温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

塩原 古町温泉 民宿本陣

2013年11月11日 | 栃木県
 
塩原温泉で湯めぐりをする場合、関東圏で生活している私はえてして日帰りで済ませてしまうのですが、先日は古町温泉の「民宿本陣」で一泊し、現地でゆっくり過ごすことにしました。国道400号に沿った源三窟の手前に立地しており、ここにはかつて真田家の別邸があったそうです。こちらのお宿は民宿を名乗っていますが、たしかに規模こそ民宿かもしれませんが、あらゆる面で本格的な旅館レベルに匹敵しており、結果的に高い満足度が得られました。ではどんなお宿なのか、具体的に見ていきましょう。まずはお部屋とお食事から。


●客室・食事

玄関に入ると大女将がとても丁重に対応して下さいました。現代人と昔の方とは、良し悪しの両面であらゆる相違点が見られますが、明らかに現代人が身につけていない点としては、伝統的な日本に息づいていたはずの丁寧なお辞儀かと思います。大女将から学ぶ所はとても大きく、所作の一つ一つが深く印象に残りました。

今回通された客室はお風呂から近い「梅の間」でして、贅沢にも10畳の和室を独り占めです。お部屋には既にふかふかの布団が敷かれており、すぐにでもゴロンと横になることができました。建物はそれなりに経年しているのでしょうけど、それを全く感じさせないほど丁寧にメンテナンスされており、お部屋の中も隅々まできちっと清掃されていて、文句につけようがありません。トイレや洗面台は共用であり、備え付けの冷蔵庫もありませんが、テレビやエアコン・ヒーターは完備されており、快適に過ごすことができました。


 
18時から別室にて夕食をいただきます。卓上に用意されていた前菜はホタテ・サワラ・長芋揚げ・鴨肉、きのこの和物、そしてお刺身(サーモン・ホタテ・甘エビ)です。私が座布団の上に落ち着くと、できたてのトマトソースのグラタンが、そして一呼吸おいてから天ぷらが届けられました。


 
鮎の塩焼きや豚肉のソテーもアツアツのできたてが提供されます。今回の宿泊に際して、私はお宿のHPから予約したのですが、この方法で予約をしますとワンドリンクサービスを受けることができるので、ここでは肉料理に合わせるべく赤ワインをチョイスしました。
どの料理も家庭的な献立ながら上品な味付けで、美味しさにつられてついついごはんのお櫃を空にしてしまったほどでした。



こちらは朝食。シャケ・豆腐・納豆・海苔という、典型的な日本旅館の朝食メニューの他にオムレツやウインナーなども添えられており、和洋折衷といった内容です。朝からたっぷりいただいて一日のパワーを養いました。


 
さて、肝心のお風呂へと参りましょう。
浴室は2室あり、一応男女別となっていますが、入口に札をさげて貸切利用ができちゃいます。この晩の宿泊客は私一人だけでしたので、心置きなく両方を利用させてもらいました。まずは自分の性別に従って男湯から。


●男湯
 
2つある浴室のうち右手が男湯です。民宿にしては脱衣室がそこそこ広く、明るくて清潔です。棚の上には古い扇風機が置かれており、湯上がりはこれを回してクールダウンしました。
浴室も構成こそシンプルで浴槽一つにカランが2つあるばかりですが、隅々まで徹底して清掃が行き届いており、文句のつけようがないほど綺麗で清潔です。築後10年近く経っているようですが、そんな経年を全く感じさせません。今回私は宿泊で利用したわけですが、こちらは300円で日帰り入浴することもできるわけで、わずか100円玉3枚でこんなに綺麗なお風呂に入れるとは本当に驚きです。入念なメンテナンスに敬服するばかりです。

