経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

今週のポイント

2019-05-20 08:13:30 | 株価
◇ 「5月は売り」のパターンか = 米中貿易戦争が一段と激化し、先週の株価は初めから大きく下げた。その後は反発に転じたけれども、戻し切れずに終わっている。ダウ平均は週間178ドルの下落、日経平均は95円の値下がりだった。5月に入ってからダウ平均は829ドルの下げ、日経平均は1009円の下落。特に日経平均は10連休のあと、9営業日のうち2日しか上昇していない。「5月は売り」の格言が、現実味を帯びてきたようだ。

ダウ平均が週初に急落したのをみて、トランプ大統領は「中国との協議は成功すると感じている」とリップ・サービス。さらにFRBに対しては「中国との競争に勝つためにも、1%の利下げが必要だ」と要求した。市場はこれで反発の手がかりを掴んだが、実際に利下げされるかどうかは全く不明。ただ市場の利下げ期待は、急速に膨らみそうだ。

日本株の割安感が、顕著になってきた。東証1部でみると、半分以上の銘柄のPBR(株価純資産倍率)が1倍を割ってきている。にもかかわらず買いにくいのは、実体経済の先行きに不安があるためだ。景気動向指数では「景気が悪化」と認定され、3月期決算の結果も減益がはっきりした。そのうえ消費増税が控えている。

今週は20日に、1-3月期のGDP速報。21日に、4月の外国人客数。22日に、4月の貿易統計と3月の機械受注。24日に、4月の消費者物価と3月の全産業活動指数、5月の政府月例経済報告。アメリカでは21日に、4月の中古住宅販売。23日に、4月の新築住宅販売が発表される。なお25日には、トランプ米大統領が来日。

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

少子・高齢化が進む : 中国

2019-05-18 07:17:58 | 中国
◇ 総人口も間もなく減少へ = 中国の総人口は、昨年末時点で13億9538万人だった。前年より530万人増えている。言うまでもなく世界一の人口大国だが、少子化の進行で間もなく人口の増加はストップ。20-21年をピークに、その後の人口は減少に向かう。一方では高齢化も進んでおり、まるで日本の現象を模写したよう。しかし日本の10倍以上の人口を抱え、1人当たりGDPはまだ日本の4分の1しかない中国にとって、この人口問題は想像以上の重しになる危険性を秘めている。

少子化の進行で、18年の出生数は1523万人にとどまった。これは毛沢東が大躍進政策に失敗して食糧難に陥った1961年以来の低水準。原因は中国政府が1978年から推進してきた「一人っ子政策」にある。この政策は15年に「二人っ子」に緩和されたが、その効果は全く表われていない。しかも数少なくなった女性が出産適齢期を迎えたから、少子化はますます加速してきている。

その一方で、高齢化も目立ってきた。昨年末時点で、65歳以上の人口は1億6658万人。前年よりも827万人増えた。総人口に対する比率は11.9%に達している。今後は60年代生まれの人たちが高齢者の仲間入りするが、60年代生まれは2億人を超える。高齢化のスピードは加速化し、日本を上回るものと予測されている。

少子・高齢化が進むと、若い労働力が不足する。年金や医療など福祉関係の財政負担が急増するなど、日本と同じ問題が起きるだろう。経済成長率も低下せざるをえない。いま中国はアメリカとの関税引き上げ競争に全神経を使っているが、この問題をクリアしたとしても、そのあとには人口の急減という実に困難な構造問題に直面することになる。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +187.11円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

21世紀の“冷たい戦争” : 米中摩擦 (下)

2019-05-17 08:11:09 | 貿易
◇ 資本主義と社会主義の対決 = 中国は2049年に建国100年を迎える。いま問題となっている「中国製造2025」計画は、この100周年までに10の分野のハイテク産業を世界最高の水準にまで育て上げることを目標にしたもの。それには政府の指導と補助金は欠かせない。仮にアメリカの圧力に屈して、この計画を放棄することになれば、強大な権力の集中に成功した習近平氏でさえも失脚の危険性がある。だから譲れない。

中国は社会主義国である。その基本的な経済思想は、重要な土地や企業は国家が所有し、共産党の指導のもとに国が管理・運営することにある。したがって国有企業やハイテク企業に国が介入し、補助金を出すことに何ら不思議はない。だがアメリカ側からみると、こうした“不当な”補助金政策を容認すれば、技術開発の面で中国に後れを取る危険性がある。だから黙認は出来ない。

