温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

舟唄温泉 老人福祉センター 柏陵荘

2014年05月26日 | 山形県
 
海から離れた内陸地でも驚くほど塩辛い温泉に遭遇することがありますが、今回はそうした温泉のひとつである山形県大江町の舟唄温泉で入浴してまいりました。舟唄温泉は「道の駅おおえ」と最上川に挟まれた一角に位置しており、外来者は温泉入浴施設「テルメ柏陵」を利用するのが一般的なのですが、同じ敷地内にある老人施設施設「柏陵荘」でも同じ源泉のお風呂に入ることができ、個人的には以前「テルメ柏陵」を利用したことがあったので(拙ブログでは紹介していませんが)、今回はその手前にある「柏陵荘」を訪うことにしました。


 
下足場左側の窓口前に立っている券売機で料金を支払い、事務室の窓口に券を差し出します。館内はいかにも昭和の建物らしい地味な雰囲気なのですが、地元密着型の施設らしく、事務室近くには食品類がたくさん陳列されていました。


 
館内中央の小さなホールに置かれている長椅子で自由に休憩できますが、別途料金を支払えば休憩のお座敷も利用できるんだそうです。その有料休憩室の鴨居にはなぜか力士のサイン色紙が写真とともに並べられていたのですが、私の訪問時には障子の向こう側から爺さん婆さんがドンチャン騒ぎする声が聞こえてきました。


 
賑やかなのはお座敷だけでなく、お風呂も多くのお客さんで混雑していました。人気があるお風呂なのですね。爺様達の間をすり抜けながら棚の前に立ったのですが、脱衣室に設けられている棚は一つ一つが妙に小さくて、室内に用意されている白いプラ籠が収まらず、籠を使うお客さんは棚に収めず床へ置きっぱなしにしていました。せっかく棚がたくさんあるんですから、有用に活用できるようにすれば良いのに…。


 
浴室には手前側に洗い場が、奥に浴槽が配置されていました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が10基設置されており、洗い場まわりにはヒマワリの絵がプリントされたタイルが用いられていまhした。一方、無機質で地味な館内でありながら、浴槽付近では伝統的な湯屋のような意匠が取り入れられており、天井は高く、木材の柱や梁はむき出しになっていました。


 
タイル貼りの浴槽「木造りの湯」は10~11人サイズといったところで、「源泉100%かけ流しです」と誇らしげなプレートが載せられている湯口からお湯が注がれており、湯加減はちょっと熱めの43~44℃くらい、浴槽名の由来になっている木の縁から絶え間なくオーバーフローしていました。槽内に吸引や供給のための穴は見当たらなかったので、掛け流しの文字に偽りは無いでしょう。
湯船のお湯は暗めのエメラルドグリーンを帯びた透明です。もしかしたら槽内のタイルの影響でそのような色に見えているのかもしれません。湯中では黒く小さな湯の華が舞っており、湯船に浸かりながら底へ手をつくと指先には硫化鉄と思しき黒いものが付着しました。


 
浴室内にはもう一つ、奥の方に「展望風呂」と称する浴槽もあるので、続いてそちらへ移動してみました。一見すると露天風呂っぽいのですが、四方をガッチリ囲われている内湯同然の造りであり、サッシや壁から侵入してくる冷たい隙間風が、辛うじて露天風呂にいるような気分を醸し出していました。

こちらは岩風呂(底面は鉄平石敷き)となっており、キャパシティとしては「木造りの湯」より一回り小さい位でしょうか、名前が示すように窓からは雪景色の最上川が眺められました。晴れている日には彼方に月山や葉山も眺望できるんだとか。
窓際の湯口からお湯が落とされており、その流路は白く染まっていました。ちょっと熱めの「木造りの湯」と対照的に、こちらは40℃前後のぬるめに設定されており、お湯は少々白濁していました。