上述のように洗い場にはカランが2基設置されており、うち1つはシャワー付きで、お湯のコックを開けると源泉が出てきます。



浴槽は3人サイズのポリバスなのですが、単なるポリバスと侮るなかれ、長年による温泉成分の付着によるものか、元々のバスタブの色はグレーだったと想像されるのですが、まるで鍍金加工を施したかのように、FRPとは思えない独特の光沢を放っており、特にお湯が常時触れている浴槽内部はすっかり赤銅色に染まっていました。浴槽の隅っこには鍾乳石のような軽石が置かれ、そこから常時源泉が投入されて、絶えること無くバスタブからオーバーフローしていました。そして、湯船に私が入ると、サバーっと豪快に音を立てながら勢い良くお湯が溢れ出ていきました。


●女湯
 
続いてお隣の女湯にも入ってみました。入室前にちゃんと「貸切り入浴中」の札をぶら下げておきます。


 
こちらの浴室は、室内空間も浴槽も一回り小さなものですが、洗い場にはお隣同様にカランが2基あって、うち1基がシャワー付きとなっており、源泉のお湯が出ることは共通です。


 
こちらの浴槽はクリーム色のポリバスで、やはり温泉成分の付着によって薄っすら紅をさしたように染まっていました。この槽の色ゆえか、お湯の中に舞う浮遊物やお湯自体の色がよく目立っていました。

お湯の色が「よく目立ってい」ると申し上げたところでこちらのお湯のインプレッションを述べますと、その色はごく薄い麦茶色の透明で、湯中には茶色やコゲ茶色の浮遊物がチラホラ見られます。泉質名こそ単純泉ですが、溶存物質が0.975g/kgですからギリギリのところで単純泉という名称に甘んずるを得ない状況となっているわけで、主たる成分は重曹と食塩でありますから実質的には「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉」と同等であり、とりわけこのお湯では重曹の特徴がよく出ており、お湯に入るとツルツルスベスベの気持ち良い浴感に包まれ、30秒ほどで全身に気泡が付着しました。完全かけ流しですが、加温や加水をせずとも42~3℃という絶妙な湯加減が維持されており、爽快な浴感とともにこの温度も自然も恵みと言えましょう。お湯からは鉱物油的な匂いと新鮮金気臭、そして金気味と重曹的ほろ苦みに微かな塩気が感じられ、湯口やシャワーからはこれに加えてほんのりタマゴ感も得られました。

モール泉にも似た重曹泉らしい軽やかな浴感と香り、マイルドで上品な肌触りの良さ、そして湯使いの良さ、いずれも素晴らしいものがあり、余多ある古町温泉エリアのお湯でも屈指ではないかと思われます。源泉名こそ隣接する大規模ホテルの名称を冠していますが、源泉自体はこちらのお宿の敷地内になるんだそうでして、贅沢な湯使いができるのもそんな事情のおかげなのでしょう。本格旅館並みのホスピタリティと素晴らしいお湯によって、ブリリアントな一晩を過ごすことができました。しかも料金は民宿並でとってもリーズナブル。今回は次回以降の記事で紹介する目的のため、どうしても当地で一泊したかったのですが、そんな事情の如何を問わず、日帰りせずに宿泊して本当に良かった! 


紀州鉄道塩原温泉源泉
単純温泉 46.8℃ pH7.5 186.8L/min(掘削自噴) 溶存物質0.975g/kg 成分総計0.996g/kg
Na+:196.9mg(79.93mval%), Ca++:25.8mg(12.03mval%), Mg++6.4mg,
Cl-:135.2mg(35.01mval%), HS-:0.2mg, SO4--:55.9mg(10.68mval%), HCO3-:357.3mg(53.74mval%),
H2SiO3:157.0mg, HBO2:26.5mg, CO2:20.5mg, H2S-:0.1mg,

塩原温泉バスターミナルより徒歩9分(800m)
栃木県那須塩原市塩原1055  地図
0287-32-2043
ホームページ

日帰り入浴時間要確認
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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塩原 古町温泉 東や

2013年11月10日 | 栃木県
 
前回取り上げた塩原古町温泉の「やまなみ荘」から至近にある「東や(あずまや)」でも日帰り入浴してまいりました。看板に「毎分225Lの源泉100%」と書かれているように、こちらは湧出量豊富な自家源泉をしっかりかけ流していることを誇りにしているお宿です。


