先週、建築講座で尼崎市立大庄公民館へ訪れた。
以前一度見学に訪れたことはあるのだけど、この日はその時には見れなかった塔屋や地下室、
地下食堂などへも案内して頂くことができた。
大庄公民館は昭和12年に村野藤吾設計により建築された建物。
これまでの威厳のある庁舎建築とは対称的に、建物と共に回廊や広場が設けられ、
村民に開かれた新しい時代の役場をイメージしデザインされたとか。
当時としてはとても斬新で日本の村役場のモデルともなったのだそう。
広場をコの字型に囲んで建つ建物。
建物玄関からはこのような回廊が続いている。
このような回廊や塔屋、広場は当時、村野藤吾が見学旅行で見たストックホルムの市庁舎に影響を受けたものといわれている。
建物の裏手に回ってみると、以前あった川の流れに沿って建物がゆるやかにカーブを描いて建っていて
正面から見た感じとは雰囲気が変わり、船を思わせる形にもなっている。
建物外観にはヨーロッパへの憧れから装飾があちらこちらに散りばめられていて
広場に面した外壁にはギリシャ神話に登場するグリフィンのレリーフが。
正面玄関にはオリーブをくわえた鳩のレリーフ
内部の見どころの一つは村野藤吾ならではの優雅な曲線を描く階段。
地下室へと続く階段も手すりが独特な曲線を描いて波打っていた。
ヨーロッパの広場にある鐘楼をイメージして造られたといわれる塔屋にはオリーブの模様が透かし彫りされている。
塔屋へ上がってみると・・
天井には星座をモチーフとした星模様が。
これもヨーロッパ人好みの意匠だそう。
建物内部の部屋で唯一建築当初の姿をとどめる貴賓室。
ベニヤ板に覆われた壁や造り付けの戸棚にはシンプルで細かな象嵌細工がされている。
そして地下のボイラー室へ。
ボイラー室の天井はドイツ製のプリズムガラスといわれるものが入れられて明るい光が差し込んでいた。
こちらは半地下になった元食堂。
現在は塗り込められているが、ガラスブロックの窓が設けられていて、外の光が採り込まれるようになっていたそう。
ボイラー室のプリズムガラスを外側から見たところ。
ガラスは分厚く、人が歩ける丈夫さがあるという。
建物のあちらこちらに村野藤吾ならではの細やかな気配りや優雅なデザインが垣間見られる素敵な役場だった。