ここでの主題は、リタイヤ後の長い人生をどのように過ごすか、また社会がどのような
環境であるべきか・・などのテーマについての記事アップのつもりでネットを検索して
みましたら、ナント! 以前ブームになったゲーム(私は知りませんでした)のオンパ
レ―ドでした。
本題に入る前に、どんなゲームなのか少しだけ・・。 ネットによれば、
『 2003年、アメリカのリンデンラボ社が、仮想空間を舞台にした「SecondLife」という
オンラインゲームをスタートさせました。ゲームといっても、決まった目的(クエスト)
やシナリオがあるわけではないところが斬新でした。「目的は自分で作る」のが目的だっ
たのです。 自分の分身であるアバターを使い、仮想空間にある町で買い物をしたり、
楽器を持ってライブをしたり、自分で店をオープンして物を販売したり、友人を作って
交流したり、とにかくすべてが自由。 未成年が入れない「夜の街」までありますし、
ユーザー同士で結婚もできます。その自由さは、まるで「現実社会」のよう。 そう、
まさに「SecondLife」(第二の人生)を作れてしまう画期的なものだったのです。』
何だか面白そうではありますが、“第二の人生”というよりは“もう一つの(願望)
人生”みたいな響きが感じられて あまり健全ではないかもしれない?などと負け惜しみ
しています。
横道にそれましたが、襟を正して本題に入ります。
高齢化社会が進む中、高齢者自身にとっても、国においても、産業面でも このセカン
ドライフをどのように捉えて、新しい展開に導いて行くか、最近、手元に届いた講演録に
一つの試行について述べられていましたので、抜き読みで参照しながら少しまとめて
みました。
講演録は「長寿時代におけるセカンドライフの設計」(秋山弘子氏、東大高齢社会総合
研究機構特任教授)と題して、2009年に千葉県柏市でスタートした社会実験『長寿社会の
まちづくり』での取り組み視点やそれらの意義について様々な角度から検討しながら推進
されている内容が述べられています。
下のグラフは、もうよくご存知の人口ピラミッドの変化ですが、これは既に“ピラミッド”ではなくなっていますね。私たちが子供の頃には、確かにピラミッドの形でした。
人口ピラミッドの変化 (ネット画像より)
で、急速に進む長寿社会に3つの課題があると述べられています。
①個人の課題、②社会の課題、③産業界の課題の3つです。
①個人の課題は、当然ながら人生が倍長?するわけですから、リタイヤ後、体力・健康
を維持しながら、どのような人生を送るか、自分で設計しなければならないということ
なんですね。『都心でサラリーマン生活が長かったせいで、多くのシニアは、地元に知り
合いがおらず、名刺なしでどうやって地域に出て知り合いを作ればよいかもわからず・・』
と講演録が言うように、確かに、組織から離れた途端、なすすべに迷う・・そんな環境に
多くの人達が突入しているのかもしれません。
②社会の課題には、これまでのピラミッド型の時代にできた雇用制度であるし、教育
制度も若者向きに出来ているわけで、これからの長寿社会にあっては、これら雇用制度、
教育制度の作り直しが急務であると指摘されています。
2015年の65~79才、5000人を対象とした調査によれば、一番は「働きたい」、二番が
「自分を磨きたい」という結果で、多くの高齢者が就労できる環境を作ることが重要で、
これは、『高齢者の就業率が高いと医療費は低い』という緩やかな相関から、国の財政
にも好影響を与えるともありました。
『長寿社会のまちづくり』プロジェクトでは、9つの領域で就労の場を設定したそうです。
うち3つが 農業関連(休耕地を活用した都市型農業、ミニ野菜工場、屋上農園)で、
この他、食関連(団地内の食堂、移動販売)、 保育(子育て支援、学童保育)、生活
支援・福祉(家事代行、介護施設での短時間労働)で、最低賃金を支払って運営されて
いるとありました。 千葉県柏市のHPには次のような記事がありました。
『 長寿社会に向けたまちづくり~地域包括ケアシステムの具現化に向けて~
市では、東京大学・UR都市機構と協力し、「いつまでも自宅で安心した生活が送れ
るまち」「いつまでも元気で活躍できるまち」を目指して、柏市の長寿社会に向けたまち
づくりプロジェクトを行っています。
現在75歳以上の市民のかたは約3万5000人。ところが2030年(平成42年)には75歳以上
のかたが約7万人になると予想されています。
高齢になっても、住み慣れた地域で、人間関係や生活環境を変えずに暮らし続けられる
仕組みが必要と考え、このプロジェクトでは大きく2つの取り組みを推進しています。
○在宅医療の推進
「いつまでも自宅で安心した生活が送れるまち」の取り組みでは、病気になっても住み
慣れた家で暮らすことができるために、介護保険サービスと医療サービスを切れ目なく
適切に受けられる仕組みを整えています。
- 在宅医療に対する負担を軽減するバックアップシステムの構築
- 在宅医療を行う医師等の増加及び多職種連携の推進
- 情報共有システムの構築
- 市民への啓発、相談・支援
- 上記を実現する中核拠点(柏地域医療連携センター)の設置
○生きがい就労の創成
「いつまでも元気で活躍できるまち」の取り組みでは、各分野で、専門の事業者が高齢者
と雇用契約を結び、高齢者のかたが培ってきた経験と知恵を借りながら地域課題の解決の
ために「働く」仕組みを整えています。
1、農業での就労 2、生活支援 3、子育て 4、食堂 5、福祉 』
③産業界の課題 では、『長寿社会は、イノベーションの宝庫である。』といっていま
す。 つまり、課題とは、『長寿社会対応の産業を日本の基盤産業の一つに育てること』
と断言し、これがまさに、世界で長寿社会の先端を走る日本にとって新しい産業として
有望だとしています。
産業界とシニア消費市場との連携が重要であり、プロジェクトでは『ジェロントロ
ジー・コンソーシアム』を結成して、さまざまな業種企業と連携した研究を進めている
という。 自動車、住宅、鉄道、金融、食品、化粧品など多様な産業と高齢社会との関
わりから新しいビジネスとして、これら拡大するシニア市場をターゲットとして展開し
ようというのです。
単にシニア層向けの要介護層と富裕層だけを主たるターゲットしたこれまでの展開は、
わずか1割程度のシェアですが、全体の8割を占める普通のシニア層はまだ未開拓だと言っ
ています。しかもこれが拡大するわけですから、大きな課題ではあるのですね。
2017年に、地域(鎌倉)に常設された「鎌倉リビングラボ」では、大学、行政、住民、
と多数企業の産学官民の協同が展開されています。 ここでは、①住民の課題、②行政の
課題、③企業の課題 を設定して活動されているそうです。
最近、街中を走るタクシーの中に、車高の高いのがあることに気がつきましたが、これ
も、新しい発想で 長寿境に向けた、つまり高齢者にとって乗降が楽にできる・・そんな
ところから導入されているのかもしれないと、ちょっと目につきました。
地球上で誰も経験していない、長寿社会に向けて、それぞれの課題を発見して、それを
新産業に展開するとともに、シニアにとっての充実したセカンドライフが、本人、国、
産業界にとってウインウインの形になるよう進んでほしいものです。
講演録の最後に、次のような下りがありました。
『 時間・収入・知識・スキル・人脈・健康は、セカンドライフの特典です。これからの
高齢者はこれらの特典をフルに活用して、自分の人生を自由に設計できるのです。
こういう自由は、三十代ではありませんでした。』
ベランダのチョウジソウ