 
岩風呂はデコボコが多いからか、温泉に含まれる成分がこびりつきやすく、湯口のみならず浴槽のあちこちでも白色や黄色に染まっていました。湯口のお湯を口にすると強烈にしょっぱく、タマゴ味や強めの苦味、そして渋みやエグミが口の中を支配しました。塩分濃度に関しては海水の3分の2も含んでいるんだそうです。また、湯面からはアブラ臭とタマゴ臭が放たれ、弱ヨード臭も感じられました。湯船に浸かると濃い目の食塩泉らしいツルツル浴感(少々の引っかかりも混在)が得られ、とりわけぬるめの「展望風呂」ではつい長湯したくなりますが、何しろ塩分が濃いもんですから、長湯したくても食塩泉ならではの疲労感に襲われて体が音を上げてしまうこと必至。体がヘロヘロになってしまい、否応なく湯船から出ざるを得なくなってしまいます。従いまして、浴場内に掲示されているプレートでも注意喚起されていますが、長湯は禁物ですし、お風呂から上がる際には真湯でしっかり温泉成分を洗い流した方が良いかもしれません。湯上がりは強く火照り、発刊もなかなか止まりません。冬にはその強い保温効果が心強いのですが、夏にはツラそうです。
こうした凶暴なお湯だからか、あるいは老人施設という性質だからか、お風呂にはこまめにスタッフのおじさんがチェックしに来ており、その甲斐あってか、常時10人以上のお爺さんで賑わっているにもかかわらず、あまりゴチャゴチャしないで整然とした状態が保たれていました。隣接している「テルメ柏陵」は、施設として使い勝手良くて綺麗なのですが、こちらの方が料金が安いので、地元の方々はこちらに集まるんでしょうね。


大江3号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 60.6℃ pH7.0 蒸発残留物21830mg/kg 溶存物質18200mg/kg
Na+:4445mg, Mg++:50.5mg, Ca++:2242mg,
Cl-:11060mg, Br-:46.6mg, I-:1.9mg, HS-:9.6mg, SO4--:202.5mg,
H2SiO3:30.6mg, HBO2:29.2mg, CO2:33.9mg, H2S:10.9mg.

JR左沢線・左沢駅より山交バスの宮宿(朝日町役場)行で「舟唄温泉」下車
山形県西村山郡大江町大字藤田270-3  地図
0237-62-4096
ホームページ(大江町公式サイト内)

3月~10月→6:00~21:00、11月~2月→6:30~21:00、第一月曜定休
200円
ロッカー(100円リターン式)・ボディーソープ・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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小野川温泉 河鹿荘 その3(大浴場「あさみどり」・家族風呂)

2014年05月25日 | 山形県
「小野川温泉 河鹿荘 その2(大浴場「せせらぎ」)」の続編です

 
「河鹿荘」は幾棟かに分かれており、前回記事その2で紹介した大浴場「せせらぎ」は、私が一晩を過ごした客室は「逍遥館」に付帯していたのですが、今回取り上げる大浴場「あさみどり」や「家族風呂」はフロントから伸びる廊下をまっすぐ進んだ最奥に独立していますので、客室棟「美風館」の1階を通過し、案内に従い専用の渡り廊下を歩いてゆきます。


 
右手に中庭の池を眺めつつ緩やかな上り勾配の廊下を進んでいった突き当たりの手前右手が大浴場「あさみどり」、左手奥が「家族風呂」です。「その2」の大浴場「せせらぎ」と同様に「あさみどり」は男女時間入れ替え制となっており、「せせらぎ」と「あさみどり」で男女が必ず交互に入れ替わるタイムスケジュールとなっています。


●あさみどり
 
室内の窓ガラスより浴室を見下ろす構造の脱衣室は広々としており、天井も高くて開放的です。壁飾りやカーテンなど若干アジアンテイストかもしれません。明らかに造りが「せせらぎ」よりも新しいので、その雰囲気から察するに、前回取り上げた「せせらぎ」が旧館のお風呂、この「あさみどり」が新館のお風呂に相当するのだろうと思われます。


 
脱衣室からステップを数段下りて浴室へ。雪景色の池に面して天地いっぱいに大きな窓ガラスが用いられており、室内空間なのに閉塞感は無く、明るくゆとりのある環境が生み出されています。また床には十和田石が敷かれており、素足で歩いた際に伝わってくる十和田石ならではの気持ち良い感触も、居心地の良さに一役買っています。なお内湯のみで露天風呂はありません。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が2箇所に分かれて計7基取り付けられています。シャワーヘッドをよく見ますと、地球儀のような模様が施されていました。