現在の世界経済は、資本主義を標榜するアメリカがリードしている。だから世界で商売がしたいなら、アメリカ流のやり方に従えということになる。中国側もそれは判っていて、組織や情報発信の面でもグローバル化を進めてきた。しかし今回の米中貿易協議では、社会主義と資本主義の相違点が掘り下げられて、岩盤に突き当たったようにも思われる。

戦後の世界では、ソ連が崩壊しベルリンの壁が消滅するまで、いわゆる“冷戦”が続いていた。その当時の東西対立は、双方ともに相手側の主張は認めず、共存する意識などは全くなかったと言っていい。しかし現在は、互いに相手の存在を認めたうえでの競争になっているように思われる。近く予定される米中首脳会談では、岩盤に穴を開けられるだろうか。

       ≪16日の日経平均 = 下げ -125.58円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

21世紀の“冷たい戦争” : 米中摩擦 (上)

2019-05-16 07:24:01 | 貿易
◇ 中国製品すべてに25%の高関税 = ワシントンで開いた閣僚級の米中貿易協議は、妥協点を見出せなかった。すかさずアメリカは、新たに3000億ドル分の中国製品にも25%の関税をかけると発表。これで中国からの輸入品には、すべて25%の関税が課されることになる。スマホやパソコンなどの電子製品も含まれており、中国に部品を供給している日本企業にも大きな影響が出ることは免れない。中国側も報復関税をかけると発表した。

トランプ大統領は当初「対中貿易で巨額の赤字が続いていることには耐えられない」と、赤字の縮小を強調していた。中国側もこの点では、アメリカ産の農産物やLNG(液化天然ガス)の輸入を増やすなど、協力的に対応。協議はスムーズに進行した。しかしアメリカ政府部内の対中強硬派が、中国の産業政策に注文を付け始めたために、交渉は厳しさを増すこととなった。

中国では、中央政府や地方政府が国有企業やハイテク企業に補助金を出して支援している。このうち国有企業では、補助金を受けた鉄鋼メーカーが製品を過剰生産。安値で輸出するため、鉄鋼製品の国際価格が下落していた。アメリカはこれを「政府による不当な支援だ」と非難。習政権も鉄鋼など国有企業の近代化を図るために、是正しようと考えてはいる。しかし既得権の喪失に反対する内部勢力も強く、一挙に補助金を廃止できないでいるのが現状だ。

一方、ハイテク企業に対する補助金は、半導体・ロボット・宇宙設備・EV自動車・新素材・バイオ医療などの企業に支出されている。これは共産党が15年に発表した「中国製造2025」計画に基づく、産業育成策の根幹をなす政策。したがって習政権としては、絶対に止められない。そこへアメリカが手を突っ込んできたから、協議は不調に終わってしまった。

                            (続きは明日)

       ≪15日の日経平均 = 上げ +121.33円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

景気はすでに 後退局面に (下)

2019-05-15 07:39:52 | 景気
◇ 金融不安の予防がカギ = 景気動向指数が「悪化」に転じても、政府が直ちに景気後退入りを認めるとは限らない。政府が不況だと宣言すれば、民間の空気はさらに冷え込む。また景気対策の必要にも迫られるからである。来週20日には1-3月期のGDP速報が発表されるが、それをみたうえで下旬に月例経済報告をまとめる予定。これまで「緩やかな回復」で通してきた基調判断を、どう修正するのか。

たしかに工業生産は、4-5月には上向くと予測されている。失業率や求人倍率など、雇用関係の指標は絶好調だ。しかし半面、米中貿易戦争は泥沼化の様相を示し、これでは中国経済の回復は期待できそうにない。アメリカでも日本でも、企業業績は減益に転じている。株価も大きく下げた。油断は禁物である。

次の焦点は、景気の下降が短いか長いか。浅いか深いかだろう。安倍首相はしばしば「リーマン・ショック級の不況が来ない限り、10月に予定された消費税の引き上げは実施する」と強調している。そんな大不況の恐れはないのだろうか。過去の経験からみると、そのカギは金融不安が生じるかどうかだろう。

景気の後退が続くと、いわゆる不良債権が顕在化してくる。これが金融不安を惹き起こすと景気の下降は長引き、その回復には長い時間と大きな犠牲が必要になってしまう。この点に関して心配なのは、日本の金融機関が不良債権になりやすい投資物件を大量に抱えていること。少なくとも金融庁は、その顕在化を予防することにいまから全力を注ぐべきである。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -124.05円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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