私たちが住む宇宙が5次元だが私たちや大半の素粒子が4次元時空(3次元空間)のブレーン(brane。membrane=膜の略)の中に閉じ込められているため5次元を検出できないということなどを論じた本。
基本的には、あくまで素粒子論のレベルで理論上予測されながら発見できない粒子が検出できない理由や他の力(電磁力、原子核レベルでの「強い力」「弱い力」)と比較して重力が弱すぎる理由を説明するための仮説。他の仮説に対する新しさは、私たちがむき出しの5次元に居住しているのではなく5次元宇宙(バルク)に浮かぶ4次元ないし3次元のブレーンの中に閉じ込められ重力を伝えるとされる仮想粒子「グラビトン」(または+α)だけがバルクとブレーンを行き来できる(第1仮説)、または私たちはバルクに住んでいる(そこんとこ、明言はされていないんですが・・・)がグラビトンが重力ブレーン付近に偏在するために重力が弱くなるとともに5次元時空が歪曲しているために5次元を検出できない(第2仮説)というもの。従来の多次元宇宙論が、4次元を超える「余剰次元」は小さく(原子レベル以下のサイズに)巻き上げられているために検出できないとしていたのを5次元が大きくても検出されないとしている点がポイント。
監訳者あとがきでも「数式を一切使わずに、身近なたとえを織り交ぜながらわかりやすく説明している」(606頁)と書いていますし、NHKの番組とかでもそう紹介されていて、図書館の予約を見てもけっこう人気があります(リサ・ランドールが40台半ばで容姿端麗なもんでちょっと見てみようかってところかも)。数式を使っていない(末尾の注釈の「数学ノート」を読まなければ)ことと、たとえがうまいことは事実です。本文の説明の難易度は、おおかた講談社ブルーバックスレベルです(ブルーバックスを開くと居眠りしたくなる人や「ブルーバックスって何?」レベルの人は、NHKが何を言おうが手を出さない方が無難です)。ですから、著者の自説を説明している最初と最後(第3章までと第20章以降)は感覚的にはわかりやすい。しかし、理論物理・素粒子論の発展経過と問題点を説明する残りの部分は、直観的には捉えられない素粒子の世界で多数の聞いたこともない素粒子の数々とそのふるまいについて一言二言のたとえがたまに混じる程度で了解して付いていける(洞察力がものすごいか、わからなくても気にしない)人でないと挫折の可能性大。こういう本を、売らんがために、とってもわかりやすい入門書のように紹介する手法は、物理嫌いを増やすだけじゃないのかなと危惧します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en3.gif)
原題:Warped Passages
リサ・ランドール 監訳:向山信治 訳:塩原通緒
NHK出版 2007年6月30日発行 (原書は2005年)
基本的には、あくまで素粒子論のレベルで理論上予測されながら発見できない粒子が検出できない理由や他の力(電磁力、原子核レベルでの「強い力」「弱い力」)と比較して重力が弱すぎる理由を説明するための仮説。他の仮説に対する新しさは、私たちがむき出しの5次元に居住しているのではなく5次元宇宙(バルク)に浮かぶ4次元ないし3次元のブレーンの中に閉じ込められ重力を伝えるとされる仮想粒子「グラビトン」(または+α)だけがバルクとブレーンを行き来できる(第1仮説)、または私たちはバルクに住んでいる(そこんとこ、明言はされていないんですが・・・)がグラビトンが重力ブレーン付近に偏在するために重力が弱くなるとともに5次元時空が歪曲しているために5次元を検出できない(第2仮説)というもの。従来の多次元宇宙論が、4次元を超える「余剰次元」は小さく(原子レベル以下のサイズに)巻き上げられているために検出できないとしていたのを5次元が大きくても検出されないとしている点がポイント。
監訳者あとがきでも「数式を一切使わずに、身近なたとえを織り交ぜながらわかりやすく説明している」(606頁)と書いていますし、NHKの番組とかでもそう紹介されていて、図書館の予約を見てもけっこう人気があります(リサ・ランドールが40台半ばで容姿端麗なもんでちょっと見てみようかってところかも)。数式を使っていない(末尾の注釈の「数学ノート」を読まなければ)ことと、たとえがうまいことは事実です。本文の説明の難易度は、おおかた講談社ブルーバックスレベルです(ブルーバックスを開くと居眠りしたくなる人や「ブルーバックスって何?」レベルの人は、NHKが何を言おうが手を出さない方が無難です)。ですから、著者の自説を説明している最初と最後(第3章までと第20章以降)は感覚的にはわかりやすい。しかし、理論物理・素粒子論の発展経過と問題点を説明する残りの部分は、直観的には捉えられない素粒子の世界で多数の聞いたこともない素粒子の数々とそのふるまいについて一言二言のたとえがたまに混じる程度で了解して付いていける(洞察力がものすごいか、わからなくても気にしない)人でないと挫折の可能性大。こういう本を、売らんがために、とってもわかりやすい入門書のように紹介する手法は、物理嫌いを増やすだけじゃないのかなと危惧します。
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原題:Warped Passages
リサ・ランドール 監訳:向山信治 訳:塩原通緒
NHK出版 2007年6月30日発行 (原書は2005年)