大浴場「せせらぎ」と同様、こちらにも浴槽の傍らに「かけ湯用」の桶が用意されています。


 
窓に面した浴槽は凸の字を逆さにしたような形状をしており、2:3くらいの割合で温度別に2分割されています。
石材を加工した湯口は湯の華で流路を白く染めていますが、その湯口から直接お湯が注がれる小さな方は「あつ湯」となっており、5~6人サイズといったところで、私の体感では43~4℃でした。湯中ではたくさんの白い湯の華が舞っています。


 
一方、仕切りの反対側に当たる大きな方は、容量としては9~10人でしょうか、スリットが開けられている仕切り板を通じて、「あつ湯」の方からお湯を受けており、一般的な湯加減(41~2℃)がキープされていました。この仕切り板の上には丸太が渡されているのですが、その丸太の色と浴槽縁やステップの石板の色を合わせており、その落ち着きのあるカラーコーディネートが上品さを醸し出していました。

仕切り板を挟んだ2つの入浴ゾーンを比較しますと、湯口から注がれるお湯を直接受ける小さな「あつ湯」の方が(当然ですが)鮮度感が優れており、熱くて逆上せそうになりながらも、その感触の良さに後ろ髪がひかれ、なかなか湯船から出ることができませんでした。


●家族風呂
 
「あさみどり」に隣接して「家族風呂」があり、こちらは完全貸切制となっていますので、まずはフロントで予約を済ませ、予約時間になったらフロントへ赴いて札と鍵を受け取り、鍵で浴室の扉を開けて、その扉に札を掛けておきます。なお1回40分です。


 
脱衣室は一人じゃ持て余しちゃうほど広々しており、こんな立派な貸切風呂を一人で利用してしまうことに後ろめたさを覚えてしまいました。「あさみどり」と同様にガラス窓から浴室を見下ろす造りになっており、洗面台や籠が複数用意されていること、それでいて一回り小さな構造であることから推測するに、おそらく「あさみどりの湯」は元々男湯として、隣接する「家族風呂」は元々女湯として設計されたのではないかと勝手に想像しました(が真実のほどはいかに…)。


 
赤ちゃん連れのファミリーに朗報です。この家族風呂にはベビーベッドがあるばかりでなく、オムツを入れられるビニール袋が用意されていたり、ベビーチェアーやベビーバスなども備え付けられていたりと、赤ちゃんと一緒に温泉を楽しめる配慮がなされているのです。しかも貸切の家族風呂ですから、他の客に迷惑をかけることもありません。これなら赤ちゃん連れのママでも温泉旅行を諦めずに済みますね。素晴らしい! 


 
お隣の「あさみどり」とはガラスブロックで仕切られているこちらの浴室にも、大きな窓ガラスが採用されており、一見するとお隣と同じような造りに思われるのですが、よく見ますと床に十和田石は採用されておらず、浴槽内も石板ではなくタイル貼りとなっており、内装面で細かな違いが見られます。


 
直線的な「あさみどり」とは異なり、こちらの浴槽は丸みを帯びており、槽内はコバルトブルーの丸く小さなタイルが敷き詰められています。扇形に開いている湯口から熱い源泉が注がれていますが、投入量を絞っていたためか、家族みんなでゆっくり寛げるような程良い湯加減になっていました。
「あさみどり」「家族風呂」ともに放流式の湯使いとなっており、浴槽縁を溢れ出るようなオーバーフローは見られない代わりに、槽内の穴からオーバーフロー管を経由して排湯されていました。

比較的規模の大きな宿であるにもかかわらず、各浴槽での湯使いには妥協を許さずに鮮度感を維持した状態でお湯を提供しており、小野川のお湯の良さをお客さんに伝えるための苦心が感じられました。また家族風呂に見られた諸々の配慮を含め、客室サービスやお食事など、ホスピタリティも十分満足できました。その1でも申し上げましたが、これだけのサービスを享受できて、税別で野口英世7人でOKなのですから、コストパフォマンスは卓越していますよね。改めて小野川温泉は良いお宿尽くしであることを実感しました。