 
玄関に入った瞬間は、館内の雰囲気から察して「あれ?ここって下足のままで良いの?」という不安に駆られましたが、帳場の方に下足のままで入館してよいことを確認してから、その帳場で料金を支払い、カウンターの左手にさがっている暖簾を潜って浴室エリアへと進みました。暖簾の向こうには手書きの看板が立てられており、お湯の中に黒砂が出ているけれども、それはマグネシウムなので心配ご無用という旨が説明されていました。最近はちょっとした湯の華が舞っていても「掃除が行き届いていない」と勘違いしてクレームをつける無粋なお客も多いそうですから、このような説明は不可欠なのでしょうね。


●浴室
 
浴室ゾーンには、帳場側から女湯(内湯)、露天風呂、家族風呂、男湯(内湯)という順でそれぞれの入口扉が並んでおり、日帰り入浴でも各内湯や家族風呂、そして露天風呂が利用できますが、全部入浴していたら体が完全に茹であがってしまいそうでしたので、今回は男湯(内湯)と露天風呂の2湯を利用することにしました。まずは内湯から入ってみましょう。
家族風呂と並んで男湯の暖簾が下がっています。渋い佇まいの脱衣室は、建物の外観同様、経年劣化による疲労感が全体から滲んでいるようでした。棚のひとつにはお客さん用のアメニティー(カミソリ)が籠に収められているのですが、同じ棚にはトイレットペーパーも置かれており、せっかくのお客さんへのサービスも艶消しになっているようで残念でした。


 
浴室もかなり疲れており、壁や天井に残るシミ汚れやコケが目につき、洗い場の上を覆うサンルーフには落ち葉などによる汚れがこびりついていて、浴室全体にそこはかとない寂寥感が横溢していました。大きな建物を作ってしまうと、それを維持してゆくことがいかに大変であるかを窺えます。洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設置されており、お湯は源泉が出てきますが、水栓金具の経年劣化のためか、吐出圧力はやや不足気味…。


 
この浴室は崖(山)側からせり出ている巨大な岩が印象的であり、その巨岩を仰ぐようにして大きな浴槽が据えられています。巨岩は右側の一部が削られていて、そこではお湯が滝のような感じで浴槽へ垂直に落とされていました。


 
タイル貼りの浴槽には仕切りこそ無いものの、実質的には途中で折れている箇所で浅い部分と一般的な深さの部分とに分かれており、前者は3~4人サイズ、後者は7~8人サイズです。温度調整のためホースから若干の水が加えられていますが、加温循環消毒は一切無い完全かけ流しと言っても差し支えない湯使いであり、湯船を満たしたお湯は、浴槽の一番左隅にある切り欠けから溢れ出ていました。この切り欠けにはブロックが挿し込まれており、このブロックを抜いたり嵌めたりすることで、排湯量を調整することができます。この他、隣の浴室、つまり家族風呂とこちらを隔てる壁には穴が開いており、両室の浴槽ではお湯が貫通しているようです。


●家族風呂
 
家族風呂は今回利用していませんが、この時はどなたも利用していなかったので、見学のみさせていただきました。利用の際は入口にかかっている札を裏返して「入浴中」を表示させておきます。


 
男湯の内湯を3分の1にダウンサイズしたような造りをしており、こちらでも室内にせり出ている巨岩がインパクトを伴って入浴客に迫ってきます。洗い場にはカランが2基あり、こちらでもお湯のコックを開けると源泉が出てきました。湯船を見ますと、さきほど男湯で見つけた穴があいており、男湯側とお湯が貫通していることを確認できました。


●露天風呂

続いて、内湯から一旦着替え、露天風呂へ。


 
露天専用の勝手口より屋外に出て、つっかけに履き替えて宿の裏山に登る通路を歩きます。
ジグザグ状の階段を上がってゆくと、緑色の暖簾が掛かる東屋にたどり着きました。



こちらの露天風呂は上下の2段に分かれており、上下段とも特に男女の区別はなされていない混浴です。緑色暖簾の東屋の前には下段の湯船が設けられています。下段は7~8人サイズといったところ。


