様に今回も廉価な公衆浴場を選択しました。脱衣室と浴室はガラスで仕切られており、棚には大きな籠が用意されているので、衣類が嵩張る冬に利用しても荷物を楽に棚へ収容することができますが、ロッカーは4つしか用意されておらず、しかも有料ですから、その点はちょっと気になるところです。尤もこちらの利用客の多くは地元の常連さんですから、厄介な事件は発生しにくいんでしょうね。
浴室の中央には真円の浴槽がひとつ据えられており、それを囲むようにしてコの字形に洗い場の水栓が16ヶ所並んでいます。水栓は青森県の銭湯では標準的な、古典的押しバネ式のカランと固定式シャワーの組み合わせが採用されており、水栓から出てくるお湯は源泉使用です。
浴室内のスペースは公衆浴場として一般的か、それよりやや小ぶりなのですが、天井がとても高いために床面積以上の開放感が得られるのが面白いところ。女湯との仕切り塀上部には初雁を描いていると思しきガラスが立てられていました。
まん丸い浴槽の円周に沿って入れば12人は同時入浴できそうな容量があります。浴槽の縁から立ち上がっているレンガの出っ張りよりお湯が大量に注がれており、その出っ張りをかき分けるようにして、ザブザブと惜しげも無く浴槽から溢れ出ていました。また浴槽中央の底からもお湯が噴き上がっているのですが、これも源泉投入口のひとつなのか、あるいは単なる機械的な噴き上げ(ジェットバス的なもの)なのかは確認し忘れちゃいました。とにかく湯量は豊富であり、掛け流しの湯使いであることは疑いようもありません。
お湯はごく薄い山吹色の透明で、薄いアブラというか樹脂のような匂いを放ち、清涼感のあるほろ苦みと樹脂っぽい風味が感じられます。湯船の温度はちょっと熱めですが、ツルスベ浴感がとっても気持ちよく、入浴中は頻りに肌をさすってしまいました。泉質名は単純泉とのことですが、その特徴から推測するに、おそらく重曹型ではないかと思われます(でも館内に詳細なデータの掲示が無いので確認できず)。
古びて地味な佇まいにもかかわらず、豊富な湯量と廉価な料金ゆえか、地元の方から熱い支持を得ているようでして、前回訪問時も今回も浴室は大混雑しており、浴室内では爺様方が次々に仰向けになってトドを楽しんでいらっしゃいました。地元から愛される温泉って素敵ですね。
長寿温泉3号泉
単純温泉 48℃ pH8.43 250L/min
黒石駅より弘南バスの温川行・虹の湖公園行・大川原行で「中村」もしくは「毛内入口」バス停下車、徒歩2分
青森県黒石市下山形村下97-3 地図
0172-54-2228
6:00~22:00
200円
ロッカー(100円有料)・ドライヤー(50円有料)あり
私の好み:★★