協組4号源泉・協組5号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 44.5℃ pH7.3 溶存物質4025.3mg/kg
Na+:915.2mg(66.49mval%), Ca++:707.2mg(29.47mval%),
Cl-:2099.4mg(97.21mval%), Br-:5.8mg, HS-:1.7mg, S2O3--:3.75mg, SO4--:50.6mg, HCO3-:54.9mg,
H2SiO3:92.4mg, CO2:22.6mg, H2S:0.6mg,
(平成21年1月26日)

JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で「小野川温泉」下車、徒歩4分(350m)
山形県米沢市小野川町2070
0238-32-2221
ホームページ

日帰り入浴11:00~21:00(だったかな? 要確認)
500円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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小野川温泉 河鹿荘 その2(大浴場「せせらぎ」)

2014年05月24日 | 山形県
前回記事「小野川温泉 河鹿荘 その1(客室・朝食等)」の続編です。

「河鹿荘」には宿泊客が利用できるお風呂が3つあり、今回はその全てに入ってきましたので、一つ一つ見てまいりましょう。まずは私が一晩を過ごした客室と同じ逍遥館にある大浴場「せせらぎ」からです。


●大浴場「せせらぎ」

客室へ分岐する廊下を曲がらずに、道なりにまっすぐ進むと、その途中の右手で暖簾を提げているのが大浴場「せせらぎ」です。浴室は男女別ではなく、時間別に男女入れ替え制となっていますので、利用の際にはタイムスケジュールを確認して、然るべき浴室へ向かうことになります。なお廊下の奥はエステ&マッサージルームです。


 
脱衣室は一室ながら左右二手に分かれており、シンメトリな構造になっていました。おそらく元々は男女別に分かれていたものを、真ん中の仕切りを取っ払って一室化したのではないかと思われます。とてもよく手入れされており、清潔感が漲っています。


 
脱衣室は左右に分かれていましたが、内湯は一室のみでして、こうした構造ゆえに、男女を時間別の入れ替え制にしているのでしょうね。浴槽や窓、そして柱など各部位に曲線を多用して女性的な雰囲気を醸し出している浴室には、小野川温泉らしい桜湯の香りが充満していました。洗い場は室内の左右にシンメトリに配置されており、シャワー付き混合水栓が3基ずつ計6基取り付けられています。また露天風呂へ出るドアも左右に1つずつ設けられています(うち一つは常時締め切り)。あれあれ? 脱衣室もシンメトリでしたが、洗い場も露天へ出るドアもシンメトリだぞ。ということは、今でこそ浴室は一室ですが、元々その真ん中に仕切りがあって、男女で分けて使っていた可能性もありますね。ま、どうでもいいことですが。


 
レモンを縦にして半分に割ったような形状の湯船は、縁に石材が用いられ、槽内には水色の細かな丸いタイルが敷き詰められています。この時は窓ガラスから差し込む朝の陽の光を受けて、お湯もタイルも美しく輝いていました。決して新しいお風呂ではないのですが、お手入れが良いのか、古さを感じさせないところが立派です。
浴槽の中央手前には「かけ湯用」と記された札とともに、桶が積まれていました。言わずもがな、湯船のお湯を汲むための桶なのでして、こちらのお宿のお風呂には必ずこの「かけ湯用」桶が備え付けられています。


 
湯口の中は湯の華に覆われて真っ白です。私のような温泉に対して変態な性癖がある人間は、このような湯の華まみれの設備を見ているだけでも、アドレナリンの分泌が止まらなくなります。この湯口を上から覗いて見ると、底に穴が2つあるのですが、館内表示によればこちらのお宿では熱い4号源泉とぬるい5号源泉をブレンドして各浴槽に注いでいるそうですから、おそらく2つある穴の一方が4号源泉で他方が5号源泉であり、この湯口でブレンドしてるのかもしれませんね。


 
露天風呂は周りを塀で囲まれているものの、大きな岩が組まれていて庭園のような造りになっており、圧迫感や閉塞感は無く、訪問時には岩の上を雪がたっぷり被さっていたため、風情ある和の趣きの中で見事な雪見風呂が堪能できました。湯船には屋根がかかっているため、空から降ってくる雪(や雨)を気にせず湯浴みできるのも有り難いところです。浴槽は2つに分かれており、その真ん中に位置する湯口から双方へお湯が注がれていました。この湯口のお湯は篦棒に熱かったので、もしかしたら4号単独かもしれません。


