伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ゲドを読む。

2007-08-23 09:32:47 | 趣味の本・暇つぶし本
 ゲド戦記の本とアニメについての岩波書店とジブリによる無料配布の販促本。
 冒頭の中沢新一の語りだけがオリジナルで、後はこれまでに岩波書店とジブリ関係のメディアに掲載されたゲド戦記についての論評類をまとめたもの。中沢新一の語りと河合隼雄の1978年の評論が長くて重めで後は軽めの感想。
 中沢新一の語りはかなり観念的で感傷的。学者さんはむりやりにでも観念的抽象的に語りたいんでしょうけど、ゲド戦記はWの言葉(Water、Wizard)で彩られている(24頁)、Wではじまる言葉には暗いイメージがつきまといます、WはマリアのMと反転関係にありますからねって・・・。その少し前でゲド戦記は非白人(White)の物語だって言ったところですが、そっちのWはどうするんでしょ。
 河合隼雄がその後におかれている論評で「ユングが好きになりますと、どんな本を読んでもユングの言葉でいえるような気がしてきます。たとえば主人公が男性で、もう一人男性が出てきた、ア、これは影だっ。女性が出てきたらアニマだ、少年が出てきたら自己だっていっていれば全部わかったような気がするのですが、ほんとは何もわかっていないんじゃないかと私は思うのです。」(86頁)って言っているのが印象的です。
 最近ジブリ系のメディアに掲載された文章の方を見ると、アニメについてほめるのにずいぶん苦慮しているなという跡がうかがえるのが楽しい(私はアニメは見ていませんので論評できません/する気もないけど)。


編集協力 岩波書店、スタジオジブリ
ブエナビスタホームエンターテイメント
2007年6月15日発行
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ガリレオ・ガリレイ

2007-08-23 09:27:39 | 自然科学・工学系
 ガリレオ・ガリレイの伝記。
 ガリレオの活躍が印刷技術の発達と望遠鏡(レンズの研磨技術)の発達を背景とし、大学よりも宮廷科学者の方が収入があるという時代の影響があったことがわかります。
 ガリレオに地動説を放棄させた異端審問に至る経緯を見ていると、他の哲学者との争いでガリレオ側にも相当程度挑発的な態度があったことやガリレオと親しかった教皇の態度がキリスト教社会での力関係の変化を背景に大きく変わったこと、ガリレオの有罪の決め手が地動説を論じたことそのものではなく教皇からコペルニクスの説を擁護してはいけないと命じられていたことに違反したことだったことなどがわかります。最後の点は実質的には同じなのですが、理由のつけ方が今でもいかにもありがちな官僚的なものであることに苦笑してしまいます。役人のやり方はいつの時代も共通していますね。


原題:GALILEO GALILEI
ジェームズ・マクラクラン 訳:野本陽代
オックスフォード科学の肖像シリーズ
大月書店 2007年5月18日発行 (原書は1997年)
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