蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

高齢化社会における法律

2025-02-03 | 日々雑感、散策、旅行

 このような事柄について、普段あまり考えたことはありませんが、手元の会報に
「超高齢化社会における法律の課題とあるべき姿」(樋口範雄氏、東京大学名誉教授)
と題した記事に目が留まり、読んでいるうちに「なるほど、そうなんだ!」と思い知ら
されるところがありました。
 このような視点は、かなり遠い分野なので十分理解出来ていないかもしれませんが、
その一部をここに紹介させていただきました。

           高齢化の推移
        (電通報より)

 著者の樋口氏は、ずっと英米法を学び教えてきた過程で、何人かアメリカの法律家の
友人がいて 10年余り前に友人の一人と言葉を交わした内容が記事の冒頭にあります。

『今度、高齢者法という授業を始めてみようと思う。』というと、『自分はもう30年
以上も前から「老人法 elder law」を教えて来た。』と返されて驚いたと・・。

 なぜなら、当時すでに日本は高齢化率が28%以上で世界一の高齢社会であったのに
対して、アメリカは15%以下で、日本と比べると半分程度だった。(現在は約17%) 
なのに、アメリカでは、高齢者法という科目は一般化しており高齢者法の専門家を称す
る弁護士も全国で増加していたのです。

 しかし、現在の高齢者数でいえば、日本、約3600万人に対してアメリカ、5600万人と
かなり多く、それだけ、さまざまな問題に遭遇し、それに対応する法律家も当然必要と
なる‥そのような背景があったのです。アメリカ社会におけるこの視点での事情を3つ
述べられていました。

① アメリカでは、法律問題であれば何であれとりあえず弁護士が相談に応じるのが
常で、
全国に弁護士は130万人以上いて、日本の弁護士総数の4万人ほどが毎年増えて
いる。日本のように弁護士偏在ではなく、全国どの都市にも弁護士がいて、最近では
高齢者専門の弁護士も増えている。

② アメリカでは、人生の中で裁判所に行くことと弁護士に相談する機会が多い。相続
離婚では、紛争が無い場合でも必ず裁判所に行く必要がある。また、紛争が起きる
前に裁判所を利用することもある。たとえば、終末期医療に関して、事前に医療中止の
許可を裁判所に求める裁判が行われる。紛争を予防するために事前に弁護士と相談する
ことも多い。また、子どもに親の財産の管理権・代理権を委ねる委任状を作成したい
と希望する場合、その子供があらかじめ親の財産をわがものとしようとしているのでは
ないかと、高齢者のために裁判所や弁護士が関与するなど身近なものとなっている。

③ 日本にはどの県でも児童相談所があるが、老人相談所はない。しかし、アメリカ
では、
どの州にも自治体にも老人相談所(adult protective service)がある。高齢者虐待
の他、何らかの問題がある場合に弁護士、公的老人相談所などの相談する多彩な相手
がある。

          (いらすとやより)

 このようなことからも、日本において今後見直してゆく必要があることが分かります
が、会報記事では、さらに昨今の、日本における高齢化社会の変容について指摘されて
いる事項があります。

① 先ず葬儀の形式が大きく変わっていることに気が付く。20年前なら、先輩が死
すると葬儀に参列したが、今では家族葬で参列の機会はない。 私ごとですが、以前
なら、会社関係でも葬儀に参列した経験は多くありますが、最近では、会社関係の訃報
メールでは、すべてといっていいほど「葬儀はすでに済まされています」とあります。

② 次に「余生」である。昔は成長して教育を受ける期間も長く、その後、それより
長い仕事の期間が続いて定年後の余生は短かった。今では「余生」ではない。2024年
には100歳以上の人が9万5千人おり文字通り百歳時代となり仕事を終えた後はセカンド
ライフとしてどのように過ごすかが大多数の人の課題となっている。

③ 医療は進化した。20年ほど前は、がんは不治の病と信じられ、がん告知が重要な
題であったが、今ではがんも治る場合が多くなり、説明を受けて患者の同意が求め
られるケースも多い。

 

 このような大きな変化に対して、「法律」はどうかといえば、高齢社会対策法(1995年)、
認知症基本法(2023年)、盛年後見制度、介護保険制度(2000年)にそれぞれ開始され
ていますが、高齢者にとって生きやすい社会になっているかといえばそうとはいえない。
介護保険は「措置から契約へ」との下に推進され家族が介護する・・から共生社会で
地域で介護する仕組みへと変化したが、全体的には法の変化は遅れていると指摘されて
います。

          (いらすとやより)

 現状の課題で最も大きなものは、単身高齢者の増加と認知症患者の増加であるが、
政府の「認知症施策推進基本計画」では、自分自身や家族が認知症であることを周囲に
伝え自分らしい暮らしを続けていくにはどうすればよいかを考えることだとしているが、
単身高齢者にとっては事態はより深刻である。高齢化は一時の問題ではないから中期的・
長期的な対応が必要である。

 しかし、現状の日本法では、本人が困ったとき、入院した時、死亡した時は家族が
助けることを前提にしている。日本の社会は、様々な公的給付も介護保険を含めて申告
主義を基本としており、本人(または家族)が言わない限り給付は行われないのです。
日本法は「自己決定」が前提であるが、自己決定とは自己責任だけを意味し、単身高齢
者は放っておかれることになりかねないとあります。
 高齢者がセカンドライフに備えて相談する仕組みが必要なんですね。法や法律家に
とって、これらの課題に立ち向かう法の仕組みが求められる‥と結ばれています。

           (youtubeより)

 普段つつましく生活が出来ていても、いざ鎌倉・・となった時、あれやこれやと大変
な手続きなど時間と労力がかかるのでしょうね。介護認定一つとっても、制度はあって
もなかなか思うようには行かないかもしれないですね。介護保険料もかなりの額になっ
ていますが、自分がお世話になるときには、ほとんど役に立たないかもしれない不安
がありますね。否定することでは勿論ありませんが、冷ややかな感じがすることになる
かもしれないですね。

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (samgirly)
2025-02-03 08:59:41
給付に関しては、本当に『知らないと損』なイメージがありますね。
返信する
そうですね! (bon)
2025-02-04 07:27:35
samgirlyさん、コメントありがとうございます。
のんびりした性格だと、気が回らないことも。。。
返信する

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