 
一方、階段を更に上がったところが上段の湯船で、こちらは下段よりはるかに大きな14~5人サイズ。上段の湯船からはお宿の建物越しに塩原の山々が眺望でき、景色を眺めながら湯浴みを楽しむことができますが、この時は下段の方がお湯が良かったように感じられたので、敢えて景色の面では劣る下段で入浴することにしました。内湯では若干の加水がありましたが、外気による自然冷却が期待できる露天では加水も無い完全かけ流しであり、お湯が持つ特徴を存分に味わうことが出来ました。

そのお湯はごく薄い麦茶のような色を呈しており、重炭酸土類泉的な味や匂いと共に、モール泉的な鉱物油臭や新鮮金気の味と匂いも含まれていますが、モール感よりも金気感の方が優っているように感じられました。ツルスベ感は想像していたよりは弱く、泡付きもあまり見られませんが、お湯へ入った時に得られる鮮度感は良好であり、絶妙な湯加減と相俟って、入浴中はいつまでも浸かっていたくなるような心地よさに包まれました。

林の中という環境なので露天入浴中にはやぶ蚊の猛襲に遭ってしまいましたが、季節を選べば森林浴と温泉入浴という相乗効果が期待でき、爽快な湯浴みが楽しめるかもしれませんね。


あづまや源泉
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 54.9℃ pH7.4 225.0L/min(動力揚湯) 溶存物質1.471g/kg 成分総計1.530g/kg
Na+:317.0mg(83.73mval%), Ca++:30.0mg(9.10mval%), Mg++:6.9mg(3.45mval%),
Cl-:181.9mg(30.90mval%), HS-:1.1mg, SO4--:67.5mg(8.47mval%), HCO3-:609.2mg(60.13mval%),
H2SiO3:204.2mg, HBO2:28.4mg, CO2:58.7mg, H2S:0.5mg,
加水加温循環消毒なし

塩原温泉バスターミナルより徒歩9分(650m)
栃木県那須塩原市塩原町下塩原1548-1  地図
0287-32-363
ホームページ

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類あり、ロッカー・ドライヤー見当たらず

私の好み:★★
コメント (2)
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塩原 古町温泉 やまなみ荘

2013年11月09日 | 栃木県

9月の某日、約4年ぶりに塩原の古町温泉にある「やまなみ荘」で立ち寄り入浴してきました。



玄関では熊の剥製がお出迎え。前回訪問時は露天風呂のみの利用でしたが、この日入浴をお願いすると内湯のみ利用可とのことでしたので、露天は諦めて内湯へと向かいました。


●内湯
 
真っすぐ伸びる廊下を歩いた一番奥の突き当りの左右が浴室で、右手に男湯の暖簾がかかっていました。脱衣室は至って簡素ですが、洗面台・ドライヤー・扇風機など一通りのものは揃っています。扉の向こう側(つまり浴室)からは勢いの良い水音が響き、その音を耳にすると期待に胸が膨らみます。


 
浴室は2方向がガラス窓となっており、外光がふんだんに降り注ぐ室内は照明無しでも明るい環境です。窓からは国道400号を走る車の姿が見えます。訪問時は窓が全開だったためか、室内に湯気の篭りが無くて快適でした(が、すぐ隣りのトイレからカラーボールの匂いが漂ってくるのはご愛嬌…)。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置されています(水栓から出てくるお湯は真湯です)。


 

湯口からはドバドバ音を轟かせながらお湯が吐出されていました。この音が脱衣室へと響いていたわけですね。湯船からはお湯が惜しげも無く豪快に溢れ出ており、浴槽や床など、温泉が触れるところは鍍金されたように銅色に染まって輝いています。

