読書の仕方や勉強の仕方など大学で学ぶコツについて解説した本。
学問は勉強とは根本的に異なり、答えの確定していない新しい問いを発すること、自分で問いを立てその問いに対して創造的な応答を挑むところに醍醐味がある(17~19ページ)と述べ、「哲学を志す人たちは、どこか不良で、言葉に凄みがある。・・・学問というものが『勉強の否定の上に成り立つ』ことを示してくれるのは、かっこいい不良少年タイプの哲学者たちではないだろうか。彼らの生き方から学ぶことは多い」(31ページ)などという、独創的な学問ワールドへの誘いかと思える導入部は、なかなか魅力的です。
しかし、この本の本質は学習のテクニックで、tips/小技集として読むべきものです。志を語る部分はありますが、それも後半では大学の先生に認められる手堅さへと傾斜していき、しぼんでいく印象があります。そのあたりは、導入部でも「大学で学ばなかった人は、企業でも使えない」(26ページ)なんて太字で就職志向の学生に脅しと媚びを示しているあたりにも垣間見えますけど。
全体を通じて共通するように見えるスタイルは、型から入ることのようです。読書法でも「大学のキャンパスでは、読書に適した場所を、ぜひとも見つけたい。木陰に座って、かっこよく本を読む。あるいは、長椅子に腰掛けて、夕暮れ時に孤独に読書する・・・読書する自分の姿に酔うことができる人は、読書力と読書量を伸ばしていく」(106ページ)という下りは、ちょっと目からウロコ感があり、感心しました。もっとも、そういった後でまた「環境や気分に囚われないようにする」「いつでもどこでも読書できるだけの野生を身につけたい」(115ページ)なんていわれると、場当たり的というかつぎはぎ感がありますけど。
それにしても、大学生を読者に想定したこの本の、最初の言葉が「あしたのために(その1)」です。一般的な言い回しとしてじゃありません。著者自身、私は丹下段平の役割を引き受けたい(13ページ)、パンチのある感情がどのようなものであるかを知るためにはたとえばマンガ「あしたのジョー」を読まなければならない(212ページ)とまでいっています。たまたま読んだ本が2冊続けて1960年代生まれの40代男が若者相手に書いた本で「あしたのジョー」を引用してるのは、どういうことなんでしょう。若者の間で「あしたのジョー」がブームなのか、1960年代生まれの男には「あしたのジョー」が人生のバイブルなのか・・・
橋本努 ちくま新書 2013年1月10日発行
学問は勉強とは根本的に異なり、答えの確定していない新しい問いを発すること、自分で問いを立てその問いに対して創造的な応答を挑むところに醍醐味がある(17~19ページ)と述べ、「哲学を志す人たちは、どこか不良で、言葉に凄みがある。・・・学問というものが『勉強の否定の上に成り立つ』ことを示してくれるのは、かっこいい不良少年タイプの哲学者たちではないだろうか。彼らの生き方から学ぶことは多い」(31ページ)などという、独創的な学問ワールドへの誘いかと思える導入部は、なかなか魅力的です。
しかし、この本の本質は学習のテクニックで、tips/小技集として読むべきものです。志を語る部分はありますが、それも後半では大学の先生に認められる手堅さへと傾斜していき、しぼんでいく印象があります。そのあたりは、導入部でも「大学で学ばなかった人は、企業でも使えない」(26ページ)なんて太字で就職志向の学生に脅しと媚びを示しているあたりにも垣間見えますけど。
全体を通じて共通するように見えるスタイルは、型から入ることのようです。読書法でも「大学のキャンパスでは、読書に適した場所を、ぜひとも見つけたい。木陰に座って、かっこよく本を読む。あるいは、長椅子に腰掛けて、夕暮れ時に孤独に読書する・・・読書する自分の姿に酔うことができる人は、読書力と読書量を伸ばしていく」(106ページ)という下りは、ちょっと目からウロコ感があり、感心しました。もっとも、そういった後でまた「環境や気分に囚われないようにする」「いつでもどこでも読書できるだけの野生を身につけたい」(115ページ)なんていわれると、場当たり的というかつぎはぎ感がありますけど。
それにしても、大学生を読者に想定したこの本の、最初の言葉が「あしたのために(その1)」です。一般的な言い回しとしてじゃありません。著者自身、私は丹下段平の役割を引き受けたい(13ページ)、パンチのある感情がどのようなものであるかを知るためにはたとえばマンガ「あしたのジョー」を読まなければならない(212ページ)とまでいっています。たまたま読んだ本が2冊続けて1960年代生まれの40代男が若者相手に書いた本で「あしたのジョー」を引用してるのは、どういうことなんでしょう。若者の間で「あしたのジョー」がブームなのか、1960年代生まれの男には「あしたのジョー」が人生のバイブルなのか・・・
橋本努 ちくま新書 2013年1月10日発行