前回までタイ北部の温泉や旅行記などを約一ヶ月にわたって取り上げてまいりましたが、東南アジアシリーズは一区切りを付け、今回からは日本に戻って私が大好きな山形県・小野川温泉へと一気に北上します。もう東北も里ではとっくに雪が融けて桜も散りましたが、記事中の画像がまだ雪景色である点はどうかご容赦を。まず1軒目は小野川温泉に立ち並ぶ旅館群でも湯治宿風情が強い「二階堂旅館」で、「夢ぐり手形」を活用して立ち寄り入浴です。
立派な唐破風の玄関を訪い、手形を見せながら立ち寄り入浴をお願いしますと、明るい人柄の女将さんが快く受け入れてくださいました。
館内は昔ながらの旅館風情が色濃く残っており、渋い雰囲気に包まれながら歩く度に音が鳴る板張りの廊下を奥へ進んでゆくと、湯治宿らしく廊下の右手には炊事場が顔をのぞかせていました。
玄関から奥へ伸びる廊下をまっすぐ進んで右へ折れた突き当たりに大浴室があり、仏壇の薬師様に見守られながら紅と紺の暖簾が下がっていました。浴室入口付近に掲示されている温泉分析表には昭和26年と記されていますので、この分析表は還暦を過ぎているんですね。恐れいります。なおこちらのお宿にはこの大浴場の他、小さな家族風呂が2室あるんだそうですが、今回は利用しませんでした。大きなお風呂には「杖忘れの名湯 お薬師さまの湯」と名付けられており、更に女湯は「日光」で男湯は「月光」に分かれ、男女区分は固定されているようでした。一般的な陰陽で考えれば女性は月で男性は太陽ですが、女性に「日光」を宛てているということは平塚らいてう風な発想なのかな?
脱衣室内も天井以外は全て板張りで、木目の壁に立てかけられている棚や籠の青さがとても際立っています。洗面台は2台設けられており、扇風機も2台取り付けられていますので、盛夏の時期には2台ともグルグル回って大活躍するのでしょうね。
渋い木造の廊下や脱衣室とは打って変わり、浴室は総タイル張りの現代的な装いでして、側面は白基調、床はライトブラウンという配色になっていました。ネット上の評価を拝見しますと、昔ながらの旅館風情とこの現代的で無機質なタイル貼りとのギャップに虚を突かれる方が結構いらっしゃるようですが、浴室という空間の性質上、タイル貼りに改装するのは管理維持の問題で必然的と言えるでしょうし…
何より屋外に面した部分にはガラス窓やガラスブロックを多用しているおかげで、室内はとても明るい状態が保たれており、厳冬期ならではの湯気篭りにも負けず、浴室の広さをしっかりと実感できました。昼間でしたら照明要らずです。窓の一部を一般的な窓サッシにせず、ガラスブロックを採用することにより、採光とデザイン性を確保するだけでなく、目隠しとしての役割も果たしている点は、寧ろ評価すべきかと思います。
浴室入口の傍には風呂桶や腰掛けがきっちり整頓されており、旅館としての矜持を示していました。また、浴槽と反対側の壁には洗い場が一列に並んでいました。といっても、室内をタイル貼りに改装していながら、そこに並んでいるのは7枚の鏡と、鏡1枚おきに取り付けられている水の蛇口が計4個、そしてシャワーが1つだけと、設備面だけは古典的な湯治宿っぽい格好になっており、古い旅館のお風呂に慣れていない方でしたら使い勝手に難渋するかもしれません。シャワーは一つしかありませんから、ここで体を洗うのでしたら浴槽から桶で直接お湯を汲んだ方が早そうですし、実際に私もそうしました(つい先ほどガラスブロックを褒めておきながら、洗い場に及んで急に首を傾げ始める私の評価って、本当にいい加減です…)。
端っこでカクカクと折れている建物に合わせる形で、鉤型に曲がっている浴槽の形状もユニークですね。容量としては13~14人は同時に入れるのではないでしょうか。槽内には目がさめるような鮮やかなスカイブルーのタイルが敷き詰められ、縁には赤い御影石が用いられており、その縁の上を滑り落ちるように、浴槽のお湯が洗い場へと溢れ出ていました。お湯は無色透明で湯中では溶き卵のような白い湯の華がチラホラ舞っています。もちろん湯使いは放流式。
この湯船にお湯を注いでいるのは、お寺の屋根のようなスタイルをした湯口でして、そこからは2本の塩ビパイプが突き出ているのですが…
