春になると、菜の花が咲き、チューリップが咲き桜が咲き、秋になると、菊やヒガンバナ
などが咲きます。 動物も、春にはひばりが鳴き、秋にはアキアカネが飛び回り、鴨や白鳥
が姿を現します。
そうです、生物の季節を知る仕組みについて少し調べてみました。
(羊頭狗肉のキライあり?・・)
生物は、動物も植物も昆虫も 勿論カレンダーなどは持っていませんが、キチット毎年、
その時期を知って行動を起こしています。
生物には、季節を感知する仕組みを持っているのです。単に、季節が来たら花を咲かせ
る・・というのではなく、その行為は種の保存のための行動で、種が生き続ける上で必須の
機能なんですね。
「動物が季節を感じる仕組み」について、投稿論文(吉村崇氏、名古屋大学生命分子研究
所教授)を見て、やや難しい内容ではありましたが、理解した部分をまとめてみました。
あわせて、ならば“植物は?”ということで、こちらは、もっぱらネットを参照してまと
めてみました。
元より“ズブシロ”ですので、誤解しているところがあるかもしれませんが、生き物と
いうのは、本当にうまく出来ていると改めて思った次第です。
ほとんどの生物は、24時間周期の概日(がいじつ)リズムを刻む概日時計(体内時計)と、
光受容体(光を感じる有機化合物、たんぱく質)をもっていて、同じ環境温度でも日照時間
(長日または短日)によって季節を知っているのです。
吉村氏の論文では、鶉(ウズラ)の研究から『ウズラは、日本と中国を行き来する渡り鳥
であり、飛来のために体を軽くする戦略をとっており、繁殖をする春から夏にかけてのみ
精巣、卵巣を発達させる。ウズラは日長(日の長さ)の変化によって、わずか2週間で精巣
重量が百倍以上に変化し、脳よりも大きくなる。』とあり、『春の刺激が与えられた遺伝子
が、脳の視床下部で甲状腺ホルモンが活性化される』ことが、季節繁殖のカギであることが
わかったとあります。これを「春告げホルモン」と呼ばれています。
ウズラ(キジ目キジ科ウズラ属)
(ウイキペディアより)
また、メダカの研究では、『 メダカは、12.5時間の日長では産卵しないが、13時間だと
産卵する。また水温が16℃では産卵できないが、18℃なら産卵できる。』とあり、この日長
や温度のことをそれぞれ、臨界日長、臨界温度と呼ぶのだそうです。
そして、高緯度地域のメダカは、低緯度地域のメダカよりも長い日長と高い温度を要求
するそうです。これは、『高緯度ほど繁殖に適切な時期が短いため、繁殖に不適切な季節に
誤って繁殖してしまわないような安全機構が遺伝子の中に書き込まれていることを示唆して
いる』と断じられています。
メダカは、冬の間は水槽の下でじっとしているのに、夏には、水槽全体を活発に動き回っ
ているのは、メダカの光受容タンパク質が季節に反応し、繁殖を行わない冬には光感受性が
低下し、春になると食料を探したり、よい配偶者を選ぶために視覚をつかさどる遺伝子を
一斉に働かせて色覚を発達させているのだそうです。
一方、植物については、日本植物生理学会などのHPを参照して、概略以下のようにまとめ
てみました。
植物が花を咲かせる時期をどのように決めているか? それは、「フロリゲン」という
花芽を作るスイッチとして働く植物ホルモン(花成ホルモン)の働きによるのだそうです。
このホルモンにより花を咲かせるべき季節の到来を認識しており、これは温度ではなく、
日長(日の長さ)を計っているのだそうです。
『イネや菊では、日長がたった30分変わったことを見分けて花を咲かせるタイミングを
決めることができます。もし人間が時計も見ずに、昨日より今日の日没が30分遅いことを
認識しようとしたらとても困難ですから、植物の日長認識がいかに精巧にできているかが
わかります。』
この フロリゲンは、『葉が最適な日長を認識した時に葉で合成され、茎の先端まで輸送
されて花芽形成を開始させる植物ホルモンで、FTと呼ばれる遺伝子にコードされたタンパ
ク質なんです。』とありますように、夏、冬の同じ温度(例えば20℃)でも、日長の長短
によって、これは夏の20℃、これは冬の20℃と判別しているのです。つまり、『植物は光
を受け取る感知システムと温度を感じるシステムを組み合わせて、季節変化に応答して、
体を作り変えているのです。』 なるほど・・。
遺伝子発現量の変化:黒い折れ線(ハクサンハタザオ遺伝子)
(工藤 洋 京都大学生態学研究センター分子生態部門教授論文より)
ベランダでは、春の花たちが終わって、今、レモンの花が乱れ咲いて一面に甘い香りが
漂っています。 冬の間見られなかったアリたちは活発に動き回っています。もうすぐ、
これらの柑橘類やクチナシにアゲハ蝶の幼虫が住み着いてくる季節となるでしょう。
ベランダのレモンの花(5月7日)
リラの季節 (フランク・プゥルセルとレイモン・ルフェーブル)