過去の経緯や決定、他人との比較や意地から方向転換ができないことの愚かさを説き、「あきらめ」て損害を最小限にとどめて出直すなどした方がいいということを勧める人生論・処世術の本。
過去の努力や投資が無駄になることを恐れて方向転換ができないという事態は、よく見られます。ここまで頑張ったんだからと、引き返せなくなって傷を深めるというやつ。損切り・見切りができるかという話ですね。私は、基本的に、これまでにどれだけのものをつぎ込んだかよりも、これから先続けることのメリットとデメリットを重視して決めることにしていますので、これから先続けるのがものすごく疲れるもので、続けることで得られるメリットが少なくて自分の価値観としてそれほどの意味を見いだせないことなら、過去にどれだけの労力をかけていても関係なくあっさりやめます(仕事だと、契約した範囲はよほどのことがなければ終わりまでやりますけど、その範囲が終われば、次の契約をするかの段階では過去には囚われません)。そういうあたりの話では、著者の意見と同感ですし、実践できていると思います。
しかし、ビジネス書にありがちですが、「あきらめる」というキーワードで多くのものというか何でもかんでも語ろうとしすぎて、メッセージがごちゃごちゃしているような印象もあります。「あきらめる」のは、何かを実現するためで、大きなものをあきらめないために、目の前のものをあきらめるということであったり、二兎を追えないから片方はあきらめろということで、そこでは「あきらめない」ことに意味が見いだされたりしているわけです。その何をあきらめ、何をあきらめないかの選択が大事なのに、そこがきちんと語られていないというか、ポリシーが見えにくいように感じるのです。
また、女性については結婚か仕事かの二者択一を論じたり、正しいことの自己主張をするのではなく長い物には巻かれろと諭したり、旧世代の支配構造に都合のいい傾向を持つ本でもあります。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て妻としたしむ」という啄木の歌を引いて、足るを知るを説くのは共感します。友がみなわれよりえらく見ゆる日以外でも、妻と親しみたいと思いますけど。

斎藤茂太 角川文庫 2014年8月25日発行(単行本は2009年9月)
過去の努力や投資が無駄になることを恐れて方向転換ができないという事態は、よく見られます。ここまで頑張ったんだからと、引き返せなくなって傷を深めるというやつ。損切り・見切りができるかという話ですね。私は、基本的に、これまでにどれだけのものをつぎ込んだかよりも、これから先続けることのメリットとデメリットを重視して決めることにしていますので、これから先続けるのがものすごく疲れるもので、続けることで得られるメリットが少なくて自分の価値観としてそれほどの意味を見いだせないことなら、過去にどれだけの労力をかけていても関係なくあっさりやめます(仕事だと、契約した範囲はよほどのことがなければ終わりまでやりますけど、その範囲が終われば、次の契約をするかの段階では過去には囚われません)。そういうあたりの話では、著者の意見と同感ですし、実践できていると思います。
しかし、ビジネス書にありがちですが、「あきらめる」というキーワードで多くのものというか何でもかんでも語ろうとしすぎて、メッセージがごちゃごちゃしているような印象もあります。「あきらめる」のは、何かを実現するためで、大きなものをあきらめないために、目の前のものをあきらめるということであったり、二兎を追えないから片方はあきらめろということで、そこでは「あきらめない」ことに意味が見いだされたりしているわけです。その何をあきらめ、何をあきらめないかの選択が大事なのに、そこがきちんと語られていないというか、ポリシーが見えにくいように感じるのです。
また、女性については結婚か仕事かの二者択一を論じたり、正しいことの自己主張をするのではなく長い物には巻かれろと諭したり、旧世代の支配構造に都合のいい傾向を持つ本でもあります。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て妻としたしむ」という啄木の歌を引いて、足るを知るを説くのは共感します。友がみなわれよりえらく見ゆる日以外でも、妻と親しみたいと思いますけど。

斎藤茂太 角川文庫 2014年8月25日発行(単行本は2009年9月)