墓地の所有権をめぐる争いを契機に長らく敵対を続けるヴェニスの貴族スコルピア家とバルバロン家の間で愛し合う2組の(亡霊の乗り移り的な話があるので正確には何組というべきか判断に苦しみますが)男女とその周囲の人々の思惑・決意・運命を描いた物語。
終盤間際まで、他の貴族と婚約したスコルピア家の娘メラルダが出入りの画工の甥ロレンツォにたぶらかされて肉体関係を結んだ上駆け落ちしようとしたところを侍女の裏切りによりバルバロン家の者に捕まって婚約者に引き渡され、ロレンツォは殺されてメラルダはそれと知らされないままロレンツォの男根を食べた後そのことを知らされて投身自殺したことから、メラルダの身ごもっていた子どもの霊が関係者に復讐するという形でストーリーが展開していきます。このあたりがどうも読んでいて居心地がよくありません。やり過ぎではありますが、ロレンツォは婚約中の娘と知りながらしかも騙して自宅に誘い込んで関係を持ったわけですし、メラルダも悪いと知りつつ関係を持っています。メラルダ自身は暴力を受けず自ら死を選んだわけです。そして、この2人、婚約者に引き渡されなくても、生活力のない男と家事能力ゼロの女の組み合わせですぐに生活が破綻することが明らかですし、いずれスコルピア家に探し出されてロレンツォは似たような結末になることが予想されます。それで復讐って言われてもなぁという思いがどこか残りながら読みました。そこはむしろ、復讐というもののむなしさを感じさせます。
たぶん、このままの展開でもこういった違和感から、両家の確執や復讐への無意味さを感じ取れると思います。しかし、ラストで、あえて、それまでメインストーリーに組み込まれながらサイド的な位置づけだったもう1組の男女の素性・運命を絡めることで、物語の主軸が復讐でなかったことが明らかにされ、よりわかりやすい結末への流れとなります。このあたり、なるほどとも思いますし、そうしなくてもそれは感じ取れるんじゃないかとも思います。
亡霊の絡みがあったりするので、登場人物の関係について時々錯綜する(特にラストでより複雑になります)のが、ちょっと読みにくいなと感じました。
ヴェヌスの秘録シリーズとされていますが、1巻とは舞台がヴェニスということ以外関係なく、2巻のエピソードは伝説として何度か出てきますが、2巻を読んでなくても支障はありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
原題:A Bed of Earth - the gravedigger’s tale : The secret books of Venus;3
タニス・リー 訳:柿沼瑛子
産業編集センター 2007年5月31日発行 (原書は2002年)
1巻については2007年6月11日の記事で紹介
2巻については2007年7月6日の記事で紹介
終盤間際まで、他の貴族と婚約したスコルピア家の娘メラルダが出入りの画工の甥ロレンツォにたぶらかされて肉体関係を結んだ上駆け落ちしようとしたところを侍女の裏切りによりバルバロン家の者に捕まって婚約者に引き渡され、ロレンツォは殺されてメラルダはそれと知らされないままロレンツォの男根を食べた後そのことを知らされて投身自殺したことから、メラルダの身ごもっていた子どもの霊が関係者に復讐するという形でストーリーが展開していきます。このあたりがどうも読んでいて居心地がよくありません。やり過ぎではありますが、ロレンツォは婚約中の娘と知りながらしかも騙して自宅に誘い込んで関係を持ったわけですし、メラルダも悪いと知りつつ関係を持っています。メラルダ自身は暴力を受けず自ら死を選んだわけです。そして、この2人、婚約者に引き渡されなくても、生活力のない男と家事能力ゼロの女の組み合わせですぐに生活が破綻することが明らかですし、いずれスコルピア家に探し出されてロレンツォは似たような結末になることが予想されます。それで復讐って言われてもなぁという思いがどこか残りながら読みました。そこはむしろ、復讐というもののむなしさを感じさせます。
たぶん、このままの展開でもこういった違和感から、両家の確執や復讐への無意味さを感じ取れると思います。しかし、ラストで、あえて、それまでメインストーリーに組み込まれながらサイド的な位置づけだったもう1組の男女の素性・運命を絡めることで、物語の主軸が復讐でなかったことが明らかにされ、よりわかりやすい結末への流れとなります。このあたり、なるほどとも思いますし、そうしなくてもそれは感じ取れるんじゃないかとも思います。
亡霊の絡みがあったりするので、登場人物の関係について時々錯綜する(特にラストでより複雑になります)のが、ちょっと読みにくいなと感じました。
ヴェヌスの秘録シリーズとされていますが、1巻とは舞台がヴェニスということ以外関係なく、2巻のエピソードは伝説として何度か出てきますが、2巻を読んでなくても支障はありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
原題:A Bed of Earth - the gravedigger’s tale : The secret books of Venus;3
タニス・リー 訳:柿沼瑛子
産業編集センター 2007年5月31日発行 (原書は2002年)
1巻については2007年6月11日の記事で紹介
2巻については2007年7月6日の記事で紹介