蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

HEMT  (bon)

2020-05-25 | 日々雑感、散策、旅行

     昨日のオークス、一番人気のデアリングタクトが最後の直線で中段から懸命に
     抜け出しゴール直前でかわして半馬身1着でゴール。すごかったですね。63年
     ぶりという無敗2冠を達成しました。
      また、昨日は延期された大相撲夏場所が中止された幻の場所となり、新大関
     朝乃山の出番はもう少しお預けとなりました。

 

 お馴染みのない文字ですが、携帯電話や衛星放送など身近に日頃お世話になっ
ている技術(トランジスタ)のことですので、取り上げてみました。

 このトランジスタの発明者、三村高志氏(㈱富士通研究所名誉フェロー)ご本人
の記事が、手元の会報にありましたので、昨年、アメリカIEEEのマイルストーン
に認定された素晴らしい発明でもあり、ネットも参照しながら、ちょっと専門的
ですがさわりをまとめてみました。

        

 HEMTは、High Electron Mobility Transistorの頭文字をとったもので、ヘ
ムトとも呼ばれています。 その意味は、高電子移動度トランジスタのことで、
例えば、GaAs(ガリウムひ素)の半絶縁性基盤上にi-GaAs層とi-AlGaAs層をエピ
タキシャル成長によって積み重ねた構成とすることで、高移動度(電子の移動し
易さを高める)を得ることができるというのです。
 (エピタキシャル成長とは、薄膜結晶成長技術のひとつで、基板となる結晶の上に結晶
 成長を行い、下地の基板の結晶面にそろえて配列する成長の様式である。)

     以下の図はすべて富士通研究所の解説ページから引用しました。

    HEMTの基本的な構造
      

 半導体は、もともと、下図のような基本構成であり、入り口電極と出口電極
間を電子が流れますが、この時ゲート電極によって電子の流れを調整できる構

になっています。
 ゲート電極は、電子の流れをオン・オフするスイッチの役目
もできるのです。

         

 この時、電子の移動度は、半導体を構成する物質や温度、さらには電子を生み
出すため半導体に添加する不純物(ドナー)の濃度によって大きく左右され、高
純度の GaAsは Si(シリコン)の6倍ほど高い電子移動度があるが、トランジスタ
として使用する場合、ドナー濃度が高くなり、電子がドナーと衝突する機会が増
え、衝突するたびに電子の運動方向が曲げられるために電子のスピードが遅くな
ってしまうというのです。

 高周波領域でトランジスタを使用できるためには、この移動度を高めなければ
なりませんが、純度を高めることと、電子ドナーのための不純物が相反する効果
(ジレンマ)となり大きな壁になっていたのです。

 これを解決したのが、HEMTというわけで、 下図にモデル的に示しますが、ド
ナーの層とは別の高純度 GaAs層を重ね合わせた構造とすることにより、電子は
高純度層を高速で移動できるのです。 これが、冒頭に示された図なんですね。

         

 

 1983年の国際会議でこのHEMTの低雑音増幅器(試作)を発表したところ、席に
戻るや このHEMT技術を買いたいとの申し出が、アメリカ電波天文台からあり、
これが契機となり、日本の野辺山電波天文台のパラボラアンテナに初めて設置さ
れ、電波望遠鏡の大きな成果をもたらしたのです。
 新技術がいきなりマーケットと結びつき、一気にイノベーションが加速され、
衛星放送受信用パラボラアンテナの低雑音増幅器として導入されたのです。HEMT
を使うことによって、パラボラアンテナのサイズが従来の半分以下となったそう
です。今や世界中で使用されているのです。

 さらに開発は進み、携帯電話の基地局から端末に電波を送信するところでHEMT
が使われているのです。 高周波領域で効率よく信号を増幅することができ、消
費電力を少なくする利点があり、さらに5Gあるいはその先の移動通信システムに
向け、より高い周波数領域でのHEMT利用が一層高まると期待されています。

 

 これらの他、自動車レーダー、カーナビなどへの利用も実現されており、下図
のようなイメージで、新しいサービスに向けて開発は進んでいます。
 三村氏の記事の最後は次のような文言で締められていました。
『エネルギーの高効率な利活用、環境にやさしい情報通信技術の実現などHEMTに
よる持続可能社会の実現に向け大きな役割を果たすものと期待されている。』

        HEMTの利用例
       
        

 

 

碧 空 BLAUER HIMMEL アルフレッド・ハウゼ楽団 

 

 

 

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