この2本のパイプから吐出されるものに関して、ネット上でレポートされている情報によれば、一方が熱いお湯で他方は冷水である、とのことですが、私の訪問時の場合、左側は確かに熱かったのですが、右側は決して冷水ではなく、35℃前後のぬるいお湯でした。右側パイプから吐出されているのが冷水でもぬるま湯でも、いずれにせよ左側の熱いお湯を温度調整する(低下させる)役割を果たしているのでしょうから、もしかしたら季節によって、夏は冷水、冬はぬるいお湯、という感じで切り替えているのかもしれませんね(あくまで私の勝手な想像ですが…)。この2本の湯口から落とされるお湯の絶妙な塩梅のおかげで、湯船では体感で42℃前後丁度良い湯加減が維持されており、一度入るとそのお湯の虜になってしまいそうでした。
温度から察するに、訪問時の左側の熱いお湯は4号泉の単独かもしれず、以前宿泊したお隣の「うめや」(常時4号源泉を単独使用)のように明瞭な塩味と出汁味および薄いタマゴ味、一言で表現すれば桜湯のような美味しさが感じられました。一方、右側のぬる湯からは薄っすらビターなタマゴ味が得られましたので、温度やその知覚から想像するに5号源泉単独かもしれません。そしてこの2本が混ざり合ったお湯からはタマゴ臭と出汁の芳ばしい香りが放たれて浴室内を満たし、湯口に鼻を近づけると火山の噴気孔から放出される火山ガス的な刺激臭も僅かに嗅ぎ取れました。
小野川のお湯らしく湯上がりはポカポカ良く温まり、外に出て吹雪にあたってもヘッチャラでした。シンプルなお風呂だからこそ、お湯に集中できるのかもしれませんね。これからも湯治宿風情を残していただきたいと強く願っています。
協組4号源泉・協組5号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 44.5℃ pH7.3 溶存物質4025.3mg/kg
Na+:915.2mg(66.49mval%), Ca++:707.2mg(29.47mval%),
Cl-:2099.4mg(97.21mval%), Br-:5.8mg, HS-:1.7mg, S2O3--:3.75mg, SO4--:50.6mg, HCO3-:54.9mg,
H2SiO3:92.4mg, CO2:22.6mg, H2S:0.6mg,
(平成21年1月26日)
協組4号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 80.3℃ pH7.0 溶存物質5515mg/kg
Na+:1518mg, Ca++:437.7mg,
Cl-:3124mg, Br-:7.8mg, HS-:1.6mg, S2O3--:0.8mg, SO4--:77.3mg, HCO3-:86.0mg,
H2SiO3:77.4mg, CO2:15.4mg, H2S:1.8mg,
(平成17年2月4日)
平成21年1月26日分析の源泉別湧出温度
協組4号源泉78.6℃
協組5号源泉35.6℃
JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で「小野川温泉」下車すぐ
山形県米沢市小野川町2495 地図
0238-32-2900
立ち寄り入浴時間不明(一応「夢ぐり手形」の資料によれば8:00~21:00となっていますが、お宿の都合により入浴不可な場合もあるかと思いますので、その都度ご確認ください)
立ち寄り入浴料300円(夢ぐり手形使用可能)
ボディーソープあり、他備品類見当たらず
私の好み:★★
立派な唐破風の玄関を訪い、手形を見せながら立ち寄り入浴をお願いしますと、明るい人柄の女将さんが快く受け入れてくださいました。
館内は昔ながらの旅館風情が色濃く残っており、渋い雰囲気に包まれながら歩く度に音が鳴る板張りの廊下を奥へ進んでゆくと、湯治宿らしく廊下の右手には炊事場が顔をのぞかせていました。
玄関から奥へ伸びる廊下をまっすぐ進んで右へ折れた突き当たりに大浴室があり、仏壇の薬師様に見守られながら紅と紺の暖簾が下がっていました。浴室入口付近に掲示されている温泉分析表には昭和26年と記されていますので、この分析表は還暦を過ぎているんですね。恐れいります。なおこちらのお宿にはこの大浴場の他、小さな家族風呂が2室あるんだそうですが、今回は利用しませんでした。大きなお風呂には「杖忘れの名湯 お薬師さまの湯」と名付けられており、更に女湯は「日光」で男湯は「月光」に分かれ、男女区分は固定されているようでした。一般的な陰陽で考えれば女性は月で男性は太陽ですが、女性に「日光」を宛てているということは平塚らいてう風な発想なのかな?
