この6月1日から、新しく「司法取引」がスタートしました。
司法に関して、皆目無知であり、遠いところの話しですが、日頃、裁判沙汰の事例は
枚挙にいとまがないくらい生じています。 事案は、逮捕、拘留から検察での起訴までの
過程を経て、起訴により裁判が行われ刑が決定する・・の流れですが、事案が多い上に、
一つひとつに係わる時間を考えると確かに大変なことなのでしょう。
司法取引とは、ウイキペディアに、『司法取引とは、司法制度の一つで、裁判において、
被告人と検察官が取引をし、被告人が罪を認めるか、あるいは共犯者を法廷で告発する、あ
るいは捜査に協力することで、求刑の軽減、またはいくつかの罪状の取り下げを行うこと。』
とありました。
(時事ドットコムより)
で、今回、6/1に施行された司法取引では、他人の事件捜査へ協力する代わりに罪を減免
させる合意制度「捜査・公判協力型」で、米国のように自白と引き換えに罪を軽減させる
「自己負罪型」は認めていないのですね。
そして、対象となる犯罪も、汚職や脱税、談合などの経済犯罪、銃器・薬物犯罪などに
限定されています。 また、被害者感情などを考慮して、殺人や性犯罪は取引の対象になっ
ていないのです。
かねてから実施されている外国と比較した特徴は次表の通りです。
そして、今回導入された司法取引は、他人の事件へのかかわりについて捜査協力をすると
いうことですから、この制度導入に当たって懸念されていることに、“虚偽の供述による
冤罪のリスク”が強調されていました。 したがって、これを防ぐために「虚偽供述罪」を
盛り込んでいる他、取引の際には検察官・被疑者・弁護士が連署した書類を作成することとし、
他人の犯罪関与に関する証拠採用に、制度を利用したことを法廷で明らかにすることとして
いる・・とありました。
司法取引のメリット、デメリットがウイキペディアにまとめられていましたので、一部を
抜粋しました。
司法取引のメリット
- 刑罰を軽減する替わりに、裁判にかかる時間と費用を節約できるだけでなく、減刑ながら
も有罪を獲得できる - より重要な犯罪の捜査の進展に役立つ情報を得ることができる
- ほぼ犯人に間違いないが、その動機などの証明に証拠が不十分な場合、ある程度の刑罰を
与えることが可能である。
司法取引のデメリット
- 検察官による脅しや、被告人の知識不足で罪状を認めてしまうことがあり、冤罪を起こし
やすい。司法取引経緯について明らかになる取調べの可視化がなかったり、共犯者の証言
の裏付けを怠ったまま信頼性が高いと判断される司法文化がある場合はその傾向が強くなる。 - 取引の条件として共犯者を法廷で告発すると、法廷証言において偽証させる動機が強く働く。
真犯人が重刑を避けるために司法取引を行い、無実の者又は犯罪の役割の軽い者に罪をな
すりつける偽証を行う可能性がある。 - 取引であるため、優秀な弁護士を雇える金持ちが有利な取引を行いやすく法の下の平等に
反する場合がある。 - 「法廷で全てを明らかにして罪を認めさせる」という犯罪被害者の処罰感情にそぐわない
可能性がある。
ちょっと難しい内容ですが、日本でも、以前から司法取引を導入すべきだとの意見があった
ようですし、取り調べ中における問題点も指摘され、2014年に法制審議会において、司法取引
制度(捜査・公判協力型 合意制度)の新設および取り調べの録音・録画の義務付けを柱とした
刑事司法制度の改革がなされたのでした。2016年に改正刑事訴訟法が成立し、今回これが施行
されたのです。
日経ネットに次のようなわかりやすい想定がありました。その部分をそのままコピペします。
『「粉飾決算は取締役からの指示でした」。ある上場企業の経理担当部長が検察官に重い口を
開いた。検察側は部長の起訴を見送る一方、部長の供述に基づき取締役を起訴した――。』
司法取引はこうした捜査が可能になるとしています。
企業にとって、社内や取引先などで違法行為があった場合、企業は事実関係を把握して、司
法取引に応じるべきかなどを判断する必要があり、また、司法取引を持ちかけられた場合に、
どう把握し対応するかも今後検討する必要があるのですね。テレビなどで、企業向けセミナー
が開かれている場面がありました。
また、次のような記述もありました。
『司法取引で証拠や供述を得にくい犯罪の解明に役立つことが期待される一方で、「安易に
利用すると司法取引なしで供述を得にくくなる」(検察幹部)などの弊害を懸念する声もある。
捜査手法が変わる刑事司法の転換点だけに、適正運用が定着のカギを握りそうだ。』
昔から、日本では、“仲間を売る”意識は低く、たとえ他人が関与していたとしても、自身
限りにとどめ置くとのある種の美学に似た思いが強いとおもわれますから、今回の司法取引が
どれほどの効果を上げ得るか注視したいところです。 いやぁ、最近はこんな美学はもうない
のかも・・?
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