結婚詐欺師古海健児とその周囲の女たちの関係と執着と怨念を描いた小説。
誠意のかけらもない結婚詐欺師をめぐって騙された女たちが同じように騙された女に見栄を張り争う様子や、騙されたことが明らかなのにそれを認めたくなくて結婚詐欺師を捜し求め、あるいは待ち続ける女たちの様子は、痛ましくまた寒々としますが、まぁこれは想定内です。結婚詐欺師に騙された既婚の女たちが捨てた夫と崩壊家庭も同様です。結婚詐欺師とうすうす感づきながら素知らぬ顔で結婚生活を続ける妻と詐欺の相棒を続けながら結婚詐欺師に飽きられて女としては相手にされなくなったことに嫉妬して妻に嫌がらせ電話をかけ続けるるり子も、小説としてはそういう設定に行くかなとも思えます。しかし、10年も前に結婚詐欺師に妻を奪われ、2年前からバツイチ同士でつきあっている女性と円満な関係を続けながら、なお自分を捨てた元妻の電話を待っている月島恭輔は、いくら小説の中でも哀しすぎる。いや登場人物がみんな哀しさ・侘びしさを背負ってはいるんですが、多くの人はどこか自業自得と思えますから、まぁしかたないんじゃないのって思うんです。月島の場合、どうして10年も前に男を作って出て行った妻に引きずられるのって、そう思ってしまう。それは、自分がおじさんだからなのでしょうけど。
井上荒野 角川書店 2012年3月30日発行
誠意のかけらもない結婚詐欺師をめぐって騙された女たちが同じように騙された女に見栄を張り争う様子や、騙されたことが明らかなのにそれを認めたくなくて結婚詐欺師を捜し求め、あるいは待ち続ける女たちの様子は、痛ましくまた寒々としますが、まぁこれは想定内です。結婚詐欺師に騙された既婚の女たちが捨てた夫と崩壊家庭も同様です。結婚詐欺師とうすうす感づきながら素知らぬ顔で結婚生活を続ける妻と詐欺の相棒を続けながら結婚詐欺師に飽きられて女としては相手にされなくなったことに嫉妬して妻に嫌がらせ電話をかけ続けるるり子も、小説としてはそういう設定に行くかなとも思えます。しかし、10年も前に結婚詐欺師に妻を奪われ、2年前からバツイチ同士でつきあっている女性と円満な関係を続けながら、なお自分を捨てた元妻の電話を待っている月島恭輔は、いくら小説の中でも哀しすぎる。いや登場人物がみんな哀しさ・侘びしさを背負ってはいるんですが、多くの人はどこか自業自得と思えますから、まぁしかたないんじゃないのって思うんです。月島の場合、どうして10年も前に男を作って出て行った妻に引きずられるのって、そう思ってしまう。それは、自分がおじさんだからなのでしょうけど。
井上荒野 角川書店 2012年3月30日発行