 
画像左(上)の小さな湯船は5~6人サイズでぬるく、画像右(下)は7~8人サイズで42~3℃の万人受けする湯加減となっていました。同じ湯口から双方へお湯が分配されているのですが、小さな浴槽の方は注がれる量が絞られており、それゆえ湯加減も抑えられているようでした。


 
露天風呂の前に高く積まれた岩の上から水が落とされており、滝となって小さな流れを作っていました。これが「せせらぎ」という浴場名の由来なのでしょう。東北在住の方にとって雪はただ邪魔なものでしかないでしょうけど、我々関東人にはとても風情ある景色に見え、とりわけ雪見風呂は北国に行かねば味わえない冬ならではの醍醐味でもあります。ベンチの上には他のお客さんが湯浴みしながら作ったと思しき雪だるまが載っかっていました。


 
 
夜の雪見露天風呂というのも、昼間とは違う味わいがあって良いものですね。寒さに身を縮めながら、足元の冷たさに耐えかねて爪先立ちで急いで湯船にドボンと入ったときの、あの温かさは、冬だからこそ体感できる有り難みでもあります。
なおこちらのお宿で露天風呂があるのは「せせらぎ」だけですから、露天風呂に入りたい場合は男女区分のタイムスケジュールをよく確認の上で利用しましょう。



小野川温泉では熱いけど供給量が限られている4号源泉と、その補完的役割を果たしているものの40℃に満たないぬるめの5号源泉が使われており、宿によって両者の使用状況は異なりますが、館内表示によれば、こちらのお宿では2つの源泉をブレンドさせて各浴槽へ供給しているんだそうです。しかしながら、個人的な感覚を申し上げれば4号泉の特徴が前面に現れているような気がしました。具体的には無色透明で白い湯の花が湯中で舞い、口にすると卵スープを彷彿とさせる味が口腔内に広がります。とりわけ塩気が強くて出汁味もはっきりしており、ほんのりビターテイストや弱いエグみも含まれているようでした。湯面からはふんわりとしたタマゴ臭が漂っている他、何かが焦げたような芳ばしい匂いや火山の噴気帯を思わせる刺激臭が微かに感じ取れました。

なお各浴槽とも浴槽縁からのオーバーフローは見られず、槽内の穴からオーバーフロー管を経由してお湯を排出していました。こうした湯使いに関しては館内表示でイラストを用いてしっかりと説明されており、お湯に対するお宿の誠実な姿勢が伝わってきます。浴槽の縁から溢れ出させる一般的な方法ですと、底部のお湯が滞留しがちですので、このように槽内底部に穴を開けて、そこからサイフォン管で排出させてやった方が、浴槽のお湯が効率よく入れ替わるんですよね。


その3へ続く
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小野川温泉 河鹿荘 その1(客室・朝食等)

2014年05月23日 | 山形県
 
小野川温泉のお宿はどこも惹かれる魅力があるので、宿泊の際には宿選びに迷ってしまうのですが、優柔不断な私は当日になっても宿を決められないまま出発してしまい、東北道の安達太良SAに車をとめてスマホで某大手宿泊予約サイトを検索したら、1泊朝食付き(夕食なし)で税別7,000円というリーズナブルな価格を提示していた「河鹿荘」を見つけたので、今回はその値段に惹かれて「河鹿荘」でお世話になることにしました。温泉街の奥まった位置にありながら、現在の小野川では最も集客力があるお宿ではないかと思われます。

小雪が舞う中でも出迎えのスタッフが玄関前で待機しており、僅か2時間ほど前に予約を入れたばかりにもかかわらず、そのスタッフに自分の名前を告げたら即座に対応してくれたのは流石です。いかにも現代和風の佇まいでして、明るさと和の落ち着きが共存している館内には、民芸調の飾り付けが至る所に施されていました。女性受けが良さそうですね。


 
ラウンジで宿帳に記入する際、ウェルカムドリンクならぬウェルカム玉こんにゃくをいただきます。これが美味いんだな。


 