浴槽は10~12人サイズで、コンクリ造かと思いきやれっきとした木造であり、底も板敷きで、縁の材木には年輪が浮かび上がっていました。湯口の岩には温泉成分による析出のトゲトゲが現れています。お湯は薄い麦茶色を呈した透明、茶色の浮遊物があり、入浴するとその沈殿が若干舞い上がります。芳醇で香り高いモール的な匂い、新鮮金気の匂いおよび味、重炭酸土類泉的な味、重曹的なほろ苦み、鉱物系アブラ臭が感じられました。味は重炭酸土類泉的ながら、匂いはモール系およびアブラ系の組み合わせという、面白い特徴を有しています。
お湯の鮮度感が素晴らしく、湯加減も適温、重曹泉らしいツルツルスベスベ浴感がとっても気持ちよく、湯船に浸かると30秒もしないうちに肌には気泡が付着し、入浴中はいつまでも湯に浸かり続けていたくなるような心地よさに包まれました。そして湯上がりの爽快感も素晴らしいものがありました。


●露天風呂

上述のように今回は露天風呂へ入れなかったのですが、せっかくですから、いままでお蔵入りしていた前回利用時(4年前)の画像を引っ張りだして、今回紹介させていただきます。露天風呂の様子は今でもほとんど変わっていないものと思われます。


 
玄関外の右手にある階段を下りて露天風呂へ。


 
男女別の露天風呂は脱衣エリアと入浴ゾーンが一体となっているタイプで、目の前に国道が横切っているため、周りを塀で囲まれてしまい、残念ながら景色を眺めて湯浴みを楽しむことは出来ませんが、やや熱めながら爽快感のあるお湯を浴びてから、火照った己が体を外気に晒すと、爽快感がより一層強調され、何度でも入ったり出たりを繰り返したくなります。
前回・今回とも、日帰り入浴をお願いした際に受けた、宿のお婆ちゃんの突っ慳貪な対応に若干心が折れそうになりましたが、お湯の良さは間違いありませんので、雰囲気よりもお湯重視の方には合うかもしれません。


やまなみ源泉
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 55.9℃ pH7.1 蒸発残留物1195mg/kg 成分総計1662mg/kg
Na+:340.1mg, Ca++:28.4mg, Mg++:10.4mg,
Cl-:201.3mg, SO4--:56.3mg, HCO3-:692.9mg, HS-:0.2mg,
H2SiO3:209.1mg, HBO2:21.4mg, CO2:70.1mg, H2S:0.2mg,

塩原温泉バスターミナルより徒歩8分(600m)
栃木県那須塩原市塩原2566  地図
0287-32-3962

10:00~16:00
500円(1時間以内)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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会津高原温泉 夢の湯

2013年11月07日 | 福島県
 
関東地方から会津南部へ車でアクセスする際、近年は白河から甲子トンネルが使えるようになって利便性が格段に向上しましたが、開通以前は東北道の西那須野塩原インターから下道を走って塩原温泉郷を通過し、あるいは鬼怒川や川治温泉を北上し、国道121号で山王トンネルをくぐって田島方面へ抜けるのが一般的でした。そのルートを辿って更に奥の檜枝岐や旧舘岩村などへ向かおうとすると、必ず目の前を通り過ぎるのが今回取り上げる「夢の湯」であります。国道沿いのわかりやすい立地であり、道からは露天風呂の看板も見え、その好立地ゆえに下山後のハイカーが汗を流すお風呂としてもよく利用されています。私個人としては2回目の利用となります。



下足場左のカウンターで料金を支払い、踊り場に温泉櫓の写真が飾ってある階段で、お風呂のある階下へ向かいます。ボーリングして温泉を掘り当てたときのオーナーさんは、まさに夢を見ているかのような心境だったことでしょう。


 
階段を下りてすぐのところには故障中の自販機があり、その奥に10円リターン式コインロッカーが設置されています。脱衣室内にはロッカーが無いので、貴重品はこちらへ預けましょう。



ドライヤーも脱衣室内には用意されていませんが、浴室とは別個に設けられている洗面所で使用することができます。
お風呂は男女別の内湯と露天風呂がありますが、まずは内湯から入ってみましょう。


●内湯

脱衣室はあまり換気がよろしく無いのか、入った途端にムワッとした熱気に包まれ、扇風機から送られてくる風は生ぬるいものでした。訪問したのは夏真っ盛りの某日だったので、その暑さが籠っていたのかもしれません。壁には、入浴15分後にドロドロ血液がサラサラになったという当温泉の効能がアピールされていましたが、これを信じるかどうかは貴方次第。


