伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

温室デイズ

2007-05-31 19:30:28 | 小説
 小学校の時いじめる側だったことに引っかかりを持ち中学でまっすぐに行動していじめの標的になる中森みちると、小学校の時いじめられた経験から中学で友人がいじめられるのをかばえずそれが引っかかって教室に行けなくなり別室登校する前川優子の2人の視点から描いた学級崩壊といじめをテーマにした小説。
 どこか不本意な思いを持ちながら行動する2人の視点が章ごとに入れ替わり、少しずつ変わっていくお互いの姿を映し出しています。
 見て見ぬふりをする担任の先生、不良になめられているスクールサポーター、頼りにならない学校。その中で積極的にパシリになることでネットワークを拡げていく斉藤君、厳格な父親の涙と柔軟な姿勢を見て学校に通い続けようと決意するみちる、自分に告白した不良少年のリーダーにカウンセリングを試みる優子。劇的な解決はなく、それぞれの少しずつ前向きな動きが卒業を前に少しの希望につながる。でも、そう変わるわけでもない。そんな現実的で、でも希望がないわけでもないしみじみとした思いでラストシーンを迎えます。
 明るくはないけど、負けないでってメッセージが伝わる作品ですね。


瀬尾まいこ 角川書店 2006年7月31日発行
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ひとりぼっちのジョージ

2007-05-31 07:12:11 | 自然科学・工学系
 島ごと(島によってはさらに地域ごと)に亜種の異なるガラパゴスゾウガメの中で、ガラパゴス諸島の北の果てピンタ島に残った最後の(と思われる)ピンタゾウガメの保護をめぐるお話。
 ひとりぼっちのジョージ(Lonesome George)と呼ばれるこのゾウガメの発見と保護、繁殖の試みと仲間捜しなどの話題に、ガラパゴス諸島の環境保護、絶滅危惧種の保護のあり方、近隣種と交配させることは是か?クローンは?といった話が交差します。ガラパゴスゾウガメの分布自体ゾウガメを食用に捕獲していた海賊等による移動の跡が見られるとか、ゾウガメの餌を横取りする外来種の山羊を掃討して(絶滅させて)ゾウガメを島に放す計画とか、ゾウガメを食用にする人々や、高く売れるナマコの漁を認めさせるために研究所を占拠してゾウガメを人質にしようとした地元民やその背後にいる資本家たち・・・。あるべき野生生物の保護とは何か、いろいろ考えさせられます。
 日本語サブタイトルの「最後のガラパゴスゾウガメからの伝言」はちょっとミスリーディング。最後のと書きたいなら「最後のピンタゾウガメ」と書くべきでしょう。
 タイトルの Lonesome Georgeは、この本とは関係ないけど、Incurious Georgeなんて呼ばれているホワイトハウスの住人の次のニックネームかと、つい思ってしまいました。


原題:Lonesome George
ヘンリー・ニコルズ 訳:佐藤桂
早川書房 2007年4月15日発行 (原書は2006年)
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