仲居さんに導かれて客室へ。廊下には近年の日本旅館で全国的によく見られる、好みの浴衣を貸し出してくれるコーナーがありました。部屋に備え付けの地味な浴衣よりも、自分の好きな色のものを身につけたほうが、より高揚した宿泊時間が過ごせますよね。貸し出してくれるのはカラフルな浴衣のみならず、携帯の充電器・DVDプレーヤー・ワインオープナー・カールドライヤー・つめきり・体温計などかなり充実おり、また部屋に備え付けてあるアメニティで足りない場合は、浴衣コーナー傍にあるアメニティ置き場からお好みのものを自由に使うこともできます。


 

客室へ向かう階段の踊場では、可愛らしい人形や吊し雛ならぬ吊しニャンコが、こちらに向かって微笑んでいました。


 

今回通されたお部屋は逍遥館の2階にある8畳の和室です。室内にはトイレや冷蔵庫も備え付けられており、清掃も行き届いていましたので、居心地はとても快適でした。窓の外を眺めると奥の方にスキー場のゲレンデが見えました。


 
 
ちなみに、温泉街からお宿へ向かう路地の途中には上画像のような足湯小屋があり、小屋の中には足湯の他、囲炉裏や飲泉所が設けられていました。ちゃんと屋根と壁で囲ってあるので、吹雪いても問題なく足湯できるんですね。雪国ならではの配慮でしょう。


 
さて私は今回夕食なし(朝食つき)のプランをお願いしたわけですが、仲居さんに夕食がいただけるお店を尋ねると、わざわざ帳場へ戻って温泉街のマップを持ってきて、それを用いながら嫌な顔ひとつせず、親切に飲食店について教えてくれました。自分の経験から、単価の少ない客はぞんざいに扱われるんじゃないかという先入観をつい抱いてしまいがちですが、そんな不安を払拭してくれるお宿の対応に接すると嬉しく安堵するものですね。

その仲居さんが薦めてくれた食堂「お食事処 龍華」に入り、温泉もやしラーメンとミニ牛丼を注文したのですが、これがめちゃくちゃ美味い! 特に温泉もやしラーメンはここ一年で私が食べたラーメンの中では最高の味でした。出汁の利いたアッサリ系の醤油スープに、シャキシャキとした歯ごたえの温泉もやしが実によく合うんです。あまりに美味くて、スープの最後の一滴まで残さずに飲み干しました。温泉もやしといえば青森県大鰐温泉が有名ですが、この小野川温泉でも少量ながら生産しており、このように温泉街の食堂やお宿で口にできるほか、お土産屋さんでも販売しています。


 
温泉街での湯めぐりと夕食を済ませて宿に戻ると、帳場のスタッフは私が名前を名乗る前に鍵を手渡してくれました。一流ホテル並みのサービスに感心しながら部屋に入ると、既に布団が敷かれているばかりか、卓袱台の上には夜食用のおにぎりが用意されていました。夕食をお願いしなくても、こんな心配りをしてくれるんですね。おもてなしの心が行き届いていることに改めて感心し、すっかり闇夜に包まれたゲレンデを眺めつつ、そのおにぎりを頬張ったのでした(この晩は炭水化物を摂り過ぎていますね…)。



フカフカの布団のおかげでグッスリ熟睡した翌朝、大広間にて朝食をいただきます。
笊の中の朱盆に配膳された小鉢類など彩りが豊かで、ビジュアルだけで爽快な目覚めをもたらしてくれますが、もちろん見た目だけでなく、ツヤツヤに輝く山形県産米「つや姫」・小野川産大豆で作った味噌汁・温泉街の豆腐屋さんの湯豆腐・天元豚のウインナー・温泉卵と肉味噌等など、地産地消に徹した献立の一つ一つの味も大変宜しく、丁寧に作られている感じがしっかりと伝わってきます。お世辞抜きで美味しいので、ご飯も進み、朝から2回もおかわりしてしまいました。

当然ながら曜日等によって料金設定は異なるのでしょうけど、朝食付きで税別7,000円で、明日以降に記事をアップする「その2」や「その3」で述べるお風呂に入れ、しかも上述のようなサービスまで受けられるのですから、同じ金額を支払うのでしたら、ビジネスホテルなんかよりもこちらの方が遥かに良いですね。