 

浴室は荒海川に向かってガラス張りとなっており、その窓からは清流や対岸に広がる田園風景が眺められます。浴槽は12~3人サイズで、湯口の岩には成分の析出らしきトゲトゲが付着していました。なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設けられています。

前回こちらを利用したのは8年ほど前でして、お風呂の様子はその当時とあまり変わっていないように見受けられましたが、さすがに時間の経過には抗えないのか、細かく観察するとあちこちで疲労が現れている点は否めず、天井や壁などのシミは勿論のこと、洗い場の水栓には青錆が出ており、吐出圧力にも元気が見られませんでした。そして、源泉100%のお湯であることも以前と同様ながら、以前はお湯がドバドバ投入されて洗い場には洪水の如くお湯が溢れ出ていたはずですが、この日は投入量が以前よりも少なく、オーバーフローも大人しくなったような感がありました。夢はいずれ覚めてしまうという暗示なのでしょうか。

とはいえ、れっきとしたかけ流しのお湯であることには間違いなく、見た目は無色透明ながらごく僅かに白く靄がかかっているように見え、湯口のお湯を口にすると弱タマゴ味と石膏甘味や芒硝味、そして弱タマゴ臭と芒硝臭が感じられました。また湯船の中で肌を擦ると、ツルスベ浴感の中に弱い引っ掛かりが拮抗していました。湯口から吐き出されるお湯は適温になったりぬるくなったりと、温度の上下を繰り返していましたが、これって源泉のコンディションによる問題なのか、あるいは自動的に適宜温度調節しているのか、その辺りの事情はよくわかりません。


●露天風呂
 
受付から階段を下りてすぐ右側が内湯でしたが、反対側の左へ折れ、廊下をまっすぐ歩いた突き当りには勝手口があり、そこから更に屋外を奥へ進むと露天風呂が設けられております。ネット上の情報を拝見しますと、この露天風呂は最近ご機嫌が宜しくないらしく、故障中で利用できなかったという記事も散見されるのですが、この日は2つある露天のうち1つだけ開放されており(もう一つは修理中)、混浴で「良かったらどうぞ」とのことでしたので、とりあえず様子を見てみることにしました。


 
勝手口でつっかけに履き替えてステップを下り、ワンちゃんがいたり、洗濯物が干してあったりと、実に生活臭が強い民家の軒先のようなところを抜けてゆきます。


 
露天風呂の手前には波板やコンパネで囲まれた源泉井戸と思しき設備があり、そこには手書きで「源泉毎分200L」と書かれていました。


 
またその設備からはホースが伸びており、ホースの先からはお湯がチョロチョロとつくばいへ落とされていました。余り湯なのでしょうね。


 
川を臨む開放的な露天風呂です。前回利用時は多くのお客さんで賑わっていたように記憶しているのですが、露天の存在に気づいていないのか、はたまた混浴であることが敬遠されているのか、今回は私の他に誰もいらっしゃらず、ひたすら独占することができました。屋根にはランプが吊り下げられているのですが、日が暮れたらこのランプが灯されるのかもしれません。



お風呂の手前には脱衣スペースがあるのですが、おもいっきり外から丸見えでして、混浴とはいえ女性の方には厳しい環境下もしれません。画像からも伝わるかと思いますが、屋根や囲いなど、この露天風呂は実にDIY感に満ちています。


 

露天の岩風呂は荒海川の川岸すぐ上に設けられており、湯船から溢れ出たお湯は、浴槽の縁から川へ落下してゆきます。対岸からは見られやすい立地ですが、メッシュ状の木柵によって眺望が妨げられない程度に目隠しされています。


 
湯船に人が入らない時など、普段は浴槽縁から溢湯することなく、湯面ギリギリのところに突き出ているオーバーフロー管(画像中央に写っている、浴槽縁に触れている管)からホースを通じて川へ排出されています。

