野菜や花の種(種子)のことです。
我々が、現在口にしているほとんどの野菜は、雑種第一代(F1)と呼ばれる人工的に(自然交配ではなく)
作られた種(タネ)からできたものなんだそうです。
えッ、そうなの、それって何のことなんでしょうか?
以前(2012.2.10)、このブログに、“2倍体、F1” との見出しで、関連内容を記事アップしましたが、ここでは、
最近の農業の殆どが、このF1のタネを使用していることから、今後 抜き差しならぬ問題が起こらないとも限らないと
いうやや深刻なお話なのです。
手持ちの野菜のタネのが入っている袋をみますと、全部、一代種とか一代交配種などと書かれていました。
専門メーカの種のカタログを見ますとほとんどの野菜の種に “××交配”(××はメーカ名)が印刷されています。
手持ちのタネの袋たち
ウイキペディアなどによりますと、雑種第一代とは、生物において、ある異なった対立遺伝子を持つ両親の
交雑の結果生じた、第一世代目の子孫のことで、first filial generation 略してF1 と呼ばれています。
雑種第一代の示す形質が両親のいずれよりも優れる場合、これを雑種強勢といい、これを利用して、より有用な形質
(形や品質など)を伸ばす方向に品種改良されたものを一代雑種や一代交配種などと呼び、農作物などの
農産物の改良に応用されているのです。家畜などにも適用されているそうです。
形が揃っていて、見た目にきれいで運搬にも適し、そして味も甘く柔らかい、日持ちがいいなど いいことづくめのため、
スーパーなどの店頭にはずらりと並んでいるのです。 また、外食産業なども、形が揃っていて、美味しい上に安いと
来れば、もうこれを避ける理由はありません。 おまけに、農家にとっても栽培に強く手間いらずというからもうこれは、
千載一遇の農業改革というほかありません。 事実、1950~60年ごろには、新しい農業改革として大きなエポックを
巻き起こしたのでした。
これほどいいことばかりなのに何が問題なのか?
1、循環しない品種である F1種は、一代限りです。一代目の個体が人間が意図したとおりの形姿や性質を
備えていれば、それで使命を果たしたことになり、その個体から二代目以降が生まれることは想定されていないのです。
常に一代目の個体として消費され続けるのが、F1個体の宿命です。たとえ、二代目が生まれたとしても、
どのような性質であるか全く想像がつかないので、普通二代目をつくらないのです。在来種が長い年月をかけて
環境に適応しながら生き延びてきたことを思うと、このF1というのは、もはや種子と呼べないのかも知れません。
F1種は、人工交配によって生みだされたハイブリッドのあだ花ともよべるかも。
2、土壌の劣化 F1種の栽培は多肥を前提としていますから、化学肥料を多く投入すれば作物はよく成長しますが、
一方で雑草もよく繁茂し、それだけ除草剤の量も増えます。この栽培方法では確かに短期的には収量が増えますが、
長期的には、土壌の劣化や害虫の発生などで栽培が困難になり、結局は収量が減ることになるというのです
3、毎年、種子を購入する必要がある 消費者が好む野菜を、短期に多量に生産できることは、生産者にとって
これほど好都合なことはありません。 しかし、このF1種は、1代限りですから(2代目はどんな性質の野菜が
出来るか想像できない)毎年、この種子を購入する必要があります。 F1種、化学肥料、農薬、この三つは、
近代農業に必須の三点セットで種子だけでなく、農家は毎年これらを購入しなければならないもので、それだけ
お金がかかることになります。大きな成果を期待して近代的農業を採り入れた国々では、今では病害虫、
土壌汚染、多額の負債、貧富の格差といった問題を抱えるようになったといわれています。
4、種子支配 F1種が普及すると農家は毎年その種を種子会社から買うようになり、これまで自ら行っていた
採種をしなくなります。その結果、その地域で固有に存在していた伝統的な品種が放棄され、次々と消滅して行く
ことになります。
利益を手にするのは、種子会社で、農家が種子を種子会社から買い続ける限り、種子会社はもうかります。
このことは単に農家と種子会社の経済の問題にとどまらず、農作物の作付けや流通にまで大きな影響を与えて
います。種子会社が種子の製造販売 そして流通を握ることにより、農家が作付ける作物から消費者の口に入る
食べ物までが種子会社の都合に左右されることになるのです。これが種子支配です。 さらに、F1種から
遺伝子組み換え種子に取って代れば、私たちは遺伝子組み換え作物を望もうが望むまいがまったくおかまいなしに、
種子会社の販売する遺伝子組み換え種子の作物しか口にできなくなるでしょう。
5、種の多様性 本来、多様性こそが自然の理であり、生命の理であります。現存する種の多様性を守ることは、
調和のとれた都市の魅力や各々の民族の伝統を尊重することと同義であると、フランスの植物学者らは熱く主張して
います。科学者ばかりでなく、一般市民も、多くの種が絶滅の危機に瀕している現実を問題視し始めています。
在来種を保存したり自家採種を実践する草の根の活動を展開しているところもあるといいます。種の多様性を
取り戻すために見直すべきは、農業のやり方だといいます。上に述べた三点セットといわれる農薬、化学肥料、
それらの使用に耐える品種による現行農法に対して、何ができるか真剣に向き合うことから始まるのではないか。
このまま進めば、その過程で品種が画一化され、土壌を劣化させ続けるだけなのです。
以前のブログ記事(2012.2.10)のコメントに、makさんが述べていますが、これらのF1からさらに遺伝子組み換え
種子と農薬のセットがいわゆる “種子支配” の形で、世界最大のバイオ科学メーカ、モンサント社(アメリカ)に
支配される危険性があるというのです。
少し前の生協(パルシステム)のカタログ1面に、「たねの支配を許してはいけない」 とする、インドの環境活動家、
ヴァンダナ・シヴァ博士の記事が大々的に取り上げられていました。 世界で売買されている種子のうちのなんと
75%が、5つの多国籍企業に所有されており、それらの企業は、遺伝子組換え技術と特許を利用して種子を
私有化しつつあるというのです。 彼女は、「グローバリズムや工業的農業は、たねをお金儲けの道具のように
扱っている。 たねを、企業による独占や支配から守らねばなりません」 と訴えているのです。
生協に取り上げられていた、ヴァンダナ・シヴァ博士の活動
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