小学校からの幼なじみで同棲中の恋人にプロポーズした夜に目の前でその恋人を見知らぬ男たちに輪姦され、そのまま恋人は行方不明になり、大学を中退して職を転々としていたヴェルネルが、友人ブリツキからフェイスブックにエヴァの写真が掲載されていたと言われて、エヴァを探し始めるが、フェイスブックの写真はアカウントごと削除され、ブリツキは殺害されて、ヴェルネルはブリツキが見つけた探偵社の支援を得ながら逃走するが…という展開のミステリー。
解説で「ミステリに『意外な展開』と『騙される快感』を求める読者は、本書を絶対に読み逃してはならない」(506ページ)と書かれているように、意外な展開があり驚かされ(やや違和感を残しながらではありますが)騙されるとは思います。それは、巧いとは思うのですが、結局は、いちばん知りたいと思うところは謎のままに残されてもやっとしたものが残ります。
女性に対する暴力が、全体を通じてのテーマになっていて、読後感は重苦しい。あぁ騙されたということでスカッとする作品ではありません。女性に対する暴力、大がかりな陰謀、天才ハッカー的な女性の登場という要素は、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』を連想させますが、『ミレニアム』がフェミニズム志向を強く打ち出して闘う女を肯定的に描き、国・行政を陰謀の側に置いてそれを糾弾しているのに対して、この作品は重苦しさと哀しさを基調とし、国はあくまで正しい側に置かれています。『ミレニアム』のような飛び抜けた評価はどちら側からも受けにくいと思いますが、その分、より現実的と評価すべきではありましょう。
原題:NIEODNALEZIONA
レミギウシュ・ムルス 訳:佐々木申子
小学館文庫 2020年2月11日発行(原書は2018年)
解説で「ミステリに『意外な展開』と『騙される快感』を求める読者は、本書を絶対に読み逃してはならない」(506ページ)と書かれているように、意外な展開があり驚かされ(やや違和感を残しながらではありますが)騙されるとは思います。それは、巧いとは思うのですが、結局は、いちばん知りたいと思うところは謎のままに残されてもやっとしたものが残ります。
女性に対する暴力が、全体を通じてのテーマになっていて、読後感は重苦しい。あぁ騙されたということでスカッとする作品ではありません。女性に対する暴力、大がかりな陰謀、天才ハッカー的な女性の登場という要素は、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』を連想させますが、『ミレニアム』がフェミニズム志向を強く打ち出して闘う女を肯定的に描き、国・行政を陰謀の側に置いてそれを糾弾しているのに対して、この作品は重苦しさと哀しさを基調とし、国はあくまで正しい側に置かれています。『ミレニアム』のような飛び抜けた評価はどちら側からも受けにくいと思いますが、その分、より現実的と評価すべきではありましょう。
原題:NIEODNALEZIONA
レミギウシュ・ムルス 訳:佐々木申子
小学館文庫 2020年2月11日発行(原書は2018年)