EU諸国の原発とエネルギー政策についての過去と現在の決定・方向性とそれにまつわる諸事情をレポートした本。
国民の賛否では原発反対の方が多いのに水力・風力資源に乏しくロシアへのエネルギー依存からの脱却を優先して原発を推進するフィンランド、1980年の国民投票で原発の段階的廃棄を決めながら不況と政権交代で脱原発が形骸化しているスウェーデン、技術系エリートと中央集権に支えられた原発推進一辺倒から福島原発事故後意見の対立が表面化し原発依存度の抑制の議論が出て来たフランス、サッチャー政権下の民営化で大手電力会社は外資系になり政府は地球温暖化対策で原発推進を志向しながら市場原理の結果四半世紀原発の新設がなく他方で明確な脱原発を宣言するスコットランド自治政府を抱えるイギリスといった、現在脱原発をいわない国々の事情が最初に紹介されています。次いで、社民党・緑の党連立政権下での脱原発政策を転換しようとしていた中道保守政権が福島原発事故を見て2022年までの全原発閉鎖を閣議決定するに至ったドイツ、国民投票で脱原発を(再び)決めたイタリア、国民投票をせず2034年までの全原発閉鎖を閣議決定したスイスの、福島原発事故後に脱原発を決定した各国の事情が紹介されています。
脱原発に舵を切らない国でも、スウェーデンでもイギリスでも政府は原発に資金援助をしないことを決めています。またどの国でも温暖化ガスの削減に厳しい目標を立てていますし、風力発電、太陽光発電などの再生エネルギー促進を政策として掲げ推進している様子がうかがえます。地球温暖化対策を原発延命の免罪符程度にしか考えず風力発電などの再生可能エネルギー促進を真剣に行わずいまだに原発に多額の財政援助を続けながら、脱原発は現実的ではないといいたがる政権は、世界的には今や特異な存在に思えます。
原発の運転停止を免れるために点検記録を捏造したり偽造ビデオを検査官に見せた「ひび割れ隠し問題」のときにも思いましたが、送電線の独占と地域独占がなければ当然潰れて然るべきとんでもない電力会社が、今もなお、一地方の社会さえも潰すような国民に大きな犠牲を強いる大事故を起こしながらウソと傲慢な姿勢で原発存続を平然と言い続けるようなことが、日本ではなぜできるのか、改めて考える必要があると再認識しました。
脇阪紀行 岩波新書 2012年6月20日発行
国民の賛否では原発反対の方が多いのに水力・風力資源に乏しくロシアへのエネルギー依存からの脱却を優先して原発を推進するフィンランド、1980年の国民投票で原発の段階的廃棄を決めながら不況と政権交代で脱原発が形骸化しているスウェーデン、技術系エリートと中央集権に支えられた原発推進一辺倒から福島原発事故後意見の対立が表面化し原発依存度の抑制の議論が出て来たフランス、サッチャー政権下の民営化で大手電力会社は外資系になり政府は地球温暖化対策で原発推進を志向しながら市場原理の結果四半世紀原発の新設がなく他方で明確な脱原発を宣言するスコットランド自治政府を抱えるイギリスといった、現在脱原発をいわない国々の事情が最初に紹介されています。次いで、社民党・緑の党連立政権下での脱原発政策を転換しようとしていた中道保守政権が福島原発事故を見て2022年までの全原発閉鎖を閣議決定するに至ったドイツ、国民投票で脱原発を(再び)決めたイタリア、国民投票をせず2034年までの全原発閉鎖を閣議決定したスイスの、福島原発事故後に脱原発を決定した各国の事情が紹介されています。
脱原発に舵を切らない国でも、スウェーデンでもイギリスでも政府は原発に資金援助をしないことを決めています。またどの国でも温暖化ガスの削減に厳しい目標を立てていますし、風力発電、太陽光発電などの再生エネルギー促進を政策として掲げ推進している様子がうかがえます。地球温暖化対策を原発延命の免罪符程度にしか考えず風力発電などの再生可能エネルギー促進を真剣に行わずいまだに原発に多額の財政援助を続けながら、脱原発は現実的ではないといいたがる政権は、世界的には今や特異な存在に思えます。
原発の運転停止を免れるために点検記録を捏造したり偽造ビデオを検査官に見せた「ひび割れ隠し問題」のときにも思いましたが、送電線の独占と地域独占がなければ当然潰れて然るべきとんでもない電力会社が、今もなお、一地方の社会さえも潰すような国民に大きな犠牲を強いる大事故を起こしながらウソと傲慢な姿勢で原発存続を平然と言い続けるようなことが、日本ではなぜできるのか、改めて考える必要があると再認識しました。
脇阪紀行 岩波新書 2012年6月20日発行