3世紀ほど未来の人類と「巨大知性体」と名付けられた人工知能が、おそらくはビッグ・バンのような事態を指す「イベント」により捩れてしまった時空を元に戻そうとする様子を1つの軸としつつ、種々のエピソードを錯綜させたSF。
エピソードも登場人物もつながっているようなつながっていないような感じで、ストーリーとして読み切れる感じがしません。時折語り手として現れる「私」の正体も立ち位置も、最後の自己紹介を読んでも、何か釈然としませんし。
観念的な、その上修辞的で饒舌な語りにあふれていますし、多次元宇宙の時空の流れやその破壊、演算と修正(書き換え)が語られたり、つながっていない感じのするエピソードの錯綜で登場人物のアイデンティティが怪しくなっていきます。私は、そういうアイデンティティクライシスというかアイデンティティの怪しげさがテーマと読みました。
ともすれば「単語だけが暴走を始めた言葉遊び」(93頁)になりそうな語りに満ちたこの作品は、ぶん投げたくなる観念論と評価するか知的で新鮮な文学と評価するか、好みが別れるでしょう。ダイアナ・ウィン・ジョーンズがサラサラ読める人には好まれそう。唐突に人を食ったように登場するアルファ・ケンタウリ星人(163頁)とべらんめえ調の巨大知性体八丁堀(210頁)は、観念的すぎるとまずいと大衆受けを狙ったのかも知れませんが。
円城塔 ハヤカワSFシリーズJコレクション 2007年5月25日発行
エピソードも登場人物もつながっているようなつながっていないような感じで、ストーリーとして読み切れる感じがしません。時折語り手として現れる「私」の正体も立ち位置も、最後の自己紹介を読んでも、何か釈然としませんし。
観念的な、その上修辞的で饒舌な語りにあふれていますし、多次元宇宙の時空の流れやその破壊、演算と修正(書き換え)が語られたり、つながっていない感じのするエピソードの錯綜で登場人物のアイデンティティが怪しくなっていきます。私は、そういうアイデンティティクライシスというかアイデンティティの怪しげさがテーマと読みました。
ともすれば「単語だけが暴走を始めた言葉遊び」(93頁)になりそうな語りに満ちたこの作品は、ぶん投げたくなる観念論と評価するか知的で新鮮な文学と評価するか、好みが別れるでしょう。ダイアナ・ウィン・ジョーンズがサラサラ読める人には好まれそう。唐突に人を食ったように登場するアルファ・ケンタウリ星人(163頁)とべらんめえ調の巨大知性体八丁堀(210頁)は、観念的すぎるとまずいと大衆受けを狙ったのかも知れませんが。
円城塔 ハヤカワSFシリーズJコレクション 2007年5月25日発行