ちょっと変わったタイトルで何かな?と思われるかもしれませんが、“アナ”の働きについて、
いつも来る会報に記事が掲載されており、なるほど・・ と面白く拝読しましたので大筋をご紹介します。
本記事の著者は、北川進氏(京都大学大学院教授、工博)です。
原題は、“小さな空間のサイエンスとテクノロジー” というちょっと長めのものですが、
要は人類の発展に大きく貢献してきた “物質” および “生命” の科学の根幹は、原子や分子にあることは
言うまでもないが、これらの分子の合成化学は、すなわち “原子から組まれた骨格” であり、その骨格体として発展してきた。
しかし、著者は、“骨格” ではなく、原子や分子が囲む、あるいは仕切る “空間” に着目した。
いうなれば、分子やイオンが活躍する空間の科学に取り組んできたという。
もう少し我慢して、先に進んでみてください。
著者によれば、“孔”という字は世界最古の漢字字典に収録されており、“あな”という概念が
既に2000年前から文字で表されていたそうで、代表的な多孔性材料である活性炭は、古代エジプトにおいて、
医療用に用いられたとかが、パピルスに記述されているという。
活性炭は現在においても水の浄化などに幅広く用いられているが、その歴史は3000年にわたり、
近年の新しい発見として“ゼオライト”があり、これまで石油産業をはじめとして人類の生活に不可欠のものとして
長年にわたり利用されてきている。
しかし、これら多孔性材料は、高温で焼成させる処理が必要であり、しかも、望みの“孔サイズ”、“形”を
設計して作ることは難しいという。 さらに、ナノスケールで人の手で逐一作り上げることは不可能である。
そこで、この多孔性材料をナノスケールで構成するに当たり、特に“化学”の力が必要になる・・というのです。
前置きみたいな、部分がずいぶん長くて申し訳けありませんでした。
以下の部分が、専門的で難しく必ずしもストンと理解できませんが、“目からウロコ”みたいな感じで読めるのですね。
例えば、構造情報として“柱材”は、直線構造、“天井材”はパネル状・・という風に作っておき、
それをコネクタ―の金属イオンと溶媒に溶解させ、液体中に均一に分散させ、配位結合が接着剤にとなって
自動的にお互いを認識して結びつき、多数の空間を持つ骨格体が出来る・・という具合である。
このようにして、一例として“孔”の断面が1ナノメートル程度で、個体(結晶)のサイズが、一辺が1マイクロメートル
とすれば、この個体の断面には100万個(1000×1000)の孔が出来上がることになる。
しかも、焼成するなどのエネルギーを消費するプロセスを経ない優れものである。
この従来材料にない全く新しいタイプの多孔性材料は、環境、エネルギー、バイオ課題に密接にかかわる
気体分子を自在に捕獲、貯蔵、変換する新しい材料として研究が進められている。
米国発のシェールガス(メタン)革命、・・このブログにも“mak”の論文がある・・が大きな話題となり、
先の米国についでカナダからも輸入するとの発表があるなど、身近なものとなりつつある。
これらメタンを大量に、安全に貯蔵できる計量な材料が今こそ求められており、タイムリーなものとして
天然ガス車の燃料タンクなどに実用化される日も近い・・というのだ。
また、他にも大きく期待されている分野があるという。
“20世紀の初め、世界の人口は10億人程度であり、このとき、「1800年代の最高の技術、道具を使い、
耕されている土地すべてを使って作物を生産しても、40億人以上を養えない」と言われた。
しかし、現在の世界人口は70億人であり、当時の予想から言えば30億人は飢えているはずである。
これを覆したのは「窒素肥料」であり、これを工業的に生産する化学が人類に貢献したのである。”
“さらに、将来を見た時に、「空気」や「水」などどこにでもある資源を使うサイエンスを発展させることが重要であろう。
その道具として、「多孔性材料」が期待されている”と言っている。
特にどこにでもある資源・・気体を材料にする化学のために、その“分離” “貯蔵”“変換”して有用なものに
変えて行く、すなわち気体を自由に操つる“ガスサイエンス&テクノロジー”に、この多孔性材料は不可欠である・・
と結んでいます。
ちょっと難しかったですが、このような分野から将来を見た重要な研究が進められているのですね。