伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

実録詐欺電話 私はこうしてだまされた

2007-05-14 06:31:16 | ノンフィクション
 有料サイト料金名目の架空請求振り込め詐欺に2度引っかかった経済評論家のノンフィクション。
 普通の感覚で言えば振り込め詐欺になんかひっかかりそうにない、経済評論家でしかも元新聞記者の著者が、現実に電話がかかってくると冷静な判断も他人への相談も相手への切り返しもできないまま、むざむざとATMから2回も現金を振り込んでしまった様子とその時の心理が書き込まれています。
 私たち弁護士は(あるいは消費者センターは、警察は・・・)電話で振り込めなんて言われても一切相手にするな、毅然と対応するようにって必ず言いますが、そう言われても現場では対応できないことが強調されています。う~ん、そう言われてもこちらも困るんですが・・・。著者も言っているように、せめて債権回収会社を名乗りながら振込指定口座が個人名義なんてお粗末なことには、詐欺だと気づいて欲しいものですが(もちろん、きちんと会社名義の口座を作っている詐欺師もいますけど)。
 冷静に対応できなかった事情として、氏名をきちんと特定され、社会的地位がありながら出会い系サイトにアクセスしていてそれがばれると困るという思いがあったことが挙げられています(54~56頁)。「それまでの評価が逆転するときの怖さは、よく知っている。私の頭に、痴漢容疑で逮捕された某大学教授が浮かんだ。この国は、いわゆる落ち目の人間に冷たい。ちやほやしていた新聞記者も掌を返すだろうか。」(56~57頁)元新聞記者が書いているだけに説得力があったりします。そうするとむしろ知識人は詐欺に引っかかりやすいと言えるかも。困ったものですね。
 基本的には自分の詐欺被害体験だけで書いているので、後半ちょっと間延びしているのが残念ですが、実におもしろく読めました。


日向野利治 すばる舎 2007年2月22日発行
コメント
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