伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

写真が語る地球激変

2008-03-29 08:40:51 | 自然科学・工学系
 様々な場所のある時期とその後の写真を並べてその変化を語る本。
 地球温暖化による氷河や南極の棚氷、北極海の氷の減少、開発による自然破壊とともに自然災害や戦争による破壊後の復旧も扱っています。
 開発では、砂漠緑化運動によるスプリンクラーが届く範囲の正円形の農地がまるでシールでも貼り付けたように並ぶ衛星写真(131頁など)の痛々しさに驚きました。子どもの頃、夢のプロジェクトと教えられた記憶があるのですが。ビニールハウスで真っ白に埋め尽くされた衛星写真(135頁)も、ちょっとショックでした。衛星写真ではダムを造ることの環境への影響もひしひしと感じられました。
 悪くなる話ばかりじゃなくて、自然の回復や、ソウルで高速道路を撤去して川を復活させたこと(108~109頁)なんかも紹介されていて、いろいろと考えさせられました。


原題:EARTH THEN AND NOW
フレッド・ピアス 訳:鈴木南日子
ゆまに書房 2008年1月25日発行 (原書は2007年)
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中国労働契約法の実務

2008-03-29 00:04:08 | 実用書・ビジネス書
 中国で2008年1月1日施行の労働契約法の解説書。
 中国は社会主義市場経済とかいっていますが、基本は労働者と農民の国であるはず。それなのに労働者の解雇が簡単と聞いていました。そういう興味で読んでみました。
 中国では日本で少なくとも以前は主流だった期限の定めのない労働契約は少なく、有期雇用が大部分だそうです。それはかつて終身雇用が完全に保証され労働者の勤労意欲が失われたことへの反動だそうです(2~3頁)が、そうなると労働者の地位は不安定になります。しかし、新法の労働契約法では、雇用契約書を1年以内に作らない場合期限の定めのない労働契約とみなす(14条3項)とか、有期労働契約を2回連続して締結して更新するときに労働者が希望すれば期限の定めのない労働契約を締結しなければならない(14条2項3号)とか、期限の定めのない契約への誘導を図っています。また、雇い止めをする場合も労働者に賃金の勤続年数ヵ月分(日本の正社員の退職金の相場程度)の経済補償を義務づけています(46条)。整理解雇も日本で認められるより要件が厳しいようですし中高年者や老人・子どもを扶養する大黒柱のリストラは避けるように規定されています(41条)。就業規則も労働組合と協議して決めることとされている上、労働組合が「不適当」と認める場合には協議を通じて修正・完全化する権利があるとされています(4条2項、3項)。労働契約法以外の法制でも休日の時間外賃金は通常賃金の300%(128頁。参考までに日本は135%)、単身赴任の労働者は通常の有給休暇の他に配偶者を訪問するために年1回30日(!)の休暇が取れるそうです(154~155頁)。法律の規定は中国の方がよさそうですね。
 この本のスタンスは、従来の中国の労働法を知っていることを前提に新しい労働契約法を解説したもので、各章のはじめの「ポイント」も労働契約法自体の内容をわかりやすくは書いていないので、専門家以外にはかなり読みにくい。後の方を読んだり、最後についている労働契約法の条文を見てようやく内容がわかる部分が多く、労働法制の解説書としては不親切な感じがします。
 日本の弁護士としては、法律用語や概念の違いがあって、なかなか読み進むのに骨が折れました。渉外事務所の弁護士(国際弁護士)ってこういうの日常的に勉強しているんですよね。大変だなと思いました。


萩野敦司、馬場久佳 中央経済社 2008年2月25日発行
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