福島原発で地震前から働き、原発事故後復旧作業に従事する作業員4名の話で現場の状況や作業員の心情などをレポートした本。
インタビューの中には、地震直後に原発内で配管が破裂するような音が聞こえた(59ページ)などの話もあり、東京電力が聞き取って都合のよさそうなところをつまみ食い的に報告書に掲載した「現場の声」で吸い上げられていない現場の情報がまだ相当埋もれていることが垣間見えます。
作業員たちは、事故後の原発で復旧作業に従事する動機を金のためと述べてはいますが、原発で作業してきた者として復旧のためにできることをしないと、自分たちがやらなくてどうするみたいな使命感が感じられ、生まれ育った故郷の地への思い、家族への思いがそれを支えているのだと思います。負い目とかしがらみという言い方もできますが、ある種愚直な誠実さがあって、損なことやってるよなと思いつつ笑える人々がいて、それで社会が成り立っているところがあるのだと思います。それで、人間、捨てたもんじゃないとも思えるのです。
そうした作業員の故郷の汚染と共同体の崩壊を嘆く声、帰還への絶望感には、読んでいて胸をかきむしられるところがあります。私には、それはストレートに彼らから、そして十数万人の人々から故郷を奪った東京電力への怒りとなるのですが。
4名の作業員への取材だけで書かれていることから、作業員の多くの置かれた状態を代表するといえるかはわからず、基本的には、作業員の労働環境と心情の実例の1つという位置づけで読むべきですが、現場の作業員に目を向ける契機として貴重なものだと思います。
久田将義 ナックルズ選書 2012年2月24日発行
インタビューの中には、地震直後に原発内で配管が破裂するような音が聞こえた(59ページ)などの話もあり、東京電力が聞き取って都合のよさそうなところをつまみ食い的に報告書に掲載した「現場の声」で吸い上げられていない現場の情報がまだ相当埋もれていることが垣間見えます。
作業員たちは、事故後の原発で復旧作業に従事する動機を金のためと述べてはいますが、原発で作業してきた者として復旧のためにできることをしないと、自分たちがやらなくてどうするみたいな使命感が感じられ、生まれ育った故郷の地への思い、家族への思いがそれを支えているのだと思います。負い目とかしがらみという言い方もできますが、ある種愚直な誠実さがあって、損なことやってるよなと思いつつ笑える人々がいて、それで社会が成り立っているところがあるのだと思います。それで、人間、捨てたもんじゃないとも思えるのです。
そうした作業員の故郷の汚染と共同体の崩壊を嘆く声、帰還への絶望感には、読んでいて胸をかきむしられるところがあります。私には、それはストレートに彼らから、そして十数万人の人々から故郷を奪った東京電力への怒りとなるのですが。
4名の作業員への取材だけで書かれていることから、作業員の多くの置かれた状態を代表するといえるかはわからず、基本的には、作業員の労働環境と心情の実例の1つという位置づけで読むべきですが、現場の作業員に目を向ける契機として貴重なものだと思います。
久田将義 ナックルズ選書 2012年2月24日発行