記事が長くなりそうなので、今回は一旦ここでストップし、肝心のお風呂については「その2」以降で述べてまいります。

その2へ続く。


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小野川温泉 旭屋旅館

2014年05月22日 | 山形県
 
 
今回も山形県小野川温泉で湯めぐりです。温泉街に2つある共同浴場のうち、渋くて地味な佇まいの「滝湯」の傍には山で湧いた清らかな清水が注がれている「滝の清水」という水場がありますが、その傍ら(というかすぐ裏手)に建っている立派なRC造のお宿「旭屋旅館」で「夢ぐり手形」を使って立ち寄り入浴してまいりました。この日は軽く吹雪いており、訪問時には落ち着いてくれましたが、それでも玄関前に立つ伊達政宗の顔出しパネルも凍えているように見えました。


 
和のラグジュアリー感たっぷりなロビーには、甲冑や鞍、そして艶やかな打掛が飾り置かれていました。落馬した伊達政宗が小野川の湯に浸かって傷を癒やしたという伝説、そして開湯伝説に名を刻む小野小町に因んで、このようなものが展示されているのでしょうね。フロントで手形を提示しながら入浴をお願いしますと、快く受け入れて下さいました。


 
ロビーからコの字状に曲がりながら廊下を進み、ペロリンが描かれた「おいしい山形」の暖簾を潜ると、その先の突き当たりに男女両浴室の暖簾が下がっています。2つのお風呂は男女入れ替え制らしく、訪問時は運が良いことに右側の広い浴室が男風呂になっていました。なおお宿の館内には男女の浴室の他、予約制の貸切風呂もあるんだそうです(おそらく宿泊客専用でしょうね)。

広い脱衣室は品格高い旅館らしく綺麗で快適。壁の木目とクリーム色の床が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。また、棚にはたくさんの籠が用意され、洗面台も4台並んでおり、沢山のお客さんを受け入れられるキャパシティがあります。


 

厳冬期に訪問したため浴室内には湯気が濃く篭っており、画像も曇って見難くなっていますが、どうかご勘弁を。浴室は結構広く、室内面積の半分以上を3つの浴槽が占めています。そして残されたスペースに設けられた洗い場には混合水栓が4基取り付けられています(確認し忘れましたが、うち3つがシャワー付きだったはずです)。洗い場の片隅では、なぜかケロリン桶が高く積まれており、ケロリン桶のタワーができあがっていました。普段からタワーになっているのか、あるいはこの時偶々だったのかは不明です。


 
3つある浴槽を手前側から順に見ていきますと、最も手前側にあるのがこの小さな浴槽でして、お湯は全量縁からオーバーフローしており、その縁には象牙色のこびりつきが見られました。なお画像を見てわかるように、サーモンピンク系の総タイル貼りとなっている槽内の底面にはバイブラバス装置らしきものが埋め込まれていますが、この時は稼働していませんでした(私個人としては人為的なブクブクは好きではないので、稼働していない方がありがたいです)。


 
湯の華が筋状にこびりついて真っ白になっている小さな浴槽の湯口には、誰しもが目を奪われるでしょう。その湯口の上に立てかけられてる木札には「高温度43.5~46℃ 半身浴15秒」と手書きされている通り、供給される湯に対して加水されていない上に浴槽が小さくて冷めにくいので、浴室内にある3つの湯船の中で最も熱い湯船であり、実際に私も入ってその熱さを実感したのですが、でもそれゆえにお湯の鮮度感は素晴らしく、熱くて脛がヒリヒリしちゃうのに、ついつい癖になって何度も入りたくなってしまうほどシャキッとした浴感が楽しめました。


 
また小さな浴槽の湯口真下には大量の湯の華が沈殿しており、一つ一つがデカいのです。試しにケロリン桶でお湯を受け止めてみたら、こんなにデッカイものが採れちゃいました。鶏のささ身でも裂けるチーズでもとろろ昆布でもありません。れっきとした小野川温泉の湯の華です。



小さな浴槽の右隣には4人分に区切られている寝湯が設けられていました。もちろんここのお湯も温泉です。



窓に面している大きな主浴槽は洗い場側が緩いS字を描いており、上から見るとグランドピアノの蓋のような形状をしていまして、暖色系の小さな浴槽とは対照的に、こちらは寒色系である薄いブルーのタイルが用いられています。