湯船自体はモルタル造ですが、お手入れがいまひとつのようでして、底にはうっすらと苔が生えており、ちょっとしたヌメリも発生していました。しかしながら源泉井戸のすぐそばという環境ゆえか、お湯は内湯よりもはるかに鮮度感が優れており、匂いや味などもはっきり現れ、湯中では細かな気泡の付着も確認できました。また湯加減も41~2℃と心地良い塩梅に維持されていましたので、渓流と周辺の長閑な景色を眺めながら、じっくりと良泉を堪能させてもらいました。尤もこの内湯と露天におけるお湯の違いは、源泉井戸との距離差もさることながら、内湯は利用客が多くてお湯が若干鈍っていたことが大きな要因だったように思われます。



露天風呂に入浴中、対岸の彼方を横切る野岩鉄道の線路を、会津鉄道のディーゼルカーが、田島方面へ向かって走り去っていきました。この温泉は駅からも近いので、鉄道旅行の際に利用できるのが嬉しいですね。


単純温泉 43.0℃ pH8.2 200L/min(動力揚湯) 溶存物質939.5mg/kg 成分総計939.5mg/kg
Na+:193.4mg(58.48mval%), Ca++:114.9mg(39.85mval%),
Cl-:359.3mg(69.14mval%), HS-:0.3mg, SO4--:158.4mg(22.53mval%), HCO3-:66.0mg(7.37mval%),
H2SiO3:14.1mg, HBO2:24.0mg,

会津高原尾瀬口駅より徒歩7分(500m)
福島県南会津郡南会津町滝原字向熊久保1373-1
0241-66-3131
ホームページ
(ホームページには日帰り入浴の割引券がありますよ)

10:00~20:00
500円
ロッカー(10円リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★
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古町温泉 赤岩荘 2013年夏 再訪

2013年11月06日 | 福島県
 
奥会津の山間なのに塩辛い温泉に入れる古町温泉「赤岩荘」へ再訪しました。拙ブログの初期にも取り上げております(前回の記事はこちら)。トマト栽培のビニルハウスがたくさん並んでいる旧伊南町エリア(現南会津町)の伊南川畔にあり、国道401号沿いには看板も立っているので、近くまで行けばカーナビ無しでも迷わずたどり着けるでしょう。



お菓子などの食品類が陳列されている窓口は食堂の受付も兼ねているようです。この時はちょうど調理に取り掛かろうとしていたスタッフさんに声をかけて料金を支払ったのですが、600円という料金設定にちょっとビックリしちゃいました。あれれ?そんなに高かったっけ? そう不思議に思って過去の記録を調べたら、前回訪問時も同額でした。600円のうち150円は入湯税なんだそうですが、150円って一般的には宿泊利用時の課税額ですよね。入湯税の課税額は市区町村が各自で決められるので、南会津町がそう決めているなら仕方ありませんが、一時利用と宿泊利用で税額を区分している自治体もたくさんありますから、懐具合が厳しいのは重々承知ですが、南会津町の役場や議会の皆さん、どうか外来者が利用しやすい税額へ改訂してもらえませんか…。


 
前回訪問時と同様、館内の休憩室(お座敷)前には温泉を掘削した地層の図説や地質標本が展示されていました。地下700mに分布する花崗岩層から53℃のお湯を毎分152リットル汲み上げているんだそうです。


●内湯

お風呂は内湯と露天がありますので、まずは内湯から入ってみました。


 
室内にはシャワー付き混合水栓が2基設置されており、6人サイズの浴槽がひとつ据えられています。一見するとごくごく普通の内湯に見えますが、画像に見切れている赤茶色に染まった床がただものではないことを伝えていますね。


 
バルブが取り付けられた温泉の配管は湯面下へ潜り、槽内でボコボコと音や泡を伴いながらお湯を吐出しています。バルブを少しでも開けるとボコボコと勢い良く出て、間欠的にドカンと噴き上がるので、はじめのうちはその勢いにビックリしちゃいました。
このお湯は50℃以上ある100%源泉でして、お湯だけですと熱くて入れませんから、バルブで投入量を加減したり、加水するなどして、各自で湯加減を調整します。この時は先客のお爺さんが絶妙な温度に調整してくださったお陰で、何の面倒も無く入ることができました。

