蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

「東京物語」  (bon)

2024-01-06 | スポーツ、芸能、映画

 映画を観ました。

 昨年暮れに録画していたNHKBSの小津安二郎監督の「東京物語」「秋刀魚の味」
「お早よう」の3本立てです。あの「寅さん」映画の御前様役の笠智衆が、この3本
とも出演していて、とても味があり、その他の俳優も懐かしい人ばかりが出ている、
ちょっと昔に戻ったような気がしました。「お早よう」は初めて観ましたが、その他
は過去にも観ていてなおじっくりと鑑賞出来ました。

 

 東京物語  1953年(昭和28年)に公開されたモノクロの映画です。 笠智衆、
原節子が主演で、原節子は「紀子」の名前で出ていますが、この映画より先の「晩春」
「麦秋」にも紀子の名前で出ていて、「紀子三部作」と呼ぶことがあるそうです。 
 ここでは、息子次男の嫁の役ですが、次男はすでに亡くなって8年になる一人暮らし
の心優しい嫁を演じています。
 尾道から上京した年老いた両親(笠智衆、東山千恵子)が、長男(山村聰)の家族
や長女(杉村春子)の家にも世話になるが、どことも生活が忙しくゆとりがないよう
で、言葉では優しくしてくれているがどこか冷たい感じが否めないけれども、皆精
一杯やってくれているとの感謝を抱きつつ、悲哀に似た一抹の寂しさを抱く。
 それに比べて次男の嫁は一人暮らしながら精一杯よくしてくれ、むしろ血のつな
がりよりも、元々他人だった人の方が親身にこたえる・・そんな姿を通して、家族の
絆、親と子、老いと死など人間の一生をしみじみと、しかし鋭く描かれていました。

 2012年に英国映画協会が発表した史上最高の映画ベストテンで第1位、昨年(2023年)
でも同率第4位を記録しているという。

 他に、中村伸朗、東野英次郎、香川京子、大坂志郎など懐かしい顔ぶれがいました。

         (gooブログより)

 

秋刀魚の味 1962年(昭和37年)の映画です。こちらはカラーでした。この映画の
公開翌年に死去した小津監督の遺作だそうです。
 ちなみに英題は An Autumn Afternoonだそうです。

 妻に先立たれた初老の父親(笠智衆)が男手一人で育てた娘(岩下志麻)を嫁に
出す父親の気持ち、嫁に行く娘の心境をこまやかに描き出す・・小津作品の要素を
多分に含んだ作品とあります。

 長男夫婦(佐田啓二、岡田茉莉子)は共稼ぎながら団地に暮らし、初老の父は、
娘(岩下志麻)と次男(三上真一郎)と平和に暮らし、時折中学時代からの友人
(中村伸朗ら)と仲良く酒を汲み交わしたり、今は落ちぶれている恩師(東野英次郎)
を交えた酒席を持つ、さらには軍隊時代の部下(加藤大介)とも飲んだりなど充実
した日々を送っています。

 そんなある時、恩師の老先生が酔いながら、娘(杉村春子)の話に移り、母親を
早くに亡くしたことから、便利に使って婚期をなくし独身のまま、今は中華そば屋を
手伝っている状況を後悔していると吐露したことから、自分も婚期を迎えている娘が
いることに気が付き何とかしたいといろいろと行動に移すのです。

 友人たちの協力もあって、無事に娘は結婚しますが、残った父親の老いと孤独が
切々と滲み出てくるのでした。ほのぼのとした明るい話題の展開の中に、父の心境の
変化が描かれていたのでしょう。

 この時代、一般人にもゴルフが浸透しだしていた頃で、映画の中でも、長男がマグ
レガーのゴルフクラブを先輩から月賦で譲り受ける話なども取り入れられていました。

 普通の庶民が、程よく焼けた秋刀魚を口にし、そのおいしさに満足しながらフト
自分だけでないもう一つのことに思いが行くそんな秋の物語なんでしょうか?

 良い味の映画でした。

         (松竹パンフより)

 

 お早よう  1959年(昭和34年)の監督第50作の映画で、小津監督最初のカラー
映画だそうです。これまでの作品とは、一味違った軽妙な、そしてこの時代の庶民
生活の状況をコメディタッチで描かれていました。

 多摩川沿いのよく似た一戸建てが並ぶ新興住宅地を舞台に元気な子供たちにふり
まわされる大人たちと近隣との付き合いの煩わしさなどが細かく描かれていたよう
です。この界隈で一軒だけテレビを持っている家に男の子たちは大相撲中継に夢中で
上がり込んで見させてもらっているが、この家の夫婦は派手好きで近所の評判は良く
なく、子どもたちが上がり込むのを嫌がっているが家にはテレビがなく子供たちに
せがまれている。

  この一角の組長宅夫婦(田中春雄、杉村春子)の隣にガス会社に勤めるサラリー
マン(竹田浩一)、その向かいに住む5人家族(笠智衆、妻三宅邦子それに二人の息子、
と妻の妹久我美子)の子供たちが面白く主題を演じていました。少し離れたところに
翻訳の仕事をしている男(佐田啓二)とその姉(沢村貞子)は自動車のセールスウー
マンが住み、佐田啓二と久我美子がお互いに惹かれ合っている風でしたが  それ
以上の展開はなく、これらの近隣の日常生活がもう一つの主題でもありました。

 さらに、テレビ受像機を月賦で購入したり、鉛筆などの押し売り(殿山泰司)が
あったりと時代の特徴が随所に取り入れられ、当時の地域での付き合い方、悩みなど
都市部の発展が始まる状況がつぶさに描かれていたようでした。

 小津監督の映画では、ちょっと変わった視点で捉えられていたようでした。

         (松竹パンフより)

 

  これらの映画(特に東京物語)を通して、笠智衆にしろ、東山千恵子にしろかなり
の年配に(見ている時は自分よりも年上のように)感じていましたが、妻が息を引き
取るときの年齢が68歳の設定であることがわかり、自分が捉えていた年齢と画面上の
年齢があまりにも違う(画面の年齢が若い)のに驚きました。当時の68歳はこんな
感じだったのかと改めて思いなおしながら、彼等よりはるかに年老いている現在の
自分が浮き彫りにされたような気がしました。
 もう、孤独と死のすぐ近くまで来ていると・・。

 

 

 

『東京物語 ニューデジタルリマスター』予告編

 

 

 

コメント (2)
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