父親の会社の都合でアメリカに赴任する際に同僚だった母親も離職して5歳の娘とともに同道し、3年後に父親が帰国する際に、アメリカに残りジャーナリストになりたいという母親を残して父親とともに帰国した森田窓香が中学2年生になった時、アメリカから1年前に死んだ母のノートが送られてきて、その中に母の思いが綴られているのを読んだ窓香の思考と行動の変化を描いた小説。
自立を志向し、ジャーナリストを志望して、戦地に赴き、戦争に蹂躙される子どもたちの惨状を綴る母の姿とそれを読む窓香の様子を描く前半は、柔らかめの語り口で中学生に戦争の現実を読ませ、考えさせる趣向で、「岩波ジュニア新書」と見まごう内容です。しかし、母親は、ウガンダ、コソボ、アフガニスタンを取材して回るうちに、体力的にも、そして精神的にも疲弊していき、自分には合わないとして挫折し、コロラド高原に感傷旅行に出てナバホの語り部と出会い物語の創作に自らの活路を見いだしていきます。自立を志向した女性をそのまま自立させずに挫折させ、しかしそれでもいいじゃないと、娘に母の生き方を肯定させるのが、小手鞠流なのでしょう。私は、娘に母の生き様を見せるのならば、母が闘いきりそれを誇りに思う物語の方が読んでいてすがすがしく、子どもに希望を与えやすいと思いますが、現実社会では思い半ばに倒れる方が多く、結果を出せなかったとしても志したこと自体が尊いではないかと讃えた方がいいという価値判断もあっていいということなんでしょう。
小手鞠るい 小学館 2020年2月9日発行
自立を志向し、ジャーナリストを志望して、戦地に赴き、戦争に蹂躙される子どもたちの惨状を綴る母の姿とそれを読む窓香の様子を描く前半は、柔らかめの語り口で中学生に戦争の現実を読ませ、考えさせる趣向で、「岩波ジュニア新書」と見まごう内容です。しかし、母親は、ウガンダ、コソボ、アフガニスタンを取材して回るうちに、体力的にも、そして精神的にも疲弊していき、自分には合わないとして挫折し、コロラド高原に感傷旅行に出てナバホの語り部と出会い物語の創作に自らの活路を見いだしていきます。自立を志向した女性をそのまま自立させずに挫折させ、しかしそれでもいいじゃないと、娘に母の生き方を肯定させるのが、小手鞠流なのでしょう。私は、娘に母の生き様を見せるのならば、母が闘いきりそれを誇りに思う物語の方が読んでいてすがすがしく、子どもに希望を与えやすいと思いますが、現実社会では思い半ばに倒れる方が多く、結果を出せなかったとしても志したこと自体が尊いではないかと讃えた方がいいという価値判断もあっていいということなんでしょう。
小手鞠るい 小学館 2020年2月9日発行