脱衣室内も天井以外は全て板張りで、木目の壁に立てかけられている棚や籠の青さがとても際立っています。洗面台は2台設けられており、扇風機も2台取り付けられていますので、盛夏の時期には2台ともグルグル回って大活躍するのでしょうね。
渋い木造の廊下や脱衣室とは打って変わり、浴室は総タイル張りの現代的な装いでして、側面は白基調、床はライトブラウンという配色になっていました。ネット上の評価を拝見しますと、昔ながらの旅館風情とこの現代的で無機質なタイル貼りとのギャップに虚を突かれる方が結構いらっしゃるようですが、浴室という空間の性質上、タイル貼りに改装するのは管理維持の問題で必然的と言えるでしょうし…
何より屋外に面した部分にはガラス窓やガラスブロックを多用しているおかげで、室内はとても明るい状態が保たれており、厳冬期ならではの湯気篭りにも負けず、浴室の広さをしっかりと実感できました。昼間でしたら照明要らずです。窓の一部を一般的な窓サッシにせず、ガラスブロックを採用することにより、採光とデザイン性を確保するだけでなく、目隠しとしての役割も果たしている点は、寧ろ評価すべきかと思います。
浴室入口の傍には風呂桶や腰掛けがきっちり整頓されており、旅館としての矜持を示していました。また、浴槽と反対側の壁には洗い場が一列に並んでいました。といっても、室内をタイル貼りに改装していながら、そこに並んでいるのは7枚の鏡と、鏡1枚おきに取り付けられている水の蛇口が計4個、そしてシャワーが1つだけと、設備面だけは古典的な湯治宿っぽい格好になっており、古い旅館のお風呂に慣れていない方でしたら使い勝手に難渋するかもしれません。シャワーは一つしかありませんから、ここで体を洗うのでしたら浴槽から桶で直接お湯を汲んだ方が早そうですし、実際に私もそうしました(つい先ほどガラスブロックを褒めておきながら、洗い場に及んで急に首を傾げ始める私の評価って、本当にいい加減です…)。
端っこでカクカクと折れている建物に合わせる形で、鉤型に曲がっている浴槽の形状もユニークですね。容量としては13~14人は同時に入れるのではないでしょうか。槽内には目がさめるような鮮やかなスカイブルーのタイルが敷き詰められ、縁には赤い御影石が用いられており、その縁の上を滑り落ちるように、浴槽のお湯が洗い場へと溢れ出ていました。お湯は無色透明で湯中では溶き卵のような白い湯の華がチラホラ舞っています。もちろん湯使いは放流式。
この湯船にお湯を注いでいるのは、お寺の屋根のようなスタイルをした湯口でして、そこからは2本の塩ビパイプが突き出ているのですが…
この2本のパイプから吐出されるものに関して、ネット上でレポートされている情報によれば、一方が熱いお湯で他方は冷水である、とのことですが、私の訪問時の場合、左側は確かに熱かったのですが、右側は決して冷水ではなく、35℃前後のぬるいお湯でした。右側パイプから吐出されているのが冷水でもぬるま湯でも、いずれにせよ左側の熱いお湯を温度調整する(低下させる)役割を果たしているのでしょうから、もしかしたら季節によって、夏は冷水、冬はぬるいお湯、という感じで切り替えているのかもしれませんね(あくまで私の勝手な想像ですが…)。この2本の湯口から落とされるお湯の絶妙な塩梅のおかげで、湯船では体感で42℃前後丁度良い湯加減が維持されており、一度入るとそのお湯の虜になってしまいそうでした。
温度から察するに、訪問時の左側の熱いお湯は4号泉の単独かもしれず、以前宿泊したお隣の「うめや」(常時4号源泉を単独使用)のように明瞭な塩味と出汁味および薄いタマゴ味、一言で表現すれば桜湯のような美味しさが感じられました。一方、右側のぬる湯からは薄っすらビターなタマゴ味が得られましたので、温度やその知覚から想像するに5号源泉単独かもしれません。そしてこの2本が混ざり合ったお湯からはタマゴ臭と出汁の芳ばしい香りが放たれて浴室内を満たし、湯口に鼻を近づけると火山の噴気孔から放出される火山ガス的な刺激臭も僅かに嗅ぎ取れました。
小野川のお湯らしく湯上がりはポカポカ良く温まり、外に出て吹雪にあたってもヘッチャラでした。シンプルなお風呂だからこそ、お湯に集中できるのかもしれませんね。これからも湯治宿風情を残していただきたいと強く願っています。
協組4号源泉・協組5号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 44.5℃ pH7.3 溶存物質4025.3mg/kg
Na+:915.2mg(66.49mval%), Ca++:707.2mg(29.47mval%),
Cl-:2099.4mg(97.21mval%), Br-:5.8mg, HS-:1.7mg, S2O3--:3.75mg, SO4--:50.6mg, HCO3-:54.9mg,
H2SiO3:92.4mg, CO2:22.6mg, H2S:0.6mg,
(平成21年1月26日)
協組4号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 80.3℃ pH7.0 溶存物質5515mg/kg
Na+:1518mg, Ca++:437.7mg,
Cl-:3124mg, Br-:7.8mg, HS-:1.6mg, S2O3--:0.8mg, SO4--:77.3mg, HCO3-:86.0mg,
H2SiO3:77.4mg, CO2:15.4mg, H2S:1.8mg,
(平成17年2月4日)
平成21年1月26日分析の源泉別湧出温度
協組4号源泉78.6℃
協組5号源泉35.6℃
JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で「小野川温泉」下車すぐ
山形県米沢市小野川町2495 地図
0238-32-2900
立ち寄り入浴時間不明(一応「夢ぐり手形」の資料によれば8:00~21:00となっていますが、お宿の都合により入浴不可な場合もあるかと思いますので、その都度ご確認ください)
立ち寄り入浴料300円(夢ぐり手形使用可能)
ボディーソープあり、他備品類見当たらず
私の好み:★★