恋人に死なれてその想い出を忘れられない大学准教授戸田とそれを知りつつ交際を始めたはずのその恋人の友人の30歳女性栞が、その想い出に嫉妬し続け、ついには上海に逃亡して年下の愛人との関係を持ったが、そこへ戸田が現れ迎えに来たのを、栞が拒否し、戸田が交通事故で植物状態になると、栞が想い出を語りながら看病を続けるという小説。
二人の間の想い出の量と重さがその関係を規定することは、その通りだと思います。でも、この2人の生き方は、大人たちが不器用さ故に相手を苦しめた/失ったその自責の念から後ろ向きの人生に囚われるというようなやるせなさを感じさせます。最後は、回り道をしたハッピーエンドのような、ほろ苦さを感じるような流れで、単純には行かないところが深みを感じさせています。
戸田の研究テーマが水質なのに栞は水アレルギーという設定で、栞の水アレルギーが戸田と別れた後改善されるというのも、象徴的/アイロニカルです。栞には別の人生の方がよかったという暗示とも、力みが抜けたところで障害がなくなり戻る流れとも読め、ちょっと考えさせられます。
辻仁成 光文社 2007年7月25日発行
二人の間の想い出の量と重さがその関係を規定することは、その通りだと思います。でも、この2人の生き方は、大人たちが不器用さ故に相手を苦しめた/失ったその自責の念から後ろ向きの人生に囚われるというようなやるせなさを感じさせます。最後は、回り道をしたハッピーエンドのような、ほろ苦さを感じるような流れで、単純には行かないところが深みを感じさせています。
戸田の研究テーマが水質なのに栞は水アレルギーという設定で、栞の水アレルギーが戸田と別れた後改善されるというのも、象徴的/アイロニカルです。栞には別の人生の方がよかったという暗示とも、力みが抜けたところで障害がなくなり戻る流れとも読め、ちょっと考えさせられます。
辻仁成 光文社 2007年7月25日発行