 
こちらの湯口にも小浴槽ほどではありませんが、白い湯の華がしっかり付着しており、直下の底にもたくさん沈殿していました(写りが悪くて見えにくいのが残念ですが…)。もちろん沈殿のみならず湯中にも湯の華が舞っています。湯口から吐出されるお湯は小浴槽同様に熱いのですが、湯船の表面積が広いためか、適度に熱が奪われて丁度良い湯加減となっていました。


 
内湯に続いて露天風呂へ。ドアには「ぬる湯」と張り紙されていたのですが、どれくらいぬるいのかしら…。


 
 
近隣の建物が接近しているため、露天風呂の周囲には目隠しの大和塀が立ちはだかっており、残念ながら眺望等は期待できませんが、塀の上を見上げれば簾越しに裏手の山が目に入り、この日はみちのくならではの雪見風呂が楽しめました。また岩風呂になっているお風呂の周りには、古民家の石の置物が配置されたり壁になまこ壁のような装飾が施されていたりと、和の雰囲気がたっぷりと醸し出されていますので、塀に囲われているとはいえ、これらの装り付けと塀の上から覗く景色によって、四季折々の風情が楽しめそうです。
内湯同様に露天の湯口にも白い湯の華がこびりついているのですが、内湯以上に湯の花の白さが際立っており、しか縦長の細かい繊維状になっているものが無数に付着しているので、あたかも絹糸の束のような美しさを放っていました。そして湯口から注がれたお湯は、槽内中央の底面から立ち上がっているパイプで排水されていました。

さて、入口に張り紙されていた「ぬる湯」の件ですが、私が入浴したときには本当にぬるく、35℃あるかないかといった程度でして、厳冬期の入浴にはちょっと厳しいコンディションでした。見方を変えれば、これって加温していない証であり、お湯に実直でありたいお宿の誠意の顕れでもあるんですよね。実際に湯口ではアツアツのお湯が注がれていたのですが、みちのくの冬の厳しい寒さは温泉の熱をたやすく奪ってしまうのでしょう。非加温にこだわれば、ぬるくなってしまうのは致し方ないことでして、温泉管理の難しさが察せられるのですが、余計なお世話ながら、理解の及ばないお客さんが「ぬるすぎると」苦情を寄せないか(ネットで書き込まないか)心配になってしまいます。


 
露天の片隅には「この水は温泉の熱交換です」と書かれた札がぶらさがっていました。ぬるくなる冬とは逆に、夏は冷めにくいのかもしれず、お湯の濃度を希釈させないで湯温を下げるべく、熱交換で冷ました温泉を用いて湯加減調整するのでしょうね。小野川温泉のお宿は、どこでもお湯のクオリティ維持に苦心なさっていますね。
こちらで用いられているのは4号源泉の単独かと思われ、5号泉を混合させている他旅館のお湯より塩味や出汁味、特に塩味がしっかりと感じられましたが、その一方で湯の花がビジュアル的に強烈な存在感を主張しているにもかかわらず、味や匂いの面でイオウ感はなぜか角が取れて丸くなっており、タマゴ味は大人しく、タマゴ臭もふんわりと控えめに香る程度でした。とはいえ、トロミのあるお湯からは濃厚さが伝わり、湯使いの良さのおかげで、つい後を引いてしまうほど気持ち良い浴感を楽しめました。


協組4号
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 80.3℃ pH7.0 蒸発残留物6470mg/kg 溶存物質5515mg/kg
Na+:1518mg, Ca++:437.7mg,
Cl-:3124mg, Br-:7.8mg, I-:0.8mg, HS-:1.6mg, S2O3--:0.8mg, SO4--:77.3mg, HCO3-:86.0mg,
H2SiO3:77.4㎎, HBO2:35.1mg, CO2:15.4mg, H2S:1.8mg,
(平成17年2月4日分析)
気温が高い時期のみ加水あり、加温循環消毒なし

JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で小野川温泉下車、徒歩1分
山形県米沢市小野川町2437-1
0238-32-2111
ホームページ

立寄入浴9:00~19:00?(念のため都度施設へご確認を)
500円(「夢ぐり手形」使用可能)
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず(貴重品は帳場預かり?)

私の好み:★★+0.5
コメント
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