前回の記事でも紹介しましたが、こちらのお湯は金気と塩気の濃さが特徴的でありまして、お湯を口にすると塩辛い味と赤錆系の金気味で口腔内が占められ、金気臭や僅かな硫化水素っぽい匂いが、そして少々の土気も含まれているように感じられました。また見た目については、若干緑色を帯びた黄土色に濁っており、底は目視できませんが、ステップの石板の目地は確認できる程度の透明度を有していました。
湯使いはれっきとした放流式であり、縁から溢れ出たお湯は床を流れてゆく間に析出を形成し、浴槽周りの広範囲にわたって千枚田のような細かいデコボコができあがっていました。


●露天風呂
 
露天風呂を利用するには一旦着替えて内湯を出て、廊下を歩いて奥へと歩きます。


 
露天風呂の脱衣所は掘っ立て小屋然としており、棚にカゴが置かれているだけの至って質素なものですが、ちゃんと扇風機やドライヤーが用意されており、観光で利用する外来者のニーズにしっかり応えていました。


 
露天風呂は比較的広いスペースが確保されているものの、周りを目隠しの塀で囲っているため、伊南川両岸に連なる山の稜線は眺められますが、周囲の景色を楽しむことはできません。塀の中の小さな庭に二分割された岩風呂風の浴槽が据えられているような造りです。なお露天風呂にも洗い場があり、シャワーには凍結防止の電気ヒーターが巻きつけられていました。ということは豪雪に埋もれる真冬でも、この露天のシャワーを使うってことか?


 
上述のように浴槽は二分割されており、露天におけるお湯は女湯との仕切りの間にある湯口から男女双方へ分配されながら奥側の槽へ落とされ、そこから手前側の槽へ流れ、そして手前側槽の縁より脱衣室下への排水口へ向かって溢れ出しています。石積み投入口の湯は加水されていない50℃以上の源泉100%ですから、そのお湯が直接落とされている湯口側(奥)の槽ではあまりの熱さゆえに入浴が躊躇われましたが、奥側からのお湯を受けている手前側浴槽のお湯は良い塩梅に自然冷却されて適温となっていました。

湯口が石を伝って落ちてゆく流路は赤黒い鱗状の析出が形成されており、お湯が湯面に落ちるところでは泡立っています。内湯と同じ源泉を利用しているはずですが、外気に触れて鉄分が酸化するためか、内湯と異なって赤みが強く、濃い赤銅色あるいはブラッドオレンジジュースのような色に強く濁っています。味や匂いは内湯とほぼ同様ですが、酸化が進んでいるためか赤錆感は露天の方が明瞭に現れているようでした。

濃い食塩泉ですから、長湯は禁物ですし、湯上がりも相当火照っていつまでも汗が引きません。お湯の凶暴さは会津随一でしょうね。厳冬期に入ればいつまでもポカポカが持続することでしょう。濃厚なお湯を屋内と露天で存分に楽しめ、しかもコンディションによってお湯の状態が異なることを体感できる、実に面白い温泉です。


ナトリウム-塩化物温泉 53.1℃ pH6.5(※) 152L/min(動力揚湯) 溶存物質15790mg/kg 成分総計15900mg/kg
Na+:5103mg(84.92mval%), Mg++:115.4mg(3.64mval%), Ca++:472.8mg(9.02mval%), Sr++:24.5mg, Fe++:4.3mg,
Cl-:8520mg(91.53mval%), Br-:21.6mg, I-:2.7mg, SO4--:320.4mg(2.54mval%), HCO3-:922.6mg(5.76mval%),
H2SiO3:19.4mg, HBO2:98.4mg, CO2:110.0mg,
(※)実験室における数値

福島県南会津郡南会津町古町太子堂186-2  地図
0241-76-2833
ホームページ

9:30~20:00 水曜定休
600円(うち150円は入湯税)
ロッカー(100円)・シャンプー類(内湯のみ)・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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